意固地になった自分を解き放つのはかなりの勇気が必要だと言う事を私は和也と親友の和ちゃんに教えてもらったような気がする。
私は自分ではそんなに感じてはいなかったけどかなりの意地っ張りの様だ。
それも嫌な事に外ではなく自分に対して、自分の内側に対して意地を張る。
和也がある日
「蒔野は意外と意地っ張りだからなぁ」と私に行った事があった。
自分では何に意地を張っているのか自覚もなかったけど、和也の目に映る私は頑固者の様に見えていたらしい。
意地っ張りと頑固。これって同じ事なんだろうか?まぁ確かに執着心は強い方だと自分でも感じてはいた。
それが他から見れば意地っ張りに見えてしまうんだったらちょっとやってらんないなぁ。て思う。
好きなものは好き。私はただそれを和也に、和ちゃんにあの時言っただけなのに。
といっても今思えばそれは私だけが意固地になって本当に笑えてしまうくらい小さな事だったんだけど……
その日の学校帰り、いつもと違う光景を目にして私は少し困惑した。和也と和ちゃんが一緒に歩いているのを目にしたからだ。
しかも二人の手は繋がれていた。
あの二人は小学校から知り合う幼馴染。だから、あの無口な和也も和ちゃんには普通に、私と同じように話をする。
でも今日見た二人の姿は単なる幼馴染?とは思えない様な親密な関係の様に見えた。
何となく……いくら親友の和ちゃんであっても私と和也が付き合っているの知っているのに、それなのにあの二人の雰囲気はまるで恋人同士の様に見えた。
遠くに目にするあの二人の姿……嫌だった。
なんで、なんで和也と和ちゃんが……
正直信じられなかった、あんなにいつも私の事心配してくれている和也が、よりによって和ちゃんと手を繋いで親しげに歩いているなんて。
何だかすうーと冷たいものが私の体を包み込んだ。
……ふう、やっぱりこんな、いつも和也を困らせてばかりいる難しい性格の私に愛想尽きたんだ。
私性格きついもんなぁ、和ちゃんの様に柔らかくないし、和ちゃんの様におおらかでもないし……そ、それに優しく……ないし。
それとも私たちってそもそも始めっから付き合って居なかったんじゃないのか。
ただ単に心配性の性格の和也が私を心配していただけだったんじゃないのか。
それに今思えば、いくら幼馴染とはいえ和ちゃんと和也二人の間には、なんだか入り込めない様なそんなつながりも感じていた。
付き合っていたと思っていたのは私の方だけ。
次から次えと頭の中でいろんなことが駆け巡った。
そりゃぁ、和也と話す様になって、付き合う様になって、その、キスだって、そんなにしてないし……か、体……もう高校生なんだから当たり前かもしれないけど、私達まだだったし。
求められたことは何回もあったけど、私拒んだし……和ちゃんなら何でも和也の言う事訊きそうだし。
ああ、もう……
なんだか自分が本当に情けなくなってきた。
二人と出会わない様にもう一度学校に引き返した。教室で、誰もいなくなった教室でただぼうとして時間をつぶした。
あたりが暗くなって街灯が灯される頃私は駅のホームで電車を待った。
明後日の土曜日は私の住む町のお祭りの日。
もうすでに会場となる浜辺の公園には舞台の装置なんかが設置されている。この春に越してきた私にとってはこのお祭りは始めての祭りだ。
それに東京で住んでいた時は屋台なんか出ているお祭りに行った記憶はない。
だからここでお祭りがあると訊いて本当は物凄く楽しみにしていた。
でも、今日和也と和ちゃんの二人のあの姿を見てからはもうどうでもよくなった。
「ただいま」
お母さんは今日は早番だったからもう家に帰っていた。
「遅かったわね」そう言いって夕食の支度をしながら台所でつまみ食いをしていた。
「ねぇ巳美、あなたお祭りどうする?」
なんか唐突だなぁ。お母さんも私がお祭りに……確かに昨日お祭りに行きたいって言った。
だからお母さんは訊いてきたんだ。
「わかんない」
「わかんないってあなた楽しみにしていたんでしょ」
「でもわかんない」
まるで駄々っ子の様だ。いつもはお母さんに気を使って、心配かけまいとして明るく振る舞っていたけど、今日はそれすらできなかった。
「なんか今日あった?」
とお母さんはいつもと違う私を見て心配そうに言う。
ああ、なんだろう。やだなぁ……こんな自分が物凄く嫌になった。食慾もなくい位なんだか嫌気がさしていた。
それでも、お母さんに心配をかけまいとして夕食を無理して押し込んだ。
「ごめん今日何だか疲れちゃって、もう休むから」
私は早々に部屋のベットに自分のこの身を沈めた。
カーテンから陽が差し込み光が顔を照らす。今日も気温はぐんぐん上がっている。すでに部屋の中は蒸し風呂の様だった。
制服のまま昨日はベットに倒れ込んでそのまま寝てしまったらしい。もう制服も体も汗でべとべとだった。
ふとベットの横にある目覚まし時計を見る。もうわかりきっていた事だったけどあえて時計の針を眺めた。
もう9時を過ぎていた。
「はぁ……」
もう完璧に遅刻決定済み。
ああ、もう今日は学校に行くのやめよう。
いやもう目覚める前から今日は休む気でいたんだ。
学校には連絡はしない。無断欠席。初めての事。
とりあえず窓を開けた。すうーと風が部屋に流れ込む。
まだ外の風はひんやりとしていた。
「気持ちいい」んーこの場合は心地いいと言うべきなんだろうか。まぁ、この際どちらでもいい。まずはこの汗だくになった体を何とかしないといけなかったから。
部屋を出て、台所に行くともうすでにお母さんの姿はなかった。当たり前か……
テーブルに朝食が準備されていた。そのテーブルの上にお母さんからのメモ書きがあった。
今日はお寝坊さんみたいね。昨日何かあったの?
