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○川沿い。巨大な蛇が焼かれている。男と謎の青年の会話からスタート。
丸焼きになった巨大な蛇のモンスター。それを呆然と見上げながら男が口を開く。
男「君たちがやったのか? これを」
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謎の青年「あぁ、そうだぜ」
あっけらかんと即答する青年に唖然とする男の対比。
男「嘘だろう!? 討伐難易度Sはくだらないモンスターだぞ!?」
謎の青年「まじか! 普通に倒せたけど……てか討伐ナンイドってなに?」
男「……」
青年の笑顔に閉口してしまう男。
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男「と、とにかく! 僕のことを助けてくれたってことだよね。本当にありがとう。この恩は一生忘れないよ」
謎の青年「全然気にしなくていいぜ。飯のついでだったわけだし」
わはは、と笑って、蛇肉をひとかじりする謎の青年。
男「飯って、もしかしてここに住んでいるのか、君は?」
謎の青年「そうだねぇ、かれこれ10年以上は」
男(信じられない……テルウスの森に人間が住めるわけがない)
男はひたすら驚愕してばかりだった。
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謎の青年「あんたも食べなよ。フランはもう食べないって言うからさ」
謎の青年が丸焼きを指差しつつ言う。
男「フラン?」
視線を川の方にやる男。火から少し離れた場所に、少女が1人座っている。遠くからのフランの絵。
謎の青年「俺の妹だ。おーい、そんなに離れてないで、もっとこっち来いよ」
フラン「でも……だって」
兄に声を掛けられるが、フランは少し躊躇った様子。
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謎の青年「いやはや、『でも』と『だって』が多い年頃で困ったもんだ」
謎の青年は男に向かって愚痴を言ってから、再びフランに声を飛ばす。
謎の青年「そうかそうか。初めての人間がそんなに怖いか! まぁフランは臆病者だから仕方ないよな、あっはっはっは」
わかりやすく高笑いして妹を挑発する兄。対して妹は、すくっと立ち上がりこちらにトテトテとやって来る。
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謎の青年「お、来た来た」
と同時に、ペチンと妹に頭をはたかれる青年。
フラン「うっさい、バカお兄。別に臆病じゃないわよ。ただ、心の準備をしてたってだけ」
しかめっ面で兄に言い返す妹。はいはい、と肩をすくめる兄。
フラン「はじめまして。私の名前はフラン。歳は13です。よろしくお願いします」
まるで準備してあったかのように言葉を述べるフラン。フランの顔や全体像がはっきりと描かれる。
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謎の青年「おーおー。ちゃんと準備してた通り言えたな」
茶化す兄。睨む妹。
男「フランちゃん。よろしくね。僕の名前はエクト。歳は24」
2人に対して自己紹介をする男。名前はエクト。
あ、俺もしなきゃ。という風に、謎の青年も最後に自己紹介をする。
謎の青年「俺はゲンジ。歳は18だから、エクトが1番年上だな」
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時間経過を表す風景描写。
3人が適当な流木に腰を掛けて、火を囲い食事をしている。
ゲンジ「……で、なんでこんな辺境の森に来たんだ? 久しぶりに人を見たよ」
エクト「この森に住む、あるモンスターを倒しに来たんだ。神獣レウニスっていう」
深刻そうな顔でエクトは打ち明けた。
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ゲンジ「なるほどね。……で、ターゲットを見つける前に、コブラに食われそうになってたわけか」
エクト「恥ずかしながら。助けてくれて本当に感謝している。重ねて礼を言うよ」
腕組みをして、納得した表情のゲンジと気恥ずかしそうなエクト。フランはゲンジの隣で黙々と木の実を食べている。
フラン「ねぇお兄。わたし何か甘いのが食べたい」
フラン。木の実を食べていると思ったら、ふと顔を上げてゲンジにせびる。
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ゲンジ「こら。人が話をしている途中でしょうが」
ゲンジが親みたいな口調でフランを叱ると
フラン「あっ……あ! ごめんなさい」
素直に謝罪をするフラン。はしたないマネをしたと、少し顔を赤らめる。
エクト「いいよ、いいよ。育ち盛りだもんね」
ははは、と笑うエクト。
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ゲンジ「仕方ねぇなぁー。実はフランに誕生日プレゼントがあるんだ。果実よりもよっぽど良いものだぜ。欲しいだろ?」
フラン「え、え!? なになに?」
兄の不敵な笑みにフランは立ち上がって盛り上がる。
