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ゲンジ「はあああ!? ゼロだぁあああ!?」

絶叫するゲンジと沈黙する観客席。

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観客たち「「「あははは!!!」」」

揃って笑い出す。カッコいい登場から0の数字まで、あまりにも上手くできたギャグだったのだ。

メルバ「ふふふふふ! バッカじゃないの? 0とか人じゃないんじゃない?」

メルバの嘲笑も止まらない。

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○少しの時間経過。

観客席でしょぼくれたゲンジ。

ゲンジ「なんでだよぉ。なんで1000出ねぇんだよぉ」

エクト「ま、まぁ。魔力量は人ぞれぞれだから……」

フォローのようでフォローになってないエクト。苦笑いをしている。

エクト(しかし、あんなに強いゲンジに魔力がないって? 本当にただの力自慢なのか?)

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フラン「くっくく……面白かったわよ、お兄。今日、ずっと思い出し笑いしちゃうかも」

さっきから、顔を伏せてずっと笑っていたフランが顔を上げて言う。笑いすぎて、その目にはうっすら涙。

ゲンジ「うるせぇ! お前も同じ目に遭え。ってか兄妹なんだから似たような数字出んだろ」

フラン「ざんねーん。私はお兄みたいに筋肉バカじゃありませーん」

べろべろばー。煽り合いをする兄妹。まぁまぁ、とエクトが宥める。

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司会「は、ハプニングもありましたが……では気を取り直して、次はフランさん!」

ようやく次のフランが呼ばれる。どうやら、装置の不具合なのかチェックをしていたようだった。

フラン「……あ、よ、呼ばれたわね」

兄と戯れていたのに、急に表情が固まるフラン。森の中でこれまでを過ごして来た彼女は、人前に立つのを緊張しているらしい。

ゲンジ「出してこいよ、0をよ」

ばしんと妹の尻を叩く兄。

フラン「ばっ、バカお兄!」

フランは顔を赤らめてゲンジを睨んだ。2人のやり取りに、微笑むエクト。

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ステージ上に立つフラン。表情には、やはり緊張。

エクト「大丈夫かな、フランちゃん」

観客席で心配そうなエクト。とは対照的に、何も言わないが、勝ち誇った顔のゲンジ。

恐る恐るフランが装置に触れる……ピロロロロロ。反応する装置。

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『100000』

空中に映し出される2つの意味で巨大な数値。

観客たちの目が飛び出る。
観客たち「ええええ!?」「はぁぁああ!?」

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フラン「え……」

起きたことに頭の整理が追いついていない様子のフラン。

エクト「な、なんだ!? あの数字は!?」

ゲンジ「おいおいおい! さっすが俺の妹じゃねぇか!」

腰を抜かすほどに驚いているエクトと、立ち上がってガッツポーズをするゲンジ。

エクト(ありえない……10万!? そんな数字あってたまるか)

司会「ええと……あー優勝です。優勝」

考えることを放棄する司会。ぼけっとした顔で拍手をする。

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観客たち「うおおおお!」

大いに盛り上がる観客。フランの優勝が決定した。闇魔女・メルバが陰で歯をくいしばる。

メルバ「な、なんなの、あの魔力量!? 頭おかしいんじゃないの!? 人間じゃない!」

こうして、ゲンジたちは無事に賞金をゲット。魔力量選手権は幕を閉じたのであった。

○夜。ちょっと良さげな宿に入っていく3人。

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○宿の部屋。和風。

3人「「「かんぱーい!」」」

1話に引き続き、乾杯好きの3人。それぞれの好きな飲み物を一気に飲み干した。

エクト「いやー。フランちゃん凄いなっていうか、怖いくらいだよ。なんなんだ、あの数値は」

フラン「でっしょー? ひとえに私の才能ね」

胸を張るフラン。ふふん、と非常に誇らしげ。

ゲンジ「調子に乗るなよー。エクトも言ってたろ、魔力量だけじゃなくて、使える魔法も大事だって。お前、魔法使えないじゃん。雨の降らない雨雲じゃん」

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フラン「魔力のない人の声は聞こえませーん」

フランはゲンジにケチを付けられても、全く効いていない。逆に、ゲンジは顔を真っ赤にさせてキレる寸前の変顔をしている。

エクト「それが不思議だよね。あんなに強いゲンジが魔力なしだなんて」

フラン「パワーバカなのよ、パワーバカ。【ゴルンガ】の生まれ変わりね」

ゴルンガの姿を思い浮かべるフラン。ゴリラのような型のモンスターである。

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1話に続いて、3人の楽しそうな映像。どんどん仲が良くなっている様子の3人。