朝食だけはちゃんと食べなさいね。
追伸
和也君と喧嘩でもした?
今日も一日頑張ってね。
はぁ、何だろうなやっぱお母さんてすごいのかもしれない。
でも昨日はもういっぱいいっぱいだったから分かっちゃたんだろう。少し胸が痛かった。
シャワーを浴びてから準備してくれた朝食を食べた。遅い朝食。休みの日でもこんな時間に朝食をとる事はめったになかった。
今日は一日部屋にこもっていよう。暑いけれど何となく外に出るのに気が引けていた。無断欠席という罪悪感から……
ベットに座り込んで窓から空を眺めた。青い空にうっすらと筋のような雲が広がっている。今日も天気はよさそうだ。
こんな日は海に出ると気持ちいいだろう。夏ももうそろそろ終わる。その証拠にこの前まで感じていた風と今の風は違う。
暑さの中にどことなく冷たさを感じる風に変わっていた。
和也ってどんな時学校に行って、どんな気持ちの時学校を休むんだろう。
朝起きてめんどくさかったら学校休むんだろうか。
それだったら毎日めんどくさいんじゃないのかなぁ。
もう高校なんかやめてもいいと思っているんだろうか。
でも、最近の和也は真面目に学校に来るようになった。
まぁ、たまに休むこともあるけれど以前からすればそれは物凄く減った。ほとんどと言ってもいいくらい毎日学校に来るようになった。
何で今和也の事考えなければいけないの。
昨日見たあの光景が頭の中に浮かぶ。それなのに和也の事を考えてしまう。
裏切り?
それとも浮気?
いや昨日思ったように私だけが和也の事彼氏だと思っていたのかもしれない。
和也は本当は私の事好きでもなんでもなかったのかもしれない。
「バカ和也」
それならキスなんかしなければよかった。求められたけど私拒んで正解だったのかもしれない。
あー良かった。もうちょっとで本当に後悔する所だった。
あ、そうかぁ。和也は私の事単なる都合のいい女としか思っていなかったんだ。優しくしていればいつかはやらせてもらえる都合のいい女。
和也の……バカ、バカ、バカ、バカ、バカバカバカバカ……
でも何だろう不思議と和也を責める気持ちはなかった。その代わりになんだか物凄く寂しくて、悲しくて辛くて。
「バカ」って言いながら泣いていた。
スマホが振動している。和ちゃんからの着信。少ししてまたスマホが震えた。また和ちゃんからだった。
あえて出ない。出たくなかった。和ちゃんからの電話。
休み時間ごとにかけているんだろう。もうかれこれ着信6回目になった。今度は前より長くスマホが震えている。
もうやめてよ。そう言いながら私の手も震えていた。
その手でスマホを取り画面を見るとSNSにもメッセージが沢山入っていた。
「巳美今日したの?。大丈夫?。風邪引いたの。学校に連絡ないって先生言っていたよ。ほんと大丈夫返事してよ……」
一杯いっぱいメッセージが綴られている。もういい、もういい加減にして和ちゃん。メッセージの一つに
「大島君も心配してるよ」……ビクンとした。
和ちゃんのメッセージに和也の名があった。なんだか物凄く胸の中が締め付けられるように苦しい。
二人は、和也と和ちゃんは。
もうこの二人の事考えたくなかった。私もういいと思った。この二人と……
メッセージを打った。和ちゃんに。
「もう、いい加減にして、私和ちゃんも和也も信じられなくなった。昨日二人で手を繋いでいる所見てから。もう隠さなくていいから」
送信してやった。
終わったんだ。
おわった。これで和ちゃんとも友達でもなんでもなくなった。これで和也とも
終わった。
私は自分ではそんなに感じてはいなかったけどかなりの意地っ張りの様だ。
それも嫌な事に外ではなく自分に対して、自分の内側に対して意地を張る。
和也がある日
「蒔野は意外と意地っ張りだからなぁ」と私に行った事があった。
自分では何に意地を張っているのか自覚もなかったけど、和也の目に映る私は頑固者の様に見えていたらしい。
意地っ張りと頑固。これって同じ事なんだろうか?まぁ確かに執着心は強い方だと自分でも感じてはいた。
それが他から見れば意地っ張りに見えてしまうんだったらちょっとやってらんないなぁ。て思う。
好きなものは好き。私はただそれを和也に、和ちゃんにあの時言っただけなのに。
といっても今思えばそれは私だけが意固地になって本当に笑えてしまうくらい小さな事だったんだけど……
その日の学校帰り、いつもと違う光景を目にして私は少し困惑した。和也と和ちゃんが一緒に歩いているのを目にしたからだ。
しかも二人の手は繋がれていた。
