私は…純粋無垢なあの子を殺しました。
夏休みが終わり学校へ行くと私の知る茉莉子はどこにも居なかった。
「私、かわいい?」
茉莉子に聞かれ、工藤七華は「う、うん」
と頑張って笑顔を作ってみせた。
「二重にして涙袋いれたんだけどさぁ、めっちゃ良いしメイクが盛れやすいからオススメだよ!七華も整形やってみたら?」
元々、茉莉子の顔は、愛嬌はあるが特別可愛いという顔ではなかった。
なのに茉莉子は元の他のパーツが良かったのか、目元を変えただけでとても可愛くなったのだ。
実は茉莉子は整形反対派だった。
同じ大学の子が整形した時、
「あの子整形したらしいよ。整形するとかまじ無いわ〜親からこの顔貰ったのにメス入れるとか親かわいそー。」
整形した子の目の前で聞こえるようにわざと大きな声で私に話しかけて嫌がらせをしてる時があった。
その子は一瞬私たちを睨みながらその場から去った。その時も「うわ、睨まれたんだけど、私の方が正しくない?」と何一つ反省してなかった。、
そんな茉莉子が整形してきたのだから私はとてもびっくりした。
「茉莉子、お金が無いって言ってたけど整形のお金はどうしたの?」
私が問いかけると、
「あ〜私、パパが出来たんだよね。」
「えっ、パパって……、パパ活?」
「うん。パパ良いよ〜、お金くれるし欲しいもの買ってくれるし。」
まさか茉莉子がパパ活をしていたなんて思わなかった。でも、思い返してみれば夏休み入る前から少しずつ高級ブランドのコスメを持ってきたり、バッグを持ってきたりしたことがあった。親に買ってもらったんだとばかり思っていたから私は特に気にしてなかったけど、パパ活と聞いたら納得した。
「茉莉子整形に反対してなかったっけ?」
私がそう問いかけると茉莉子は、
「実はさ、大学で整形してうちが悪く言った子いるじゃん、その子モデルになったらしくてさ。整形するだけで人生変えれるんだと思ったら、私も可愛くなりたくって。」
そう言う茉莉子はとても自信がみなぎっていて、とても幸せそうに見えた。
整形してから茉莉子は、人が変わったかのように振舞った。
元々愛嬌があり人気者だった茉莉子は、いつもウケを狙ってみんなの前でふざけるような人物だった。それが今では、ウケを狙わずにモテを意識してあざとい話し方をしたり、男性にはボディタッチを良くするようになり、すぐに茉莉子の事が好きだという男性が増えはじめ、女子人気の高かった茉莉子はいつからか男性人気の方が高くなり、女性からは反感を買うようになった。
整形する前は2人で変顔写真をとっていたのが、今ではあざとく自撮り写真を撮るようになった。
ある日大学に通ってきた日の夜、Instagramを見ていると茉莉子の写真がアップされていた。
見てみるとそこには今日2人で大学の中庭で撮ったツーショット写真がアップされていたのだが、そこに映る姿に私はショックを受けた。
実際の整形後の茉莉子の顔にはもう慣れたものの、写真に映る茉莉子の姿は私の隣に並ぶと明確に顔の違いがハッキリしたのだ。
目が大きくなり、可愛くなった茉莉子の隣に並ぶのは普通な顔の私。
コメント欄には、「茉莉子ちゃんかわいい」「可愛くなったね!」「隣の子ブスじゃね?」「茉莉子ちゃんは100点、隣の子は25点!w」
4件のコメントがかあった。
この時私の目には「ブス」と「25点」いう単語しか目に入らなかった……。
写真をもう一度見返す。
「あれ?私ってこんなにブサイクだったっけ?」
私は急いで洗面所に向かい、鏡の前に立ち自分の顔を確かめた。
前はこの普通な顔でもこれが「私の個性」と思い、この顔でも愛嬌があって良いではないか。そう思っていたのに、目の前に写る自分の顔はいつもよりも可愛くなかった。「ブス」「25点」という単語が心の奥に浸透していく。
この「ブス」「25点」という2つの単語が私の住む世界を逆転させた。
私は、ブスなんだ。ブスだったんだ…………。
自覚した七華はスマホを手に取り茉莉子に連絡していた。
「パパ活について教えて欲しいんだけど」
LINEで送ると、茉莉子は驚いてはいたものの「分かった、明日詳しく教えてあげる」と返信があった。
次の日。七華は茉莉子と待ち合わせし、駅前のカフェに来ていた。
茉莉子は「どうしたの急にパパ活教えてなんて、七華らしくなくない?」と席に着くなり私に問いかけた。
「実は、、、、」私は、昨日の茉莉子がUPしたインスタのコメントについて話した。
「まぁ、確かに傷つくよね。それで整形をする為にパパ活をしたいという事で私に頼ってきたんだね?」
「うっ、うん。」
茉莉子は「そっか〜」と言うと私にあるアプリを紹介してくれた。
「じゃ〜ん!このアプリで私はパパ活始めたの。こうやって条件にあうパパを自分で選んでくの。マッチングアプリと同じ感じでやるの!」