ゲンジ「目ぇ輝かせやがって。お子ちゃまだなぁ」
フラン「は? うっさ。早く持ってきてよ!」
エクト。そんな2人のやり取りを微笑ましそうに見つめている。
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エクト(仲の良さそうな兄妹だなぁ。初めましてなのに、お互いの愛が伝わって来る)
そんな中、ふと、フランの姿とセレンの姿が重なった。はっとするエクト。
エクト(セレン……! きっと今も、病に苦しんでいるのだろう。早くレウニスを狩って、薬を創らないと……)
険しい表情で空を見上げるエクト。皮肉な晴天が広がっている。
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ゲンジ「ほらよ! フラン、誕生日おめでとう!」
ドシン。響く重低音。その音にエクトは我に返った。ゲンジが誕生日プレゼントを運んできたらしい。
フラン「うわ! すごいよ、お兄!」
フランがエクトの後方に目をやりながら盛り上がっている。エクトがどれどれと振り返ると……
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巨大な鹿のモンスター。どこか神々しさすらも感じさせる––––神獣レセウスの姿がそこにあった。
ただ、神獣はもう息をしていない。そこにあるのは兄妹の食料と化した、かつての森の王。
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エクト「えぇえええ!!??」
本日1番の絶叫をあげるエクトである。
ゲンジ「美味そうだろ!? この森でとびきり大きな肉だ。フランが13になる誕生日プレゼントとして、ずっと前から狙ってたんだぜ」
横たえたレウニスの上に立ち、Vサインを掲げるゲンジ。
フラン「ほんと! 大きくてとっても美味しそう! ありがとうお兄―」
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はしゃぐ2人を余所にして、エクトはなおも愕然としている。
エクト「こ、これ!」
ゲンジ「ん? どしたエクト」
エクトはわななきながら、神獣レウニスの死体を指差した。
エクト「こ、これ……神獣レウニスだ……」
ゲンジ「え! まじか!」
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ゲンジ「いやぁ。これ、エクトのターゲットだったのか。悪いことしたなー。もう倒しちまったよ」
レウニスから飛び降りてきて、気まずそうな表情のゲンジ。
エクト「いや、いい! いいんだよ! 僕が欲しかったのは、このモンスターの角なんだ!」
エクトは駆け出して、レウニスの双角の目の前に行った。それを見上げ、満面の笑みのエクト。希望に満ちた表情。
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エクト「ゲンジ! この角、貰っていいかな!」
ゲンジの方へ振り返って、エクトは言う。ゲンジが間髪入れずに頷く。
ゲンジ「もちろんいいぜ! 角は食えないからなー」
言いながら、ゲンジは高くジャンプした。エクトを軽々と飛び越え、片方の角に飛びつく。そうして、そのまま、
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ゲンジ「おりゃあああ!」
バキィイ! と派手な音を立てながら、角をへし折ってしまった。
おー、と小さく拍手するフランの顔と、またまた驚き顔のエクト。
エクト「あ……はは。今日、僕驚いてばっかだな」
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ゲンジ「それで? こんな角なんか何に使うんだ? もしかして食べんの?」
巨大な角1本をエクトの目の前に運んで来て、地面に置きながらゲンジは尋ねる。
エクト「食べないよ! ……これを煎じると、どんな薬も治してしまう万能薬になるんだよ。……実は、僕の妹が難病に侵されてしまったらしくてね」
ゲンジ「妹が? 死んじまいそうなのか?」
エクト「うん……。でも、もう大丈夫。この角を持って帰れば、病気は治る。ゲンジ、フラン。君たちのおかげだ。命を助けて貰った上に、僕の欲しかった角まで貰って……感謝しきれないよ」
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フラン「わ、私は何もやってないし……ほら、お兄。ありがとうだって」
頭を深々と下げるエクトに対して、慌てるフラン。フランに言われたゲンジは、しかし、何か考えたように険しい顔で目を閉じている。
ゲンジ「そんなこと知っちゃあ、このままみすみす帰すわけにはいかねぇなぁ」
少し、不吉な雰囲気。ゲンジの顔は険しい。何かを考えているよう。
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が、次の瞬間、一転してゲンジは笑顔になった。
ゲンジ「俺とフランも連れて行け! 一緒に妹を助けようぜ!」
グーサインのゲンジ。
エクト「え! い、いいのか……?」