あの二人は小学校から知り合う幼馴染。だから、あの無口な和也も和ちゃんには普通に、私と同じように話をする。
でも今日見た二人の姿は単なる幼馴染?とは思えない様な親密な関係の様に見えた。
何となく……いくら親友の和ちゃんであっても私と和也が付き合っているの知っているのに、それなのにあの二人の雰囲気はまるで恋人同士の様に見えた。
遠くに目にするあの二人の姿……嫌だった。
なんで、なんで和也と和ちゃんが……
正直信じられなかった、あんなにいつも私の事心配してくれている和也が、よりによって和ちゃんと手を繋いで親しげに歩いているなんて。
何だかすうーと冷たいものが私の体を包み込んだ。
……ふう、やっぱりこんな、いつも和也を困らせてばかりいる難しい性格の私に愛想尽きたんだ。
私性格きついもんなぁ、和ちゃんの様に柔らかくないし、和ちゃんの様におおらかでもないし……そ、それに優しく……ないし。
それとも私たちってそもそも始めっから付き合って居なかったんじゃないのか。
ただ単に心配性の性格の和也が私を心配していただけだったんじゃないのか。
それに今思えば、いくら幼馴染とはいえ和ちゃんと和也二人の間には、なんだか入り込めない様なそんなつながりも感じていた。
付き合っていたと思っていたのは私の方だけ。
次から次えと頭の中でいろんなことが駆け巡った。
そりゃぁ、和也と話す様になって、付き合う様になって、その、キスだって、そんなにしてないし……か、体……もう高校生なんだから当たり前かもしれないけど、私達まだだったし。
求められたことは何回もあったけど、私拒んだし……和ちゃんなら何でも和也の言う事訊きそうだし。
ああ、もう……
なんだか自分が本当に情けなくなってきた。
二人と出会わない様にもう一度学校に引き返した。教室で、誰もいなくなった教室でただぼうとして時間をつぶした。
あたりが暗くなって街灯が灯される頃私は駅のホームで電車を待った。
明後日の土曜日は私の住む町のお祭りの日。
もうすでに会場となる浜辺の公園には舞台の装置なんかが設置されている。この春に越してきた私にとってはこのお祭りは始めての祭りだ。
それに東京で住んでいた時は屋台なんか出ているお祭りに行った記憶はない。
だからここでお祭りがあると訊いて本当は物凄く楽しみにしていた。
でも、今日和也と和ちゃんの二人のあの姿を見てからはもうどうでもよくなった。
「ただいま」
お母さんは今日は早番だったからもう家に帰っていた。
「遅かったわね」そう言いって夕食の支度をしながら台所でつまみ食いをしていた。
「ねぇ巳美、あなたお祭りどうする?」
なんか唐突だなぁ。お母さんも私がお祭りに……確かに昨日お祭りに行きたいって言った。
だからお母さんは訊いてきたんだ。
「わかんない」
「わかんないってあなた楽しみにしていたんでしょ」
「でもわかんない」
まるで駄々っ子の様だ。いつもはお母さんに気を使って、心配かけまいとして明るく振る舞っていたけど、今日はそれすらできなかった。
「なんか今日あった?」
とお母さんはいつもと違う私を見て心配そうに言う。
ああ、なんだろう。やだなぁ……こんな自分が物凄く嫌になった。食慾もなくい位なんだか嫌気がさしていた。
それでも、お母さんに心配をかけまいとして夕食を無理して押し込んだ。
「ごめん今日何だか疲れちゃって、もう休むから」
私は早々に部屋のベットに自分のこの身を沈めた。
カーテンから陽が差し込み光が顔を照らす。今日も気温はぐんぐん上がっている。すでに部屋の中は蒸し風呂の様だった。
制服のまま昨日はベットに倒れ込んでそのまま寝てしまったらしい。もう制服も体も汗でべとべとだった。
ふとベットの横にある目覚まし時計を見る。もうわかりきっていた事だったけどあえて時計の針を眺めた。
もう9時を過ぎていた。
「はぁ……」
もう完璧に遅刻決定済み。
ああ、もう今日は学校に行くのやめよう。
いやもう目覚める前から今日は休む気でいたんだ。
学校には連絡はしない。無断欠席。初めての事。
とりあえず窓を開けた。すうーと風が部屋に流れ込む。
まだ外の風はひんやりとしていた。
「気持ちいい」んーこの場合は心地いいと言うべきなんだろうか。まぁ、この際どちらでもいい。まずはこの汗だくになった体を何とかしないといけなかったから。
部屋を出て、台所に行くともうすでにお母さんの姿はなかった。当たり前か……
テーブルに朝食が準備されていた。そのテーブルの上にお母さんからのメモ書きがあった。
今日はお寝坊さんみたいね。昨日何かあったの?
