◆3話

≪page1≫

〇場所:森

アルベルスたちと武器を持った裏切り者三人が見つめ合っている。
そこへすっと前へ出る魔王。

魔王「さあ、かかってこい! 特別に私が相手をしてやろう!」
ノエル「危ないから下がってないとダメだよ」
魔王「ふっふっふ。まあ見ておれ」

 そして髪留めにしていた小さな鎌を手に取ると、鎌がどんどん大きくなっていき、身の丈を超える武器へと変わる。

≪page2≫

魔王「ひとひねりにしてくれ――ってぬわぁ!?」

 かっこつけて大鎌を構えようとしたところで、大鎌の重さに耐えられずベチャッと転んでしまう魔王

アルベルス「あの……ニーニャ?」

転んだままアルに指示を出す魔王。

魔王「さ、さあアルよ! お前の力を見せてやれ!」
アルベルス「まったく……」

そんな魔王に呆れながら、アルは前へと進み出る。

≪page3≫

裏切り者A「てめえら! 遊んでんじゃねえんだぞ!」

剣を持って突っ込んでくる敵。二度三度と振るわれる攻撃を余裕をもって回避したアル。
その様子に慌てるノエル。

ノエル「わ、私も加勢します!」

飛び出そうとしたノエルの袖を、起き上がった魔王がつかむ
(武器は小さくなってまた髪留めになっている)

魔王「まあそう焦るな。アルなら大丈夫だ」
ノエル「でも……」

≪page4≫

何度攻撃しても当たらないことで、裏切り者Aが焦りの表情を見せる

裏切り者A(内心)「な、なんで攻撃があたらねえんだ」
裏切り者A「避けるのだけは上手いみたいだな。オイお前ら!」
裏切り者B「ああ、任せとけって」

手下の二人も加わり、今度は三人一斉に襲いかかってくる

≪page5≫

三人の攻撃を回避するアル。
裏切り者Bの攻撃を避けた後、手を前に出すと。

アルベルス「時力同調:【ブラスト】」

突風が起こりBが吹き飛ばされる。

≪page6≫


裏切り者B「ぐはぁ」
裏切り者C「魔法使い!? 剣士じゃなかったのか!」

そして弓を射るC
アルベルス「時力同調:【止まれ】」

アルベルスが射られた矢を見ると、その矢が空中で静止する
裏切り者C「なっ、止まった!?」

ノエル「あ、あれも魔法なの?」
魔王「無論だ」

≪page7≫

そして止まった矢を回避しそのまま相手を蹴り飛ばす。

地面に倒れたBとC。
その様子を見て、Aが距離を開ける
裏切り者A「クソッこれならどうだ!」

そして懐からクリスタルを取り出す。

ノエル「魔晶石!? 危ない! あれは魔法を封印するアイテムだよ!」
裏切り者A「あの魔物を倒すためのとっておきだ! せいぜい苦しんで死にやがれ!」

≪page8≫

魔晶石を地面に投げつけ砕く裏切り者A
裏切り者A「中級氷結魔法:アイシクル・ランス!」

空中に氷の槍が5本現れる

裏切り者A「ゴールド級冒険者の魔法を込めた魔晶石だ!」

≪page9≫

裏切り者A「おいノエル。そのペンダントをこっちに渡せ。そうしたら見逃してやるよ」
ノエル「ぐっ……」

ノエルが魔王とアルの身を案じてペンダントを外そうとする。
その手を魔王が止める
魔王「案ずるな」
魔王「我が配下アルベルス・ヴィータ。その力を示すのだ!」

≪page10≫

アルベルス「時力同調:詠唱加速――根源たる焔よ!渦巻く炎陣、灰燼と成せ!」

地面に魔法陣が浮かび上がる

ノエル「それって儀式魔法!?」
裏切り者A「あ、ありえないだろ! 一流の魔法使いが何人も集まって数日かけて使う魔法だぞ!」

≪page11≫

魔王(我が父上が最も得意とした時間を操る力で本来必要な時間を加速させたのか)
魔王(アルのやつ短い時間でここまで父上の力を使いこなすとは)

裏切り者A「そんなもの、お前なんかが使えるか! くらえ!!」

アイシクル・ランスが打ち出される

≪page12≫

アルベルス「【焔嵐】」
※焔嵐=フレイム・テンペストでお願いします

炎の渦が地面から湧き上がりアイシクル・ランスの魔法を一瞬で飲み込んで消してしまう
※めっちゃ派手にお願いします

≪page13≫

驚くノエル。
ノエル「す、すごい……」
裏切り者「お前、いったい何者だ!」
アル「ただの従者だよ」
裏切り者A「クソッ、くそがああああ!」

剣を構えて突っ込んでくる裏切り者A

アルベルス「時力同調:【加速】」

アルベルスの速度が急速にあがりAに接近し攻撃を剣で弾く。
Aの持っていた剣は宙に舞い、吹き飛ばされてしりもちをつく。

≪page14≫

※ここからシリアス

アルベルス「二つ聞かせてほしいことがある」
アルベルス「どうやってあの魔物を使役した? なぜわざわざ魔物を使った?」
裏切り者A「へっ、誰がお前に――」

強がろうとしたAに向かって手のひらを向けるアル。
すると周囲に、五つの炎の玉が浮かぶ。
その光景に慌てて話始めるA。

≪page15≫

裏切り者A「魔物商人から買い取ったんだよ。なんでも魔族と繋がってるらしい」

その答えを聞いて眉を顰める魔王。

魔王「やはり魔族か……」

アルベルス「なんで魔物を使った? あのペンダントが目的ならお前たちだけで十分だったはずだ」
裏切り者A「魔物に殺されたってなれば、俺たちは罪に問われないだろ」
裏切り者A「それに仲間を殺した魔物を討伐したとなれば、ギルドの評価もあがるからな」

