「なぁ琥珀? お前の力は何にでも変化できるのが力なのか?」

『違うでち。ワレの力はタトゥーでち』
「タトゥー?」
『そうでち。ワレを使ってらんどーちゃまが描くと、描いた物が実現できたり、紋が無い者に紋を描くと聖印を与えることが出来るでち』
「ヘェ~なるほどな」

 琥珀はすごいでち? っとでも言わんばかりに俺の腕の中でふんぞり返る。
 おいおい? あんまり踏ん反り返ると落っことすぞ?

 でも……描いたものが実現するってそれは……何でもか? 
 紋が増やせるって……この世界じゃすごく喜ばれるんじゃ!?
 俺と琥珀もしかして最強じゃね?

『まぁ……今は消す事くらいしか出来ないでち。ワレのレベルを上げないと無理でち』

 琥珀がぺろっと舌を出しあざとく小首を傾げた。

 ちょーーーーー!!
 さっきまでの俺の妄想と興奮を返してくれ!
 何だよ! 描いた絵が実現するとか言うから、食い物とか服とかさぁ……色々と考えちゃったじゃねーか!
 どんな服を描こうかなぁ? まであの一瞬で考えてたんだぞ?

「クシュ! ズビッ。ああ~冷えてきたな」

 流石にこの服装で夜を過ごすのは限界かもな。上半身裸だしな。

『らんどーちゃま寒いでち?』

「ああ。ちょっとな? お前を抱いてるから胸は暖かいんだがな? 背中が寒いな」

 ここは王宮って言ってたし? なんか探したら色々ありそうだよな?

「腹も減ってきたし、服とか食べ物とか探しに行こうぜ」

『それならワレに任せるでち! サーチで一発でち』

 再び琥珀のまんまるお目めがピカーっと、懐中電灯のように光る。

「ブッッ!」

 目立つし見てるだけで笑いが……。

「なぁ琥珀? サーチで探してくれるのはありがたいんだがな? その目がピッカーってなるのどうにかならねーか? 目立って仕方ない」

『ええー?!』

「うわっっっちょ!」

 琥珀が目を光らせたまま俺を見るもんだから、眩しくて仕方ない。

「眩しいって!」

『ムゥ……これがカッコ良いでちのに……仕方ないでちね? 普通にするでち』

 琥珀の目の光が無くなった。

『さぁ行くでちよ!』

 琥珀が俺の腕の中からピョンっと飛び降り、前を歩き出した。
 どうやら目の光はサーチに関係ないらしい。
 何だよ! お前、光らせなくってもサーチ出来るのか。

 琥珀のサーチの能力は思っていたより凄く、人がいる場所などもすべて分かるらしい。
 長い廊下を歩いて行くんだが、全く人に会わない。

『この扉の奥に何かいっぱいありそうでちね』

 黒くて重厚な扉の前で琥珀が立ち止まった。
 何だろう、見るからに大切なものが保管してありますよーって見た目ではない。
 どちらかと言うと、ちょっと気味が悪い。

「なぁ琥珀? 本当にこの中に良いもの入ってるのか? ちょとだけイヤな感じがするんだが」

 俺がそう言うと、琥珀はチッチッチと言って前足を左右に振った。
 お前そんな仕草どこで覚えたんだよ? そんなことリアルでする奴中々いねーぞ?

『良いでちか? わざと誰も近づかないように、気味悪く偽装してるんでち。って事はでちよ? それだけ中に良い物があるって事でち!』

「なるほどな! 天才だな琥珀』

 俺が天才だと褒めると、説明しながら少し顎を上げドヤる琥珀。

『それに扉を紋で封印してるでちが、ワレにかかればチョチョイのチョイでち!』

 琥珀は再びあのDXマシーンとやらの姿に変化した。

『さぁ! ワレを使って扉の封印を解くでち!』

「おっおう」

 琥珀を手に持ち、扉の鍵穴に軽く当てた。

「うわっ!」

 バリンっと言う衝撃音と共に手に振動が走る。

『さぁこれで開いたでち』

 琥珀はぬいぐるみの姿に戻ると、自分の何倍もあるであろう大きさの、重厚な扉を軽々と開いた。
 あの小さな体の中にどこにそんな力があるんだろう。
 琥珀って意外と強いんじゃ……

『らんどーちゃま? 何してるでち? 早く入るでちよ!』

 琥珀が扉を押さえたまま俺を待っていた。
 早くしろとでも言わんばかりに、足をポニポニと鳴らしながら。
 ……ったくせっかちな奴だ。
 驚いてる時間くらい、待ってくれても良くない?

 俺は奥にある部屋へと足を踏み入れた。