「…………はぁ。あのさ? 頭を上げてくれねーか?」

 俺の周りに爺さん達が集まり、全員がいきなり頭を下げた。
 何だってんだ? 

「では私どもの事を許していただけると?」

「許すも何も……爺さん達のことを、何とも思ってねーし」

 俺はため息を吐きながら髪をかき上げると、その手をヒラヒラと爺さん達に向けてふった。

「じゃあな? 俺はこの後冒険者ギルドに行って身分証の発行をしてもらうからさ」

「ちょっと待ってください! この国の宮廷魔法師になって下さい。あなた程の魔法を使える者はこの国にいません。優遇しますので是非」

 その場を去ろうとしたら、俺のことをクソカスに言っていた白髭の爺さんが、とんでもないことを言い出した。
 あれほど俺の事を魔力なしって言ってたくせに。
 
「…………それは俺の実力を認めたってことか?」

「はい! もちろんです。乱道様の素晴らしい魔力を、私どもの魔道具では測りきれなかったと言うのが、重々に分かりましたし」

「そっか。なら良いよ」

「では!? 宮廷魔法師に……「ならねーよ。それはごめんだな」

 爺さんの話を、途中で遮って断ってやった。
 まさか断られるとは思ってなかったんだろう。
 爺さんは鳩が豆鉄砲くらったような顔で固まっている。

「そそっそんな。魔法師達の憧れの職業なんですよ? 宮廷魔法師は! それを断るなんて……」

「俺はそんなもんに憧れてねーから。じゃな?」

「ちょっと待って下さい。断ると言うなら、この国で身分証を作れないようにしますぞ?」

「は? 何だよ脅してるのか?」

「他国で作ろうにも、下民の紋があるのでこの国から出る事はできませんしね?」

 爺さんは少しだけ口角を上げ、ものすげえ嫌な顔で笑う。
 それで俺が言うことを聞くとでも思ったんだろう。

「あのさ? 下民の紋てどこにあるんだ?」

「はっ? どこってこの前……え?」

 俺の首を見て目を丸くする爺さん。
 だって俺の首にはもう、下民の紋なんてねーからな。

「ななっない!? どうしてだ!? あの紋は入れた魔法士でないと解除出来ないのに!」
「本当ですじゃ! 紋が消えるなんて!?」
「そんなことが有り得るのか!?」

 爺さん達はオロオロと慌て出した。

 下民の紋で俺を縛ろうとしていたなんて、ひでえ事ばっか考える爺さんだ。

 てかよく考えたら、身分証は他国で作って貰えば良いんだよな。
 作って貰えるかは分かんねーけど。
 この国よりはマシだろ。

『乱道様を侮辱するとは許すまじですね』

 我路は横で大人しく話を聞いていたんだが、我慢の限界が来たようだ。
 いつの間にやら刀を抜刀し、いつでも爺さん達を殺れるように構えている。

「我路。俺は怒ってないし、気にしてないから大丈夫だ」

『ですが……』

 そう言うも我路は納得がいかないのか、刀を鞘に収めようとしない。

「こんな奴らに、お前の力を使う価値もねーから! なっ? もう行こうぜ」

 俺は我路の肩をポンと叩くと、城下町に背を向けて歩き出した。
 少し納得はいってない感じだが、俺の意見を優先してくれたのか、後をついて来た。

『乱道様、街で買い物はしないのですか?』

 我路は城下町とは真逆の方向に歩き出した俺を、不思議そうに見る。

「ああ。今城下町に行くと、騒がれそうだしな? もうどうせならこのまま隣国に行こうかなっと思ってな」

『なるほど。それは良い考えですね。こんなゴミ王国からはさっさと離れた方が良いですね』

 我路は綺麗な所作で刀を納刀しながら、ほほ笑んだ。

「じゃあ走っていくか!」
『お供します』

 俺は足に力を込めて地面を蹴り上げ走り出した。
 そのすぐ後ろを、涼しい顔でついて来る我路。

『あっ待つでちよー!』
「うゆっ!」
『キャンキャン』

 その後を琥珀達がじゃれ合いながらついて来ている。

 爺さん達が後ろで何やら必死に叫んでいたようだけど、遠くて何言ってんだか聞こえなかった。

 どうせ俺の悪口だろうけど。

 じゃあな? エセ王国。