「透明少年のアカウント」――少し前にSNS上で話題になったそれは、たいそう不気味なものだった。
 その名の通り、「透明少年」というアカウント名で活動している投稿者は、一日一枚、毎日欠かさず踏切の写真だけを投稿している。
 誰かがコメントをしても、ダイレクトメッセージを送っても全く反応しない。ボットじゃないかという声も上がるが、その正体は誰も知らない。

 踏切の写真といっても、撮影された場所や時間帯はそれぞれ異なる。
 朝焼けの空の山吹色、夕暮れ時の茜色にコンビニの明かりが零れてより際立つミッドナイトブルー。どの色にも溶け込んだ踏切は、寂し気な雰囲気を漂わせている。
 そんな写真がなぜ注目されるようになったのか。――きっかけは、写真を引用して投稿されたあるコメントだった。

『写真の奥に人っぽいのが写っている気がするんだけど、気のせい?』

 そのコメントからアカウントを辿り、他の写真も見てみると、少年らしい同じ人物がうっすらと写り込んでいることが分かった。しかもそれが投稿されたすべての写真に写っていたのだから、騒ぎにならないわけがない。
 しばらくして特定班が立ち上がり、どの踏切で撮影されたものか、近隣に似た人物が住んでいないか。さらにはその踏切で事故が起きていないのかと、警察の事件捜査並みに調べられたが、有力な話は一向に上がってこなかった。
 投稿者にメッセージを送ってもやはり反応はなく、何事もなかったかのように毎日一枚の踏切の写真が投稿され続ける。もちろん、その写真にも少年らしき姿が確認された。

 すべて謎に包まれたまま、いつしか「透明になってしまった彼には心残りがあり、誰かに知ってほしくて毎日投稿している」のだと噂されるようになる。

 ……いや、多くの人々がそう思うしかなかった。
 これだけ不気味なアカウントが存在すること自体、誰も信じられなくて当たり前だ。
 今日も一枚、踏切の写真が投稿される。ラムネ色のように澄んだ空が眩しかった。