「大召喚士様っありがとうございます……ううっ」
「まさか下民紋が首から消えてなくなる日が訪れるなんて…… 」
「下民なんかにまで優しい大召喚士様がいたなんて……」

 俺は今、ミントが集めて来た仲間達の、下民の紋を消しているんだが。
 初めはみんな半信半疑だったようで、仲間達の消えた下民紋を見た途端に我が我がと列をなし、いつの間にやら俺の事を大召喚士様と言い出した。

 まぁ、一番の原因は再会したおっさん達なんだよな。

「貴方様は異世界から召喚されし大召喚者様!」
「こんな所で再会出来るなんて、感動です」

 などど言って俺の前にいきなり平伏した。
 このおっさん達は、聖印が偽物だと言って、魔法師長のじいさん達から置いてきぼりにされた俺を親切にじいさん達の所へと案内してくれた人達。
 この世界の事も色々と教えてくれて感謝してるんだが……俺のタトゥーも見ているし、異世界人ってのも知ってるのでタチが悪い。

 瞬く間に下民街に住む住民達が、俺の事を大召喚士だと信じてしまった。

 まぁ……俺にも召喚出来ることが分かったので、あながち嘘では無くなったんだが。

 すげえすげえと崇め奉られるのは、慣れてないのでむず痒い。

「これで並んだ奴らの紋は全て消したか?」

 俺が一息つこうとしたら、ミントがもじもじと何か言いたげに俺をみる。

「どうしたんだミント?」

「……あの。その……実は……」

 言いづらいのか中々言わないミント。

「何だ? 何でも言ってくれ?」

 俺がそう言うと、ミントは息を大きく吸って飲み込んだ。

「ゴクッ。じっ実はこの下民街には家で寝たきりの人も多くて……そのう」

 ああそうか。ミントの親も寝たきりで重病だと言っていたな。
 自分の親の紋を消してくれと言いづらいのか。

「分かったよ! 今度は家を回ろうか」
「はっはい!」

 ミントが瞳を輝かせて、俺にギュッと抱きついてきた。


★★★


「お母さん。下民紋を消してくれる大召喚士様がきてくれたよ」

 家の扉を軽快に開け中に入り、ニコニコとミントが母親に向けてそう言うと。
 その言葉を聞いた女性が、俺達を見てベッドから転げ落ちた。
 多分慌てて起き上がろうとしたのに、出来なくてベッドから落ちたんだろう。

「おおっおい! 大丈夫か?」

 俺は慌てて女性をベッドに戻す。

「すみません。お見苦しい所を見せてしまって」

 女性はベッドの上で頭を目一杯下げる。大召喚士様の名前って凄い威力があるんだな。

「あのう……下民紋を消すとは?」

「ふふっ。お母さん僕の首を見て?」

 ミントは母親が座るベッドの横に座り、自身の首を見せる。

「……え? 紋がない?」

 母親がミントの首を不思議そうに撫でた。

「分かった? この大召喚士乱道様が消してくれたんだ」

 おいミント、その名前は恥ずかしいぞ。

「あああっ大召喚士様ありがとうございます!」

 再び頭を下げようとするので、俺は慌てて止めさせた。
 もうお礼はお腹いっぱいだ。