ゲンジ「もちろん。そんな事情聞いたら放っておけねぇよ。それに……同じ妹愛を持つもの同士、エクトとは……友達になれそうな気がする!」
エクト「と、友達……?」
エクトは突拍子のない、そのワードに目をぱちくりさせる。
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大きなコマ
ゲンジ「俺たちはたくさん友達を作るのが夢なんだ……!」
屈託のない笑みと純粋な目。
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フラン「ま、丁度いいわね。元々、私の13の誕生日に森から出ようとしてたんだし」
ゲンジ「そゆこと、そゆこと。今日この日に出会ったのは、運命ってやつだな」
2人のやり取りを見ながら、エクトは内心でかなり安心していた。
エクト(正直、1人でこの森から出られる保証はない。どんな魔法を使うのかは知らないけど、レウニスを倒せるほどの力を持つゲンジが一緒なら、これほど頼もしいことはないよ)
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ゲンジ「でも、悪いけど。もうじきに日が暮れる。さすがに夜の森は暗くて抜けられない。出発は明日の朝早くだな」
傾き出している日。そして、夜の森のイメージが挟まれる。森は暗く。道が見えない。
エクトは一瞬考えるようにしてから、すぐに首を横に振る。
エクト「了解した。無理に急いでも意味がないからね。今日に角を手に入れられるなんて思ってもなかったから、むしろ早いくらいだよ」
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○夜。川沿い。今度は蛇ではなくてレウニスが焼かれている。
3人が木でできたコップを手にして。まさに乾杯の前と言った様子。
ゲンジ「それじゃあ、改めて。フランの13の誕生日……そして、エクトと俺たちの出会いを祝して……乾杯!」
3人「乾杯―!」
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祝宴を楽しむ3人の様子。一夜にして、だんだんと仲良くなる3人である。
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○一夜明けた早朝。祝宴の後の川沿い。昨夜の祭りの雰囲気が残る。
そんな雰囲気を引きずることなく、ゲンジとフランは旅立ちの服装へと一変している。
ゲンジ「そんじゃあ、行きますか!」
ゲンジが巨大な角を1本背負って、立ち上がった。
すると突如として、現れる熊のモンスター。
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ゲンジ「いざ、街へ!」
ゲンジが角の重さを物ともせずハイジャンプし、その勢いで熊のモンスターを殴り飛ばす。
背景に2人の楽しそうな表情も映り、晴れやかなスタート。
○川沿い。巨大な蛇が焼かれている。男と謎の青年の会話からスタート。
丸焼きになった巨大な蛇のモンスター。それを呆然と見上げながら男が口を開く。
男「君たちがやったのか? これを」
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謎の青年「あぁ、そうだぜ」
あっけらかんと即答する青年に唖然とする男の対比。
男「嘘だろう!? 討伐難易度Sはくだらないモンスターだぞ!?」
謎の青年「まじか! 普通に倒せたけど……てか討伐ナンイドってなに?」
男「……」
青年の笑顔に閉口してしまう男。
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男「と、とにかく! 僕のことを助けてくれたってことだよね。本当にありがとう。この恩は一生忘れないよ」
謎の青年「全然気にしなくていいぜ。飯のついでだったわけだし」
わはは、と笑って、蛇肉をひとかじりする謎の青年。
男「飯って、もしかしてここに住んでいるのか、君は?」
謎の青年「そうだねぇ、かれこれ10年以上は」
男(信じられない……テルウスの森に人間が住めるわけがない)
男はひたすら驚愕してばかりだった。
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謎の青年「あんたも食べなよ。フランはもう食べないって言うからさ」
謎の青年が丸焼きを指差しつつ言う。
男「フラン?」
視線を川の方にやる男。火から少し離れた場所に、少女が1人座っている。遠くからのフランの絵。
謎の青年「俺の妹だ。おーい、そんなに離れてないで、もっとこっち来いよ」
フラン「でも……だって」
兄に声を掛けられるが、フランは少し躊躇った様子。
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謎の青年「いやはや、『でも』と『だって』が多い年頃で困ったもんだ」
謎の青年は男に向かって愚痴を言ってから、再びフランに声を飛ばす。
謎の青年「そうかそうか。初めての人間がそんなに怖いか! まぁフランは臆病者だから仕方ないよな、あっはっはっは」
わかりやすく高笑いして妹を挑発する兄。対して妹は、すくっと立ち上がりこちらにトテトテとやって来る。
