「なぁ……琥珀。まさかあの小さな子供が九尾の狐か?」

『うんでち。ワレもよく分からないでちが、あの子が九尾の狐になってたみたいでち』

 子供を見ると、死んだようにグッタリしている。
 まさか死んだりしてないよな? 紋を消しただけだし。

 近寄っても大丈夫……だよな?

 また急にあの馬鹿でかい狐の姿に戻られるとビビるけど。

 子供に近寄ると、すやすやと気持ち良さそうに眠っている。
 頬も桃色で元気そうだ。
 頭には耳、お尻には尻尾が生えている。
 頭はピンク色してるし……すげえな。アニメの世界だ。
 二、三歳ってところか? てかこいつ何も着てねーじゃん!
 なんか着せてやらねーと寒いよな。

 でも子供の服なんて持ってるわけない。
 うーん。とりあえずマントで包むか。

 子供をマントで包んでみたが、まだスヤスヤと眠っている。
 困ったな。このままここに置いとくわけにはいかないしな。
 起きるまではここにいるか。

 琥珀も知らないみたいだし、何か情報があればな。

 もう一回鑑定してみるか?


 名前 なし

 種族 幻獣族
 力  F/S
 体力 F/S
 魔力 F/SS

 スキル 【???】【???】【???】

 
 九尾の狐の時と同じか、ステータス値は比べもんにならねーぐらい低いけど、そりゃそうだよな。小さな子供だし。

 きっと俺が読めない【???】スキルに秘密は隠されていそうだが。

 後は聞いたことの無い種族の【幻獣族(ゲンジュウゾク)】か。
 これについて何か情報があればなぁ。
 あっ! そうだ城の宝物庫から盗っ……拝借した中に本がいっぱいあったな。
 それに何か書いてるかも!

 俺は急いで何冊かの本を、アイテムボックスから取り出してみる。

『らんどーちゃま? 何してるでち?』

 座って本を選んでいると、琥珀が膝の上に乗って来た。

「いやな? コイツの情報が何か載って無いかなと思ってさ? 本を出したんだよ」
『ふぅん? ワレも一緒に見るでち!』

 琥珀は嬉しそうに足をバタバタさせ興味津々だ。
 小さな子供に本を読み聞かせしている様な気分だな。

 本を見ると、全く見覚えのない文字なのに読める。
 何だこれ! 不思議な感覚だ。

「ええと……エスメラルダ王国の歴史……違うな」

 これは魔法について? 興味はあるが今は違うな。後でゆっくり読もう。
 召喚獣について……おおっこれも気になる!
 だが種族について書いてある本が中々見つからない。

「おっ?! 世界の種族について……?!」

 これだ!!

 ふむふむ……この世界には人族、獣人族、ドワーフ族、エルフ族、竜人族が存在している。
 あれ? 幻獣族は? どこにも書いてねーぞ?

 どんどんページをめくっていくと、最後のほうに……おっ? 【幻獣族】の文字が!
 
 ええと……太古には幻獣族といわれる種族も存在していたが、今は絶滅したのか存在自体が架空とされている。
 幻獣族は人の姿から魔獣に変化できたとされているが、実在していないのでそれも定かでは無い。伝説とされ謎に包まれている種族。

 …………何だこれ。
 俺やべーのと出会しちゃったんじゃ?!
 
 幻獣族は伝説の種族って書いてるぞ?