ギルマスと黒ローブの男達が、ギルド内を我が物顔で闊歩し、ギルドの中いた冒険者達は、皆静かに道を譲る。

「偉そうな奴らだな……」

 全部で何人だ? 黒いローブの男がイチ、ニィ……八人か。それにルミなんとか、全部で九人。
 何となくだが見覚えのある顔。
 こいつら……俺が召喚された時にいた奴らじゃ。

 ギルマスと男達が、ギルドの中央にある一番大きなテーブルを陣取ると、ギルマスが急に大きな声を出し「おいっ昨日の男は来ているか!」っとサラサを呼びつけ、言い放った。

 なんて目立つ呼び方をするんだ!?
 こんなふうに言われて、「はいっ俺っす」ってノコノコと出て行くやつがいたら、教えてくれ。

 俺は静かにギルドを出て行こうとすると、一人の男が俺の手を取り「ここに居ますよ!」っと言った。
「えっ!?」
 次の瞬間。
 俺の周りにいた男達がざっと離れ、ギルマスと黒ローブの男達から丸見えになる。

「おまっ!? なんて事してくれんだよ」
 俺の手を握っっていた男は、昨日の魔法師クルトンだった。

「魔法師長たちが、お前のインチキを暴きに来たんだよ。ククク……もうインチキは出来ないぞ?」

 このクルトンはアホうなのか? インチキだとしてもだ、ドラゴン二体に緑色の魔獣を殲滅したんだぞ?
 普通に凄いだろうが。 

 まぁ……普通そんな事できないと思うがな?

 クルトンの野郎は、ニヤニヤと嬉しそうに、馬鹿にした目で俺を見てくる。
 ここまでバカだと、もう怒る気が失せる。

「そこに居たのか? こっちに来てくれ。魔法師長様に紹介する」

 ギルマスが俺に気づき、こっちに来いっと手招きしている。
 どう考えても面倒なことになりそうだし、行きたくないが……仕方ない。

「…………へーい」

 俺は返事をして、ギルマスがいる所に歩いて行く。

「この男が、召喚獣でさえ使えないような謎の魔法で、オークの集団を一瞬で殲滅したのです。中にはキングやジェネラルもいたと言うのに! その場に生えていた木々さえも、消え去ったほど」

「こやつが……」

 魔法師長様と言われている男が、舐めるように俺を見る。
 この顔は忘れもしない、あん時の白髭の爺さん! 
 俺を偽物(ポンコツ)と言って、下民の紋をいれた事は今でも忘れてねーぞ。

「お主が大魔法を放ったと言うのか? なんという魔法を使って、オークを殲滅したんだ?」

 爺さんが不思議そうに俺を見てくる。
 ってか俺の顔見ても、なんの反応もない……もう顔を忘れたのか?
 ひでぇ爺さんだ。
 
 返事を中々返さないでいると、早くしろっとアピールしてくる。
 相変わらず、せっかちな爺さんだ。

 ———なんて魔法? ええと何だったか? 

 「………確かテンペストって魔法だ」

「「「「「なっ!?」」」」」

 俺が魔法名を答えると、周りにいた爺さん達までもが騒つき出した。

 どうしたってんだ?

「何でお前が……古代魔法を使えるのだ!」

「……へっ?」

 古代魔法?

 座っていた爺さんが、椅子から慌てて立ち、俺の両腕を掴み体を揺する。
 ……またか、この爺さん距離感がバグってるんだよな。

『離れてもらえますか?』
「ヒィッ!?」

 我路が爺さんの首元に、日本刀の剣先を突きつける。
 口元は少し広角が上がっているが、目は全く笑ってない。

『我が主に、これ以上の無礼をするのなら、私も黙っていられませんね』

 我路はさらに剣先を近づける。
 そのせいで爺さんの首が微かに切れ、血がうっすらと流れる。

「はっ離れる!」

 爺さんは慌てて俺から離れた。

 そして僅かに切れた首をさすりながら「……じゃから、何で古代魔法を知っておるんじゃ?」ともう一度俺に言った。

 古代魔法って言われてもだな?
 本で見ただけなんだが……。

「はぁ……っ。あれだ。本に書いてたんだよ」

「「「「「なっ!?」」」」」

 俺が頭をボリボリっと掻きながらそう言うと、また騒がしくなった。

 …………何だってんだ?