「嘘だろ?」
「なんで魔力なしにあんなことが出来るんだよ!」
「今の魔法……サンダーって」
「……低ランク魔法であの威力」

 さっきまであんなに馬鹿にしていた奴らが、口を揃えて驚いている。
 ギルマスと魔法師にいたっては、まだアングリと口を開け、ただ呆然と的があった方角を見つめている。

「っという事で? 俺は魔法が使えるって、信用してもらえたか?」
 
 あんぐりと口を開いたままのギルマスに話しかける。

「…………こっこんなバカな! おいっ魔力なし! お前何か魔道具とか使ったんだろ?」

 ギルマスはハッと正気の戻ると、俺の胸ぐらを掴み食って掛かって来た。

「おいおい……? 魔道具? そんなんもん使ってねーよ」

 魔道具の使い方しらねーし。
 ってか使ったら流石に分かんだろ? 俺でも分かるぞそれくらい。

「じゃなきゃ! こんな事有り得ねーんだよ」

 顔近いって……ツバが飛んでるし。

「はぁ……そんなこと言われてもだな? 実際使えるんだわ? ってかな? 俺は魔力なしでもねーしな?」
「はぁあああああ!? 測定不可ってでただろーが! 何を言ってんだ」

 ギルマスが興奮し、掴んでいた胸ぐらを更にキツく締め上げてきた。

「……っ苦しいだろーが! 離せ」

 ギルマスの手を振り払うと、勢いが強かったのか、ギルマスはそのまま地面に倒れこむ。

「……っ!」

「分かったら、身分証を作ってくれるか?」

 ギルマスは納得してないのか、座り込んだまま俺を睨んでくる。

「僕は認めないぞ! 魔力なしがあんな魔法を使えるなんて! 絶対におかしい! 何かの間違いだ」

 魔法師のクルトンだったか? がおかしいと騒ぎ出した。
 ったくどいつもこいつも……魔法を見せれば良かったんじゃなかったのか?

「おかしいもクソもだな? 初めっからお前らが間違えてるんだよ。そもそも俺は魔力なしじゃねぇし」

「んなバカな! 測定器で計測不可能と出ただろうが!」
 
 ギルマスがギャンギャン吠える。はぁ……めんどくせえ。

「分かったよ? おバカなお前らにでも分かるように、教えてやろうか? 俺の魔力はな? 測定出来ないほどの魔力量ってことなんだよ」
「なっ……ギルドに置いてある測定器は一番最新式だぞ!? それで測りきれないとか……そんな奴が……」
「ココにいるんだなそれが」

 そう言うとギルマスは黙り込んでしまった。

「そんな事、僕は絶対に信じないぞ! おいっ僕と勝負しろ!」
 クルトンが勝負しろとか言い出しやがった。
 俺はそんな事よりも、身分証を作ってくれたらそれで良いんだが。

「……勝負って何をすれば良いんだよ?」
「それはっ」

 そんな時だった。ギルドの職員が階段を転がるように降りてきた。
 見るからに慌てているのがわかる。

「大変です! ディアナの森で、魔獣が大量発生との事です! 至急冒険者は魔獣の討伐を!」
「なっディアナの森ってこの王都のすぐそばにある森じゃないか!」

 ギルマスは慌てて立ち上がると、職員と一緒に階段を駆け上がっていった。

 おいおい……俺のことは結局どうなったんだ? 

「よしっ決めたぞ! 森で魔獣を多く討伐した方が勝ちだ!」

 そんな中クルトンが、とんでもない事を言い出しやがった。

「…………はぁ?!」