『お前達は…………ほんっと~にっ! バカでちねぇ』
「うゆ!」
琥珀は、短い腕でどうにか腕組みをすると、足をドンッと踏み鳴らす。
その横で稲荷も、キッとルミ何とかを睨みつける。
「なっなんだ!? この奇妙は生き物は!?」
「獣人だろ!?」
「こんな虎獣人か? 初めて見たぞ……」
みんなが琥珀を不思議そうに見る。……まぁそうだろうな。
せめて服さえ着せていればと悔やまれる。
ーーってそんな事考えてる場合じゃねぇ。
とにかくアイツを止めないと! 何をやらかすつもりなのか、全く見当がつかない。
「琥珀……気持ちは嬉しいよ。とりあえずこっちに戻ってこい」
俺は琥珀に向かって手招きする。
『らんどーちゃま! このバカどもにはお仕置きが必要でちよ! そこでちょっと待っとくでち』
「あい!」
稲荷もその言葉に大き頷く。
『行くでち稲荷!』
「うゆ!」
琥珀は稲荷を背負ったまま、ルミなんとかまで一直線に走っていった。
『思い知るがいいでち! 琥珀スペシャルパーンチ!』
ポヨン。ポフポフポフン。
琥珀が、ルミなんとかの腹を必死に殴るが、何とも心地よい音が響く。
「あはははっ。さすが偽物の仲間だ! 何がしたいんだ? マッサージしてくれているのか?」
ルミ何とかが、バカにしたように琥珀の頭に手を伸ばすと、ガシッと掴んだ。
すると、琥珀の短い手が届かなくなり、グルグル空を切る。パンチを回す音だけが虚しく響く。
『なっ……なんで当たらないでち!?』
それはな琥珀よ? お前の頭を抑えられているからだ。
「はっ飛んだ茶番聞だったな」
『なっなんでちっ! わっ!?』
ルミなんとかが、琥珀を蹴り上げた。その反動で宙に浮く琥珀と稲荷。
それを我路が、さっと抱き止めた。
『あっありがとでち!』
「うゆ」
『どういたしまして』
我路は、琥珀と稲荷を抱きしめたまま優しく笑うと、俺の方を見て『これ以上は許せませんね』とルミなんとかを睨む。
稲荷と琥珀を下に下ろすと、日本刀を再び構える我路。
一瞬でこの場にいる者たち全てを、斬り殺せる気を放っている。
そんな気合いを放つ我路の手に、ぽにっと琥珀の柔らかな肉球が触れる。
『我路……ここはワレに任せて欲しいでち。ワレはいっぱいバカにされて悔しいでち。このまま終われないでち』
琥珀はいつものあざといキュルンでは無く、闘志溢れる瞳で我路をジッと見つめる。
『琥珀様………………分かりました。ここは譲ります』
『我路! ありがとうでち』
琥珀は我路の手をギュッと握りしめた後、俺を見て『さぁ、らんどーちゃまワレを使うでち!』っと闘志漲る目で見てきた。
その姿はまるで、背中に大きな炎を背負っているようだ。
———でもな琥珀?
お前の力って、どう考えても戦闘向きじゃないよな?
そんな俺たちの姿を見て、腹を抱えて笑うルミなんとか。
琥珀をそこまでバカにされ、流石に俺も腹が立ってきた。
やってやりますか。
俺はタトゥーマシーンの姿となった琥珀を右手に握りしめた。