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謎の青年「お、来た来た」
と同時に、ペチンと妹に頭をはたかれる青年。
フラン「うっさい、バカお兄。別に臆病じゃないわよ。ただ、心の準備をしてたってだけ」
しかめっ面で兄に言い返す妹。はいはい、と肩をすくめる兄。
フラン「はじめまして。私の名前はフラン。歳は13です。よろしくお願いします」
まるで準備してあったかのように言葉を述べるフラン。フランの顔や全体像がはっきりと描かれる。
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謎の青年「おーおー。ちゃんと準備してた通り言えたな」
茶化す兄。睨む妹。
男「フランちゃん。よろしくね。僕の名前はエクト。歳は24」
2人に対して自己紹介をする男。名前はエクト。
あ、俺もしなきゃ。という風に、謎の青年も最後に自己紹介をする。
謎の青年「俺はゲンジ。歳は18だから、エクトが1番年上だな」
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時間経過を表す風景描写。
3人が適当な流木に腰を掛けて、火を囲い食事をしている。
ゲンジ「……で、なんでこんな辺境の森に来たんだ? 久しぶりに人を見たよ」
エクト「この森に住む、あるモンスターを倒しに来たんだ。神獣レウニスっていう」
深刻そうな顔でエクトは打ち明けた。
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ゲンジ「なるほどね。……で、ターゲットを見つける前に、コブラに食われそうになってたわけか」
エクト「恥ずかしながら。助けてくれて本当に感謝している。重ねて礼を言うよ」
腕組みをして、納得した表情のゲンジと気恥ずかしそうなエクト。フランはゲンジの隣で黙々と木の実を食べている。
フラン「ねぇお兄。わたし何か甘いのが食べたい」
フラン。木の実を食べていると思ったら、ふと顔を上げてゲンジにせびる。
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ゲンジ「こら。人が話をしている途中でしょうが」
ゲンジが親みたいな口調でフランを叱ると
フラン「あっ……あ! ごめんなさい」
素直に謝罪をするフラン。はしたないマネをしたと、少し顔を赤らめる。
エクト「いいよ、いいよ。育ち盛りだもんね」
ははは、と笑うエクト。
Page 11
ゲンジ「仕方ねぇなぁー。実はフランに誕生日プレゼントがあるんだ。果実よりもよっぽど良いものだぜ。欲しいだろ?」
フラン「え、え!? なになに?」
兄の不敵な笑みにフランは立ち上がって盛り上がる。
ゲンジ「目ぇ輝かせやがって。お子ちゃまだなぁ」
フラン「は? うっさ。早く持ってきてよ!」
エクト。そんな2人のやり取りを微笑ましそうに見つめている。
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エクト(仲の良さそうな兄妹だなぁ。初めましてなのに、お互いの愛が伝わって来る)
そんな中、ふと、フランの姿とセレンの姿が重なった。はっとするエクト。
エクト(セレン……! きっと今も、病に苦しんでいるのだろう。早くレウニスを狩って、薬を創らないと……)
険しい表情で空を見上げるエクト。皮肉な晴天が広がっている。
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ゲンジ「ほらよ! フラン、誕生日おめでとう!」
ドシン。響く重低音。その音にエクトは我に返った。ゲンジが誕生日プレゼントを運んできたらしい。
フラン「うわ! すごいよ、お兄!」
フランがエクトの後方に目をやりながら盛り上がっている。エクトがどれどれと振り返ると……
Page 14
巨大な鹿のモンスター。どこか神々しさすらも感じさせる––––神獣レセウスの姿がそこにあった。
ただ、神獣はもう息をしていない。そこにあるのは兄妹の食料と化した、かつての森の王。
Page 15
エクト「えぇえええ!!??」
本日1番の絶叫をあげるエクトである。
ゲンジ「美味そうだろ!? この森でとびきり大きな肉だ。フランが13になる誕生日プレゼントとして、ずっと前から狙ってたんだぜ」
横たえたレウニスの上に立ち、Vサインを掲げるゲンジ。
フラン「ほんと! 大きくてとっても美味しそう! ありがとうお兄―」
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はしゃぐ2人を余所にして、エクトはなおも愕然としている。
エクト「こ、これ!」
ゲンジ「ん? どしたエクト」
エクトはわななきながら、神獣レウニスの死体を指差した。
エクト「こ、これ……神獣レウニスだ……」
ゲンジ「え! まじか!」
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ゲンジ「いやぁ。これ、エクトのターゲットだったのか。悪いことしたなー。もう倒しちまったよ」
レウニスから飛び降りてきて、気まずそうな表情のゲンジ。
エクト「いや、いい! いいんだよ! 僕が欲しかったのは、このモンスターの角なんだ!」
