微かな物音で目が覚めると、妙な違和感が襲ってきた。木造の天井や畳の匂い、さらには眩しい朝日が射し込む窓から見える山々の姿は強烈な違和感しかなかった。
――ここはどこだ?
気持ちを落ち着かせながら部屋を見渡したところで、どうやら僕は旅館の一室にいることがわかった。隣に敷かれた布団に人気はなかったけど、どうやら誰かと泊まっていたらしい。
――兄貴と来たのかな?
穏やかな日差しに目を細めつつ、手帳を開いていつもの日課を行ったところで冷や汗が一気にふきだしてきた。
――女の子と泊まっていた?
手帳のワードを手がかりに、急いで記憶を掘り起こしていく。少しずつ蘇った記憶をつなぎ合わせた結果、ようやくすみれという少女とカンテラ祭に来たことを思い出した。
――すみれはどこだ?
とりあえず状況をのみ込んだあと、姿のないすみれを探してみる。部屋の中を探した結果、見つかったのは『先に行ってるね』という書き置きと、白い封筒に入ったカンテラ祭のチケットだけだった。
――一人で行きたい理由でもあるのかな?
急に一人になった寂しさを感じつつ、身支度をすませながらすみれのことを考えてみた。
僕の記憶が正しければ、すみれはカンテラ祭に参加しようとした理由を語っていない。手帳を見ても、関連するワードがないから間違いないだろう。
ならばと、スマホを手に投稿サイトにアクセスしてみる。僕のエッセイは更新が止まっているけど、炎上は収まるどころか勢いを増していた。その中で新たなすみれの投稿がないか調べてみたけど見つけることはできなかった。
気持ちを切り替え、今度は明日晴のページにアクセスしてみる。すみれは、画像やショート動画を中心に作品を投稿していて、ちょっとした人気の作者になっていた。直近の作品を調べてみたけど、ヒントになるような手がかりは見つけられなかった。
――なにか不思議だな
すみれの作品を見ながら、ふとこの世界のつながりの不思議さが胸にこみあがってくる。僕もすみれも、この世界では重大な問題を抱えて生きていながら、けど、投稿サイトでは全く別人のようにふるまっている。さらには、投稿サイトを通じて僕らは出会い、誰かが投稿したカンテラ祭の情報を頼りにここまで来ていた。
だとしたら、僕らはどっちの世界を生きているのだろう。目の前のリアルな世界なのか、あるいはネットに広がる全く違う世界なのだろうか。
「朝からなに考えてんだろう」
飛躍していく自分の思考がなぜかおかしくて、一人愚痴るように自虐する。結局、どっちの世界で生きているのかは大した問題ではなく、大事なのは、僕はこのリアルな世界にもネットの世界にも存在しえるということなのかもしれなかった。
そう結論づけてチェックアウトすると、見事なほどの青空が僕を待ち受けていた。
――この空を見たら、リアルな世界も捨てたものではないかもしれないな
そんなことを考えながら、急に一人になったことにかすかな不安と寂しさを感じつつ、カンテラ祭がある神社へと向かった。
――ここはどこだ?
気持ちを落ち着かせながら部屋を見渡したところで、どうやら僕は旅館の一室にいることがわかった。隣に敷かれた布団に人気はなかったけど、どうやら誰かと泊まっていたらしい。
――兄貴と来たのかな?
穏やかな日差しに目を細めつつ、手帳を開いていつもの日課を行ったところで冷や汗が一気にふきだしてきた。
――女の子と泊まっていた?
手帳のワードを手がかりに、急いで記憶を掘り起こしていく。少しずつ蘇った記憶をつなぎ合わせた結果、ようやくすみれという少女とカンテラ祭に来たことを思い出した。
――すみれはどこだ?
とりあえず状況をのみ込んだあと、姿のないすみれを探してみる。部屋の中を探した結果、見つかったのは『先に行ってるね』という書き置きと、白い封筒に入ったカンテラ祭のチケットだけだった。
――一人で行きたい理由でもあるのかな?
急に一人になった寂しさを感じつつ、身支度をすませながらすみれのことを考えてみた。
僕の記憶が正しければ、すみれはカンテラ祭に参加しようとした理由を語っていない。手帳を見ても、関連するワードがないから間違いないだろう。
ならばと、スマホを手に投稿サイトにアクセスしてみる。僕のエッセイは更新が止まっているけど、炎上は収まるどころか勢いを増していた。その中で新たなすみれの投稿がないか調べてみたけど見つけることはできなかった。
気持ちを切り替え、今度は明日晴のページにアクセスしてみる。すみれは、画像やショート動画を中心に作品を投稿していて、ちょっとした人気の作者になっていた。直近の作品を調べてみたけど、ヒントになるような手がかりは見つけられなかった。
――なにか不思議だな
すみれの作品を見ながら、ふとこの世界のつながりの不思議さが胸にこみあがってくる。僕もすみれも、この世界では重大な問題を抱えて生きていながら、けど、投稿サイトでは全く別人のようにふるまっている。さらには、投稿サイトを通じて僕らは出会い、誰かが投稿したカンテラ祭の情報を頼りにここまで来ていた。
だとしたら、僕らはどっちの世界を生きているのだろう。目の前のリアルな世界なのか、あるいはネットに広がる全く違う世界なのだろうか。
「朝からなに考えてんだろう」
飛躍していく自分の思考がなぜかおかしくて、一人愚痴るように自虐する。結局、どっちの世界で生きているのかは大した問題ではなく、大事なのは、僕はこのリアルな世界にもネットの世界にも存在しえるということなのかもしれなかった。
そう結論づけてチェックアウトすると、見事なほどの青空が僕を待ち受けていた。
――この空を見たら、リアルな世界も捨てたものではないかもしれないな
そんなことを考えながら、急に一人になったことにかすかな不安と寂しさを感じつつ、カンテラ祭がある神社へと向かった。