茉莉子は自分の画面を見せながら、簡単に分かりやすく説明してくれた。
さっそく、アプリをダウンロードしてみる。
アプリを開くと、まずはプロフィールを作成する所からだった。
「名前は工藤七華で年齢は20歳っと…。ねぇ、自己紹介文で何書けばいいかな?」
「私は素直に「整形する為のお金が欲しいです。」って書いてたよ。」
私も茉莉子の真似をして同じ文章をプロフィールに書き込んだ。プロフィールの写真には前に茉莉子と撮ったツーショットを切り取り使用した。
「後はパパからの連絡を待つだけ!あと七華がする事は、パパに好かれそうな服を買いに行くこと!七華はいつもパンツスタイルだからワンピース持ってないでしょ?今からワンピース買いに行くよ!」
そう言われ私と茉莉子は2人で服を買いにデパートまで歩いた。
何十着と試着をして、5着ほどシンプルで可愛らしいワンピースを見つけた。自分の財布の中身を見てどれに絞るか決めていると茉莉子が、「服屋に連れてきたのは私だから買ってあげる。今はパパのおかげでお金に余裕があるからさ!」そう言うと5着まとめてレジまで持って行ってしまった。
一人暮らしのアパートに帰り、さっそくアプリを開いてみると通知が来ていた。3人のパパが私の事を気になってくれたみたいだ。パパたちのプロフィールを見てみると「会社員」「社長」「経営者」と職業が表示されていた。
まずは気になる「社長」とかかれたパパにメッセージを送る。「はじめまして」するとすぐにパパから「七華ちゃんはじめまして!」と返信があった。
パパは私がパパ活初めてで緊張していると言うと冗談を言ったりして笑わそうとしているのがメッセージ上で伝わってきて良い人だなと思った。
大学の授業中、スマホ通知が来たので見てみるとパパから「今日の夜、一緒にご飯食べない?」とご飯のお誘いがきた。遂にこの時が来たかと思いつつも。授業中だったので短く「はい、お願いします。」とだけ返信して授業に戻った。
待ち合わせは夜19:30に駅前待ち合わせとなった。私は授業が終わった後、家にすぐ帰りまずはメイクを落とした。
茉莉子に買ってもらった5着の中からパステルブルーのレース調のワンピースを着て、この服に合うようなメイクをする。
アイシャドウはピンクベージュの色を薄く塗り、アイホールの真ん中らへんにゴールドのラメを少し重ねて、涙袋も細かいラメを乗せて、リップはピンクのグロスを塗った。
髪型は髪の毛を緩く巻いてハーフアップにしてみた。
完成した自分は、頑張って気合いを入れました感がすごく、可愛くなかった……。
あぁ、ブスだな私も早く可愛くなりたいな。
19:30待ち合わせ場所に、トプ画と同じ髭を生やした少し大柄な男性が高級車に乗って現れた。
「七華ちゃんかい?はじめまして、じゃあ行こうかな?」
「はじめまして……。はいっ!」
高級車の助手席に座り私は緊張で固まっていた。
「ハハッ、緊張しなくていいよご飯食べに行くだけだから。それより今日おめかししてくれたんでしょ?有難いね〜若い子が私に会うために可愛くしてくれて。」
「可愛くしてくれて」というパパの言葉は、頑張ってメイクして良かったと思うのと同時に、私の事「ブス」って思ってるだろうに気を使わせてしまったなと思ってしまった。
ディナーは高級ホテルのレストランだった。ステーキや見たことの無いオシャレな料理が沢山出てきた。
食事が終わり、パパの車で待ち合わせをした駅前に下ろしてもらうことにした。
駅に着いて降りる時にパパは「今日はありがとうね」と茶封筒を渡してくれた。
その場で中身を確認するのは失礼だと思い、「ありがとうございます!」とお辞儀をしてパパが帰るのを見送った。
中身を確認してみると、10万円が入っていた。
唖然として10万円を眺めているとパパからメッセージが届いた。「整形後の姿楽しみだな」と来た。
さっそく私は家に帰り10万円で二重と涙袋の整形が出来る所を予約した。
カウンセリングが終わり、施術が始まった。
施術が終わり期待して顔を見ると二重が腫れていて可愛くなかった……。
ダウンタイムの事を知らなかった私はとてもショックを受けた。1〜3週間くらいはこの腫れた目が治らないらしい。
この顔で大学に行くの辛いなぁ……。
次の日授業があった為、黒縁の伊達メガネをして、前髪も巻かずに目が隠れるようにして行った。
茉莉子は「おはよっ!」と言い私の顔を見て小声で「ダウンタイム中?」と聞いてきた。
私は「うん、昨日やったんだけど腫れが凄くて……。」と返した。
「すぐ、可愛くなるから落ち込まないで!」
そう茉莉子に元気づけられ私は少し気が楽になった。
整形してから1ヶ月後。
鏡の前には腫れが収まり目がぱっちりして可愛くなった姿の私がいた。
うん、これなら80点くらいになれたかもしれない!