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○時間経過 テーブルの上は軽い宴会の跡。

フラン「ねぇ。温泉行ってきていいー?」

満腹になり、ゲンジの膝枕で休んでいるフラン。ゲンジに訊く。

ゲンジ「おーおー、行ってこい行ってこい」

エクト「トリグリの街は温泉が有名だからね、きっと気持ちいいよ」

フラン「温泉って、あったかい水なんでしょ? まじで楽しみだわ!」

立ち上がり、興奮気味のフラン。

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ゲンジ「1人で入れるか?」

フラン「うっさい! いつまでも子供扱いしないで! 水浴みくらい1人でできるわよ」

「行ってきまーす」とご機嫌な様子で部屋から出るフラン。そんな背中を見送る男2人。

エクト「さて……」

フランが部屋から出たのを確認して、エクトがゲンジに向き直る。

エクト「せっかく男2人きり。腹を割って話そうよ」

少し真剣な雰囲気。ゲンジはその空気を読んで、居直った。

ゲンジ「お、おう……」

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エクト「あはは。ごめんごめん。そんなに緊張しないでよ。別に何か問いただそうってわけじゃなくてさ」

エクトが姿勢を崩して、飲み物を一口する。

エクト「2人と仲良くなれて、一緒に妹のところまで行ってくれるって……一緒に旅をできて。すごく嬉しいんだけどね、」

エクト「どうしても、1つ気になってるんだ。なんで2人がテルウスの森で長い間暮らしていたんだろうって」

エクトが微笑みを湛えながらゲンジに言った。なんだ、そんなことか。ほっとした表情のゲンジ。

ゲンジ「エクトの金を全部食いもんに使ったこと、怒られるのかと思ったぜ」

エクト「まだ気にしてたんだね、それ」

エクト(じゃあ初めから遠慮してくれよ……)と内心で突っ込むエクト。

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ゲンジ「別に隠すことじゃないし……いや、本当は言わないほうがいいんだけど。まぁ、エクトは友達だしな」

ゲンジが何かを思い浮かべる表情をする。

ゲンジ「俺とフランは龍人族っていう、絶滅した種族の……生き残りだ」

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○場面変換 龍神族の村

龍神族の村の情景図。和風な作りの村。

走り回る子供達。畑作業をする大人たち。実にのどかそうな雰囲気。


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ゲンジのセリフのみ「そして……俺はフランの本当の兄じゃねぇ」

ある大きな屋敷がブラッシュアップされる。

屋敷の中に住むフランによく似た女の子と、その女の子に抱っこされている赤ん坊のフラン。女の子は大人びた笑みを浮かべている。

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○回想スタート

ある小さな家屋から元気に飛び出してきたゲンジ:当時6歳

ゲンジ「父さん、母さん! 行ってきまーす!」

元気に走り出すゲンジの背中。見送る両親。

ゲンジ母「元気ねー、あの子」
ゲンジ父「はっは。良いことだな」

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走っていたゲンジが大きな屋敷の前で立ち止まる。

ゲンジ「大きな家だよなぁ、ここ」

高い塀。閉ざされた門。中が気になって背伸びをしても塀の内側は見えない。

ゲンジ「良いや、飛び越えちゃえ」

ぴょん。ゲンジが地面を蹴ると、すごい勢いで飛びあがる。塀を軽々と飛び越えるゲンジ。

トンッ。着地する……と同時に、ピリリリリ! と警報音が鳴り響く。

ゲンジ「うわわわ……!」 

慌てるゲンジ。そうしている間に、塀の上にバリアのようなものが張られ、逃げられなくなってしまう。

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謎の声「何してるの、キミ!」

声がする。その方向を向くゲンジ。

フランにそっくりの少女「塀を飛び越えてきたの? もうっ。そんなとこでアワアワしてたら、捕まっちゃうよ」

家の中。日本でいう縁側のような作りの場所から、顔を出してきた少女。
ゲンジのいる庭に急いで降りてきて、ゲンジの手を掴む。

少女「ほら、こっちおいで」

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縁側に登り、家の中に入る2人。襖を閉める少女。

○少女の部屋の中

少女の全体像が映し出される。フランとよく似ている。フランを大人っぽくしたような印象。

少女「いらっしゃい、ゲンジくん。私の名前はエミリア」

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ゲンジ。自分より少しお姉さんのエミリアに微笑みかけられ、頰を赤らめる。