エクトは駆け出して、レウニスの双角の目の前に行った。それを見上げ、満面の笑みのエクト。希望に満ちた表情。
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エクト「ゲンジ! この角、貰っていいかな!」
ゲンジの方へ振り返って、エクトは言う。ゲンジが間髪入れずに頷く。
ゲンジ「もちろんいいぜ! 角は食えないからなー」
言いながら、ゲンジは高くジャンプした。エクトを軽々と飛び越え、片方の角に飛びつく。そうして、そのまま、
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ゲンジ「おりゃあああ!」
バキィイ! と派手な音を立てながら、角をへし折ってしまった。
おー、と小さく拍手するフランの顔と、またまた驚き顔のエクト。
エクト「あ……はは。今日、僕驚いてばっかだな」
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ゲンジ「それで? こんな角なんか何に使うんだ? もしかして食べんの?」
巨大な角1本をエクトの目の前に運んで来て、地面に置きながらゲンジは尋ねる。
エクト「食べないよ! ……これを煎じると、どんな薬も治してしまう万能薬になるんだよ。……実は、僕の妹が難病に侵されてしまったらしくてね」
ゲンジ「妹が? 死んじまいそうなのか?」
エクト「うん……。でも、もう大丈夫。この角を持って帰れば、病気は治る。ゲンジ、フラン。君たちのおかげだ。命を助けて貰った上に、僕の欲しかった角まで貰って……感謝しきれないよ」
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フラン「わ、私は何もやってないし……ほら、お兄。ありがとうだって」
頭を深々と下げるエクトに対して、慌てるフラン。フランに言われたゲンジは、しかし、何か考えたように険しい顔で目を閉じている。
ゲンジ「そんなこと知っちゃあ、このままみすみす帰すわけにはいかねぇなぁ」
少し、不吉な雰囲気。ゲンジの顔は険しい。何かを考えているよう。
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が、次の瞬間、一転してゲンジは笑顔になった。
ゲンジ「俺とフランも連れて行け! 一緒に妹を助けようぜ!」
グーサインのゲンジ。
エクト「え! い、いいのか……?」
ゲンジ「もちろん。そんな事情聞いたら放っておけねぇよ。それに……同じ妹愛を持つもの同士、エクトとは……友達になれそうな気がする!」
エクト「と、友達……?」
エクトは突拍子のない、そのワードに目をぱちくりさせる。
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大きなコマ
ゲンジ「俺たちはたくさん友達を作るのが夢なんだ……!」
屈託のない笑みと純粋な目。
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フラン「ま、丁度いいわね。元々、私の13の誕生日に森から出ようとしてたんだし」
ゲンジ「そゆこと、そゆこと。今日この日に出会ったのは、運命ってやつだな」
2人のやり取りを見ながら、エクトは内心でかなり安心していた。
エクト(正直、1人でこの森から出られる保証はない。どんな魔法を使うのかは知らないけど、レウニスを倒せるほどの力を持つゲンジが一緒なら、これほど頼もしいことはないよ)
Page 25
ゲンジ「でも、悪いけど。もうじきに日が暮れる。さすがに夜の森は暗くて抜けられない。出発は明日の朝早くだな」
傾き出している日。そして、夜の森のイメージが挟まれる。森は暗く。道が見えない。
エクトは一瞬考えるようにしてから、すぐに首を横に振る。
エクト「了解した。無理に急いでも意味がないからね。今日に角を手に入れられるなんて思ってもなかったから、むしろ早いくらいだよ」
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○夜。川沿い。今度は蛇ではなくてレウニスが焼かれている。
3人が木でできたコップを手にして。まさに乾杯の前と言った様子。
ゲンジ「それじゃあ、改めて。フランの13の誕生日……そして、エクトと俺たちの出会いを祝して……乾杯!」
3人「乾杯―!」
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祝宴を楽しむ3人の様子。一夜にして、だんだんと仲良くなる3人である。
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○一夜明けた早朝。祝宴の後の川沿い。昨夜の祭りの雰囲気が残る。
そんな雰囲気を引きずることなく、ゲンジとフランは旅立ちの服装へと一変している。
ゲンジ「そんじゃあ、行きますか!」
ゲンジが巨大な角を1本背負って、立ち上がった。
すると突如として、現れる熊のモンスター。
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ゲンジ「いざ、街へ!」
ゲンジが角の重さを物ともせずハイジャンプし、その勢いで熊のモンスターを殴り飛ばす。
背景に2人の楽しそうな表情も映り、晴れやかなスタート。