大きな塔の中にある、最上階の部屋に数人の男達が集まり、何やら密談をしてる。
男達は同じような黒いローブを纏い、その顔には皆個性豊かな仮面を付けている。
「おいっ! エスメラルダ帝国付近の森に転移門を使って送った幻獣は、どうなったんだ!?」
白い道化師の仮面を付けた男が声を荒げる。どうやらこの中にいる者たちの中で、この男が一番立場が偉いようだ。
「九尾ですね! それが……そのう……」
問い詰められたウサギの仮面を付けた男が返事に詰まる。
「そうだ! 九尾だ。エスメラルダ帝国に潜む間者の話では、森は何も異常はないと言うし、幻獣の姿もないと言っていた! 一体どうなっているんだ。送った九尾は何処に消えたんだ!?」
ウサギの仮面を付けた男は、額から垂れ流れる汗を拭きながら、唇を震わせ質問に答える。
「…………とっ突然……この魔道水晶の反応が全くなくなり。幻獣の消息が途絶えました。幻獣に刻んだ紋が解呪かされたのかと……」
ウサギの仮面を付けた男が、直径三メートルは優にある大きくて丸い水晶を見ながら話す。
どうやらこの大きな水晶に、幻獣のいる現在地が赤い点で記されるみたいだが、急にその赤い点が消えたので、男たちは焦っているのだ。
「なっ!? 解呪されただと!? そんな馬鹿なことがあるか! あの紋は呪縛をかけた者しか解呪できない筈だぞ!」
道化師の男は仮面を付けていると言うのに、焦っているのが皆に伝わる。
「それは確かにそうなのですが、現に消息不明になったのです。紋が刻まれている限り、この魔導水晶に幻獣の位置は映し出される筈です」
クマの仮面を付けた男が、さらに付け加える。
「じゃあ誰かがあの紋を消して、幻獣をさらったとでも言うのか?! そんな事が出来る奴がいると!?」
道化師の仮面の男が声を荒げる。
「「「「「…………」」」」」
その言葉を聞き、全ての男達が黙る。
「とにかく! あれは貴重な幻獣なのだ。草の根分けても探し出せ! 分かったな」
「「「「「はっ!!」」」」」
仮面を被った男達が、急いで塔の部屋から出て行った。