「この下から闘技場に下りる事が出来ます」

 サラサが扉を開き、説明をしながら階段を先に下りていく。

「この闘技場でランクアップ検定があったり、剣や魔法の訓練なども行われています」
「へぇ~。そんな場所がギルド内にあるんだな」
「はい。冒険者の方のために作られた闘技場ですので」

 その闘技場で、俺を笑い者にしようとしているギルマス。ろくな奴じゃねーな。

 階段を降りると、ドーム状の広い場所があった。思っていたよりもはるかに広い。
 地面は土か……奥に並んでいる丸いのは的か?
 二階からこっちを見下ろせる場所があり、俺を馬鹿にした冒険者達は、そこでニヤニヤと嫌らしく笑いながら、俺を見ている。

「やっと来たか。魔力なし君」
「ギルドマスター失礼ですよ?」

 サラサがギルマスをキッと睨む。

 ギルマスの横には、黒いローブを纏った男が立っている。
 あれか? 俺に下民紋を入れる魔法師さんってか?
 そんなの入れさせねーけどな。

「さぁ? ここに立って魔法とやらを見せてもらおうか」

 ギルマスがこっちに来いと手招きしてくる。

「乱道様! 頑張ってくださいね」
「サラサありがとな。まぁ頑張ってくるわ」

 ギルマスが立っている場所まで歩いて行くと「今からこの魔法師が見本を見せるので、同じように出来たなら認めてやろう」と言いやがった。

 はぁ? 魔法を使えたらって言ってなかったか? 魔法師と同じことをいきなり出来るわけねーだろ!
 そんなに俺の事をバカにしたいのかよ。ったく暇な奴らだな。

「同じ事って何をするんだよ?」

 そう質問すると、ギルマスは不敵な笑みを浮かべる。

「魔法師クルトンよ。みせてやれ」

「分かりました。ギルマスも酷いお人だ。こんな事できますかね?」

 クルトンとやらが俺をチラっと見て鼻で笑った後、手に持っていた杖を掲げた。

「天空を満たす光よ、我に集いその力を解き放て!」

《サンダラ》

 稲妻が遠くに並ぶ丸い的に当たり、二つに割れた。

「ふっ……こんなもんですかね」

 それを二階で見ていた男達から、歓声が上がる。
「すげえ!!」「さすが魔法師様だ!」

 そんなに驚くほど凄かったか? あんな恥っずかしい詠唱をして、あの程度の威力だぞ?
 あれくらいなら俺も出来そうな気がする。

「さぁ? やってみせろ」

 ギルマスの顔が、お前には無理だろうがな? っと言っているようだ。

 俺は無造作に頭を掻いた後、背伸びをして気合を入れた。

「あのさ? あそこにある的全て壊しても良いのか?」
「なっ? さっき一つ壊したから、残りは九個残っている。それをお前が全て壊すってか?」

 ギルマスがわざと大声でバカにする。

「あははっ出来るならやって見せてくださいよ。楽しみにしてますよ?」

 クルトンが俺をバカにしたように嘲笑う。まぁ黙って見てろ。

「ギャハハッ! 頭おかしくなったんじゃねーか?」
「全部って一個も壊せませんの間違いだろ?」
 
 ……二階の雑魚どもも、うるせえな。
 
「ほら! さっさと見せろ」

 ギルマスが早くしろと煽ってくる。

 そんな慌てなくても見せてやりますよ! 雷魔法なら、熊獣人で試したばっかだからな!

《サンダー》

 俺がそう唱えると、さっきの雷の何十倍もある雷が的に向かって飛んでいく。

 次の瞬間。闘技場が大きく揺れ、轟音が響く。
 
 全ての的が灰となり消えさった。

「「「「「「えっ!?」」」」」」

 闘技場にいる全ての者達が、目を見開きあんぐりと口を開け、間抜けな顔で固まっていた。

 ざまぁ。