ゲンジ「エミ……リア。なんで俺の名前を」

エミリア「見させてもらったの」

セリフとともに、エミリアの右目が煌めく。ゲンジは意味がわからないといった顔。

エミリア「そんなことより! ダメじゃない、人の家に勝手に入ったら」

ゲンジ「ご、ごめんなさい」

叱責されて、しょぼくれるゲンジ。

エミリア「くすくす。そんなに落ち込まないでよ。……ね、私たち、友達になろ?」

ゲンジ「友達……! いいのか! 俺、友達いたことねぇ!」

興奮気味のゲンジ。

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エミリア「子供はすっかり少なくなってるからね、この村」

エミリアのさみしげな表情。

エミリア「このまま、龍人族は衰退していくのね。きっと……」

ゲンジはエミリアの言葉の意味がよくわかっていない様子だ。

エミリア「あっ、そうだ!」

パン! と何かを思いついたかのように手を叩くエミリア。表情は明るいものに戻る。

エミリアが席を外す。ゲンジは1人取り残され、辺りをキョロキョロと珍しがって見渡す。次のコマで、エミリアが帰ってくる。

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エミリア「じゃん! 私の妹のフラン!」

エミリアに抱きかかえられたフラン。赤ん坊。

ゲンジ「あ、赤ちゃんだ……!」

立ち上がるゲンジ。赤ちゃんが相当珍しい様子。

エミリア「そう。……この子とも仲良くしてあげて」

ゲンジ「お、俺も抱っこしていいか!」

バタバタと足踏みしながら、両手を広げるゲンジ。エミリアは面白そうに笑った。

エミリア「……良いけど、乱暴に扱ったらダメだよ? この子はキミたちと違って、弱いんだから」

ゲンジ「絶対優しくする!」

間髪入れない、元気な返事のゲンジ。

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フランを抱っこするゲンジ。感動で目を光らせるゲンジと、ゲンジを不思議そうな目で見上げるフラン。

エミリア「ふふ。泣かない。ゲンジくんが気に入ったみたい」

エミリアは微笑んでいる。

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突然に、部屋のドアが開かれる。

エミリアの家の使用人がすごい勢いで入ってくる。

屋敷の人「エミリア様! 何者かが侵入したようで!」

屋敷の人はゲンジを見つけると、目を丸くした。

屋敷の人「ま、さか……侵入者……!」

エミリア「違いまーす! 私の友達です。この子、おっちょこちょいだから、塀を飛び越えてきちゃったみたいなの」

屋敷の人「な、なるほど……そういうことだったのですか。これは失礼いたしました」

エミリア(いや、失礼したのはゲンジくんだけどね……)

深々と頭を下げる使用人に苦笑いのエミリア。

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ゲンジ「塀越えちゃって、ごめんなさい」

使用人のお辞儀に合わせるように、ゲンジが頭を深々下げる。それを見て、エミリアはくすくすと笑った。

エミリア「じゃあゲンジくん。今日はもうバイバイしようか」

言われて、解散の流れになる。ゲンジは不思議な体験をしたかのように、ぼうっと頷く。

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○エミリア屋敷 門の前

エミリア「じゃあ、また明日にでも、遊びに来てね」

手を振るエミリア。それに応じて、ゲンジも手を振る。

門が閉じられる。閉じた後も、ゲンジはそこに立ち尽くしていた。
ゲンジが思い出すのはエミリアの少し大人びた少女の微笑み。

ゲンジは歩いて、家に戻って行った。

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ゲンジとエミリアの思い出の日々。2人+たまにフランで、色々な場所で遊んでいる。

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エミリア「ゲンジくん。人間族のこと、どう思う?」

ふと、ゲンジに尋ねるエミリア。

ゲンジ「どう思うって、会ったことないしなぁ」

エミリア「会ったら、何したい?」

ゲンジの答えに対し、「そうだよね」と笑いながら、なおも問いかける。

ゲンジ「なにしようかなー」

エミリア「私はね、友達になりたい」

エミリアが笑う。大きなコマ。

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ゲンジ「友達……なれるかな」

エミリア「なれるよ。人間族は私たちに比べたら、か弱い種族。……だから、力ある私たちを恐れ、私たちを、こんな小さな村に追いやってしまった」

村を俯瞰した絵が映る。

エミリア「……でも、私たちが優しさで接すれば、きっと仲良くなれる」

ゲンジ「そうか! じゃあ、俺も友達になるぜ!」

エミリアとゲンジが笑い合う。

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武装した大量の人間たちが龍人族の村を囲っている。その中心人物がブラッシュアップされる。国軍最強の兵士:クライゼン。