「なっ!? なんだその不思議な魔道具は!?」
「奇妙な形をしておる……」
「あの虎のような生き物は、何処に行ったのだ!?」
「急に姿が消えた……!?」

 琥珀がタトゥーマシーンの姿にいきなり変化したので、その変化に追い付けない爺さんたちや冒険者たちは、いきなり登場したこの姿に驚いている。

 どうやら琥珀(イコール)タトゥーマシーンの図が考え付かないようだ。
 まっそりゃそうか。
 姿が変わるとか、普通は想像もつかないよな。

「生意気言っていた、あの妙な虎は何処に行ったんだ?」

 ルミなんっ……めんどくせえな。
 コイツはルミでいいや。ルミ野郎は琥珀がいなくなったので、キョロキョロと辺りを見回している。

「……なんだ。私が怖くなって、尻尾を巻いて逃げたのだな。あははっ口だけ達者な奴め」

 ルミ野郎の高笑いに、腹を立てた琥珀はプルプルと震えると。

『なっ! ワレは逃げてなどいないでち! 琥珀DXタトゥーマシーンに変化しただけでち』

 マシーン姿でブンブンと上下に暴れる。

「わっこら! 琥珀!?」

 急に激しく動くもんだから、俺は右手に持った琥珀に振り回されそうになる。

「お前はなにをやってるんだ?」

 そんな俺の姿を、バカにしたように見るルミ野郎。クソッ。

「さっきの奇妙は虎は急に居なくなった。飼い主のお前が責任とって、凄い力とやらを見せてくれよ? まぁそんな力があればだが、ククッ」

 今度は俺の力を見せてみろと、ルミ野郎が馬鹿にしたように言ってきた。
 クルトンといい何なんだ? 
 そんなにしてまで、人を下にみたいのか? 俺にはよく分からねえ感情だな。

 ……ったく。何が楽しいんだか。

 そんなつまらねぇ感情に、いちいち付き合ってられっかよ。

「皆様、よく聞いてください。この男は、自分で聖印を書くような男ですよ? そんな男が古代魔法を使えるなんて私はそうは思えません。きっと別の誰かのした事を、さも自分がやったかの様に言っているだけかと」

「「「「………!!」」」」

 ルミ野郎のその言葉に、爺さん達やギルマスが、目丸くしてお互いを見合っている。

「まさかと思うが……ギルドマスターよ? この男が魔法を発動した時、近くに居なかったんじゃ……? ちゃんと確認しましたよね?」

 髭の爺さんが、そう言ってギルマスをジロリと睨む。
 ギルマスは爺さんの言葉に、動揺が隠せず生唾を飲み込んだ。
 そりゃそうだろうな。
 だって離れたところから見てたもんな。
 ワイバーンに至っては、真っ先に逃げ俺が討伐してから、ノコノコと戻って来やがったしな。

「そっ……それはそのう……」

「まさか!? 見ていないのか!?」

 ギルマスは、何とも気不味そうな顔で頷く。

「…………はっ。なんて事だ。我らはとんだ茶番劇につき合わされたって事か。わざわざ出向いて来て……居たのは偽物(ポンコツ)男」
「古代魔法をその偽物男が使えるとかおかしいと思ったんじゃ……」
「またその男に騙されたのか……」

 白髭の爺さんを筆頭に、魔法師長と呼ばれている黒いローブを羽織った爺さん達が、呆れたように俺を見る。

 何を勝手な解釈をしてるんだ? 

『乱道様……コイツらは馬鹿なのでしょうか? 何故そんな解釈になるのでしょう?』
 
 爺さん達の話を、黙って聞いていた我路が、不思議そうに首を傾げる。
 ほんとそれな。

 きっとコイツらは、一度自分達が偽物(ポンコツ)認定した男が、やっぱり凄かったなどどと、思いたくないんだろうな。

 ……ったく。しょうもないプライドだぜ。

『らんどーちゃま。早くやってやるでち!』
 
 そんな中、琥珀だけが闘志をメラメラと燃やしている。
 やってやるって……何をする気なんだ琥珀よ?

「これ以上この偽物男が調子に乗らないよう、お仕置きが必要ですね。その役目私に任せてくれませんか?」

 ルミ野郎が俺をお仕置きするとか大声で言い出した。
 勝手に言ってろ。

 そのルミ野郎の言葉に賛同したのか、爺さん達も「おおっそれは良い。折角だから召喚士様の召喚獣も、お披露目したら良いですね」っと口角を上げて話す。

「よし! 偽物男よ、街の外に出て私と勝負だ!」

 …………何を言ってるんだこの男は。勝負って……お前さっき、お仕置きとか言ってただろ?
 急に正当化しやがって。
 本当はそんな話に乗ってやる程、俺は親切じゃねーんだが。
 今回はかなりバカにされたし、なにより琥珀をが乗り気だからな。

 この変な勝負受けて立ってやるよ。
 いやいやだけどな?
 お前の言う事を聞くんじゃねぇからな。
 琥珀のためだ。


「……….分かったよ」

『勝負でち!』