朝食だけはちゃんと食べなさいね。
追伸
和也君と喧嘩でもした?
今日も一日頑張ってね。
はぁ、何だろうなやっぱお母さんてすごいのかもしれない。
でも昨日はもういっぱいいっぱいだったから分かっちゃたんだろう。少し胸が痛かった。
シャワーを浴びてから準備してくれた朝食を食べた。遅い朝食。休みの日でもこんな時間に朝食をとる事はめったになかった。
今日は一日部屋にこもっていよう。暑いけれど何となく外に出るのに気が引けていた。無断欠席という罪悪感から……
ベットに座り込んで窓から空を眺めた。青い空にうっすらと筋のような雲が広がっている。今日も天気はよさそうだ。
こんな日は海に出ると気持ちいいだろう。夏ももうそろそろ終わる。その証拠にこの前まで感じていた風と今の風は違う。
暑さの中にどことなく冷たさを感じる風に変わっていた。
和也ってどんな時学校に行って、どんな気持ちの時学校を休むんだろう。
朝起きてめんどくさかったら学校休むんだろうか。
それだったら毎日めんどくさいんじゃないのかなぁ。
もう高校なんかやめてもいいと思っているんだろうか。
でも、最近の和也は真面目に学校に来るようになった。
まぁ、たまに休むこともあるけれど以前からすればそれは物凄く減った。ほとんどと言ってもいいくらい毎日学校に来るようになった。
何で今和也の事考えなければいけないの。
昨日見たあの光景が頭の中に浮かぶ。それなのに和也の事を考えてしまう。
裏切り?
それとも浮気?
いや昨日思ったように私だけが和也の事彼氏だと思っていたのかもしれない。
和也は本当は私の事好きでもなんでもなかったのかもしれない。
「バカ和也」
それならキスなんかしなければよかった。求められたけど私拒んで正解だったのかもしれない。
あー良かった。もうちょっとで本当に後悔する所だった。
あ、そうかぁ。和也は私の事単なる都合のいい女としか思っていなかったんだ。優しくしていればいつかはやらせてもらえる都合のいい女。
和也の……バカ、バカ、バカ、バカ、バカバカバカバカ……
でも何だろう不思議と和也を責める気持ちはなかった。その代わりになんだか物凄く寂しくて、悲しくて辛くて。
「バカ」って言いながら泣いていた。
スマホが振動している。和ちゃんからの着信。少ししてまたスマホが震えた。また和ちゃんからだった。
あえて出ない。出たくなかった。和ちゃんからの電話。
休み時間ごとにかけているんだろう。もうかれこれ着信6回目になった。今度は前より長くスマホが震えている。
もうやめてよ。そう言いながら私の手も震えていた。
その手でスマホを取り画面を見るとSNSにもメッセージが沢山入っていた。
「巳美今日したの?。大丈夫?。風邪引いたの。学校に連絡ないって先生言っていたよ。ほんと大丈夫返事してよ……」
一杯いっぱいメッセージが綴られている。もういい、もういい加減にして和ちゃん。メッセージの一つに
「大島君も心配してるよ」……ビクンとした。
和ちゃんのメッセージに和也の名があった。なんだか物凄く胸の中が締め付けられるように苦しい。
二人は、和也と和ちゃんは。
もうこの二人の事考えたくなかった。私もういいと思った。この二人と……
メッセージを打った。和ちゃんに。
「もう、いい加減にして、私和ちゃんも和也も信じられなくなった。昨日二人で手を繋いでいる所見てから。もう隠さなくていいから」
送信してやった。
終わったんだ。
おわった。これで和ちゃんとも友達でもなんでもなくなった。これで和也とも
終わった。