≪page16≫

 ふるふると肩を震わせ怒っている魔王。

魔王「魔族と人間の関係が悪化するとは思わなかったのか?」
裏切り者A「そんなもの、俺たちには関係ねえよ」
魔王「そんなもの、だと……」

 怒りが限界に達する魔王。その様子にノエルがたじろいでいる。
 魔王がアルの隣まで歩いてくる。

魔王「人と魔族が争う、その火種ができても構わないというのだな」
裏切り者A「チッ、ガキがなに怒ってんだよ」

≪page17≫

魔王「愚か者が」

 裏切り者Aをにらみつける魔王。
 その目に怯える裏切り者。
※魔王然とした表情でお願いします(ここはかわいさなしでOKです)

裏切り者A「ひぃっ」

そして助けを求めるようにアルベルスに声をかける

裏切り者A「あ、あの魔物はお前が倒したんだろ? 手柄はやるから見逃してくれねえか」

そんな裏切り者を冷ややかな目で見つめるアルベルス。

アルベルス「残念だけど、お前たちは魔物に殺された。そう伝えておくよ」

≪page18≫

アルベルスが火の玉を撃ちだそうとしたとき、魔王が叫ぶ

魔王「待て!」
アルベルス「でもこいつらは……」
魔王「わかっておる、だが人を裁くのは人のルール」
魔王「他種族を私たちの基準で裁くのは、ただの虐殺だ!」
アルベルス「……」

唇をかみしめ、感情を抑え込もうとしている魔王。
その唇から血が流れるのを見て、アルは火の玉を消す。

≪page19≫

アル「魔王様……」
※ニーニャ呼びを忘れて魔王呼びするシーン。後でノエルに魔族だとバレるきっかけにする予定です
アル(内心)「魔族を利用されて一番悔しいのは魔王様のはずなのに……」
アル「すみません」

魔王「構わん。いや、すまなかった」
魔王「こやつらをここで、始末させてやれなくて……」
アル「……」

≪page20≫

回想
〇場所:スピカの街

ナレ「スピカの街」
逃げ惑う魔族たち(見た目を魔族らしい角や羽の生えたものにしてください)
家屋からは火の手があがり、そこへ武装した人間がやってくる

武装した人「街にいる魔族は全員捕らえろ!」

そんな中、荷物をもって逃げようとしている幼いアルベルス

アルの母「アルベルスこっち! 急いで逃げないと!」

回想終わり

≪page21≫

〇場所:森

魔王「さあ、あの者どもを縛り上げるぞ!」

暗転
※シリアス終わり

〇場所:夜の部屋

ベッドに腰かける魔王の口を治療しているアル。

≪page22≫

魔王「ひたいひたい! しみるのだ~!」
アルベルス「こんなに強く唇をかむからですよ」

 薬草をちょんちょんと患部に塗り込んでいく。
 痛みに飛び跳ねる魔王

魔王「ぬわあああ!」
アルベルス「はい、終わりです」

≪page23≫

そして薬のビンをしまうアル。窓際のテーブルに座ると、窓へと視線を向ける。
窓の外に広がる街には、ポツポツと明かりがついていて
酒を飲む人の姿が見える。

アルベルス「人間領へ来た初日でこれなんて、今後が思いやられますね」
魔王「アルはもう城に帰りたくなったのか?」
アルベルス「そんなことないですよ。ただ、今日みたいなことが続くのかなって」
魔王「続く、だろうな……」

魔王がベッドから降りて、アルの正面のイスに座る。

≪page24≫

魔王「だが、私たちは立ち向かわねばならん」

魔王の言葉を聞いて、真剣な表情を見せるアル。

魔王「どうして私が冒険者になったか覚えてるか?」
アルベルス「先代魔王様の装備回収と魔族の監視ですよね」
魔王「ああ、だが実はもう一つ大きな理由がある」
魔王「人間は共存するに値する存在なのか。それを見極めるためだ」

≪page25≫

アルベルス「見極める……」
魔王「私が人と争いの道を選ばないのは、父上が人との共存を望んだからにすぎん」
魔王「そこに私の意思はない。だから私は魔王として決めねばならん」
魔王「人と共存するのか。それとも魔族が支配するのか」
アルベルス「支配するべきだと思います」

≪page26≫

〇場所:スピカの街(イメージ背景)

崩壊した家や死体が散乱する街
その中心にアルベルスが立っている。

アルベルス(内心)「魔族と人間が共存する街スピカ」
アルベルス(内心)「僕の生まれ故郷であるあの街は人間の裏切りで失われた……」

≪page27≫

〇場所:夜の部屋(戻ってくる)

アルベルス「人はいつか裏切りますから」
魔王「そうかもしれない。だからアル、お前にも見極めてほしい」
魔王「人を恨むお前の意見は、私にとって重要だ」
アルベルス「僕が見極める?」
魔王「そして私が判断する」

≪page28≫

魔王「それが魔王である、私の使命だ」
アル「わかりました。でも、仮に戦うことになったら勝てますか?」

アルの疑問に胸を張る魔王。

魔王「そんな心配はせんでよい! 私が人間に後れを取るとでも?」

ドヤッ顔の魔王。その唇にアルが触る。
ケガの痛みで驚く魔王。

魔王「ひゃん!」

≪page29≫

アル「ぷっはは、魔王様ならきっと大丈夫ですね」
魔王「き、貴様! なんてことをするのだ!」

椅子から立ち上がり怒る魔王。
そんな魔王をよそに、アルはベッドへと向かって行く。

≪page30≫

アル「さあ、寝ましょう。明日から冒険者として忙しくなりますよ」
魔王「そうだな。嫌な事は寝て忘れよう。明日を良き一日にするためにな」