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 僕には遥という、三つ上の兄がいる。
 兄が撮る写真はいつも踏切ばかりだったが、同じ場所でも季節や気候、時間帯が異なるだけで全く別の風景に見えるように切り取るのが得意だった。
 次第に雑誌や新聞に掲載されるフォトコンテストに応募するようになるも、なかなか受賞までは届かない。
 公募だけでは足りない、もっと自分を見て欲しい。自分の可能性を知りたい――そう思い立って始めたSNSで、一日一枚、好きな写真をアップしていくことにした。
 アカウント名は「透明少年」。自分の好きな踏切の写真を、自分の好きなように撮っていく。何色にも染まらない自分でありたいという願いから付けた名前だった。
 結果は大成功!
 不特定多数の人が兄の写真を高く評価した。しばらくして「雑誌に載せませんか?」と大手の出版社から声をかけられた。
 あの時の嬉しそうな顔は今でも覚えている。「生きていてよかった」と、涙をこぼして笑うあの顔が、今も忘れられない。――いや、忘れたくても忘れられない、が正しいか。

 僕が兄を殺したのは、その三日後だった。