大学に行くと前とは違い、男性にも少し声をかけられるようになった。
茉莉子と二人合コンに呼ばれることもあり、私は自分に自信がついてきた。
整形の報告を兼ねてパパとディナーに行った時に、「目がパッチリして可愛くなったね〜可愛くなったからお小遣いも少し上げようかな〜」そう言いパパは12万渡してくれた。
自信がついた私は、思いきってTikTokに流行りの音源に乗せてバストアップで踊った動画を載せた。
初めて載せたにも関わらず再生数は意外と伸びた。コメント欄には「かわいい」「メイク好き」などと何人かがコメントしてくれ、その後私は調子に乗って何個も動画を撮り、TikTokにアップした。
自分が新しくアップした動画のコメ欄を見てみると、「○○ちゃんの方がかわいくね?」「○○ちゃんよりブス」と書いてあり、そのコメントにいいねが10件以上ついていた。
七華は悔しかった。「ブス」は抜け出したと思ったのに……。せっかく整形して可愛くなったのに……。
さっそくコメントに書かれていた子のTikTokに飛んでみる。
確かに可愛かった……可愛かったけど…………私がもっと整形したらこの子より私の方が可愛くなるはず。
Twitterの大手美容垢を沢山見ていると、垢抜けの決めては鼻整形だと書いてあった。
鼻整形には安くても50万くらい……。
七華は整形費用の為にパパとの約束を沢山した。「七華ちゃんがどんどん綺麗になっていく姿を見るのが楽しみだな〜」とお金を12万、13万、14万と会う度に1万ずつ増やして渡してくれた。
あっという間にお金が貯まり、鼻整形をする事となった。
ダウンタイム中の顔は人に見せられる様な顔ではなかった為、今回はダウンタイムの顔と期間について事前に調べて、大学を一時休学する事にした。
鏡の前の私は、綺麗で前とは別人みたいだった。「100点になれた」とそう思った。
ダウンタイムが終わりパパに見せる為に、夜ディナーに行く事となった。
パパは「七華ちゃん、綺麗だよ。今の姿でも十分可愛いけど、目頭切開とか糸リフトとかやったらもっと可愛くなるかもしれないな〜。」
パパに言われ、鏡を見るとさっきまで美人、100点だと思っていた私の顔が40点の不細工な顔にみえた……。
まだ私は綺麗じゃない、可愛くないんだ……。
落ち込んでいる私にパパは、
「私の理想の七華ちゃんになるにはもう少しお金が必要になるようだな〜。七華ちゃん、お金欲しいかい?」
「はい……欲しいです。」
「じゃあ、七華ちゃん。大人な事しよっか?」
整形する費用の為に、私はパパと体の関係を持ってしまった……。
最中私は、気持ち悪い……けど我慢……。と自分の感情を押し殺し、感じている演技をしてパパの機嫌を損ねないように一生懸命演じた。
事後、自身の身体を売ってしまったという自分への失望感が大きく襲ってきたが、 30万。1回寝ただけでこの額。私は身体を売ったことより、目の前のお金に目がくらんでしまった。
私はそれからパパと1週間に3回会って食事をし、ホテルに行くという事を4ヶ月した。
その4ヶ月の間、パパに言われた糸リフトや目頭切開の整形をした。パパには「もう整形しなくていいんじゃない?」と言われたが、鏡に映る私はまだ可愛くなかった。
それから私は、涙袋を更に大きくしたり、口角リフトや唇を大きく見せるヒヤルロン酸、前に施術した鼻をもう少し高くしたり、様々な整形に手を出した。
この頃になるとパパは「整形やりすぎて怖いよ……もう理想の七華じゃない。この関係辞めようか」とそう言い関係を終わらせた。
パパに見捨てられた。
もうこの頃には大学を辞めていた。
それでもまだまだ整形したりない私は、更なる整形費用の為にキャバクラに勤め始めた。だが、指名はされるものの会話が続かずに2ヶ月で辞めてしまった。
私はついに風浴に手を出してしまった。
それからも七華は整形を続け、もう整形したら危険と医者に言われるまで整形し続けた。
七華は久しぶりにTikTokを開いた。前に投稿した自分の動画を見て、「醜い」そう呟いた。
「 今の私は誰よりも可愛い、だからみんなに見てもらわないと」
流行りの音源に乗せて「ブスから生まれ変わりました!」とコメントを載せ動画を載せた。
数日後。
この間撮った動画がバズってしまった。いいねが沢山つき浮かれている私は世間がどんな目でいいねしていたかなんて知らなかった。
コメント欄には「えっ、やばくね?」「整形モンスターじゃん」「前の投稿の方が可愛いんだけど変わりすぎwww」「今の方がブス」「キモくね?ww」
沢山私の容姿に関しての批判コメントが書かれていたのだ。
茉莉子からも、TikTokを見て連絡が来た。
「ねぇ、七華怖いよ?整形し過ぎ。なんか友達でいるの恥ずかしいから辞めるね。」
友達がいなくなった…………私がブスだから、ブサイクだからいけないんだ……。
「何で?どうして?……そうか、もっと整形すればブスじゃなくなるんだ。」
すぐに病院に行き、「整形したい」と言ったがドクターストップをかけられ強制的に返された。
病院の帰り道、歩いていると色んな人が振り向いてコソコソと話したりこっそり撮られたり。みんなが私の事を変な目で見ていた。
私は顔を見られるのが怖くなってコンビニに寄りマスクを買った。
マスクをしたら変な目で見られなくなった。安心して歩いて帰っていると人だかりが出来ているのを見つける。
人をよけて近くまで行ってみると、テレビに出てる有名アイドルがMV撮影をしていた。
周りに集まってる人達が「可愛い」「やばい可愛すぎ」「お人形さんみたい」と私が1番聞きたい声をアイドルに向けて言っていた。
私だって、整形すればもっと可愛くなるのに……。
七華は思いついた。
「医者が出来ないなら自分で整形すればいいんだ。」
狂った七華は鏡の前でナイフを頬に刺した。
「痛いっ!」
「何で上手く出来ないの?何で……」
七華は痛みと可愛くなれない悔しさで涙を流す。涙が頬の傷に触れて激痛が襲ってきた。
涙で視界が見えなくなった七華は袖で涙を拭った……。
鏡の前に現れたのは、さっきまでいた可愛い自分じゃなくて、マスカラが涙で黒くなり、涙と頬後が混ざったぐしゃぐしゃのメスを入れまくった人工的な顔だった……。「怖い」整形後初めて思った感情だ。
いつのか間にか、私の顔は化け物に変わっていたのだった…………。
実家の居る母から久しぶりに連絡があった。私は大学の事もあり、電話に出る勇気が出ず、無視した。
「七華元気?大学生活上手くやってるの?連絡が無いので心配しています。いつでも帰ってきていいからね!」
留守電に残されていた、久しぶりに聞いた母の声に、涙が込み上げてきた。「いつでも帰ってきていい」この一言で、居場所を無くしていた私は色んな事を思い出し、私は母に申し訳ない気持ちでいっぱいでひたすら泣き続けた。
1日だけ、実家に戻ろう。そう決意し実家に戻った。
「この顔の私は勝手に入っても気づかれないだろうと思い、緊張しながらインターフォンを「ピンポーン」と鳴らした。
「は〜い。」
家の中から懐かしい母の声が聞こえる。
玄関が開き、母が出てきた。
「どちら様でしょうか?」
そう聞く母に私はショックを受けつつも答えようとする。
「私だよ……なっ……」
不思議そうな顔をする母の隣に家族写真を見つけてしまった。写真に写る私は、おにぎりを頬張りながら笑顔でピースをしていた。
幸せそうに……。
母は写真を見ている私に、
「この写真はね、3歳になった娘とはじめてピクニックしに行った写真なのよ。この時にね、将来はプリキュアになる〜!って言ってたのよ。ふふっこんなこと言ってた娘は今は教師になる為に大学に通っているのよ。」
あぁ、私は純粋無垢なこの子を殺してしまったんだ……。この子の幸せな未来を奪ってしまったんだ…………。教師になる為に入った大学も辞め、自分の評価をあげるために整形中毒になり顔にメスを入れまくって人工的な化け物になってしまった。
「っ……ごめんっ……ごめんなさい……」
娘だと気づいていない母の前で膝から崩れ落ち、私は泣いた。
「ごめんなさい…………お母さん。」
そう言った瞬間、心配そうに見ていた母の顔が歪み母も泣き崩れた。
落ち着いてから母はお茶を入れてくれ、何も言わず私が話し出すのを待ってた。
私は、友達と比べられ顔に点数を付けられた事が悔しくて整形した事や整形費用を稼ぐ為にパパ活をし、自身の身体を売ってしまった事。整形に溺れて大学を辞めてしまったこと。周りのみんなが「整形やりすぎ」って言っているのに、「まだ可愛くないから整形しなくちゃ」と次々に色んな整形に手を出し風浴で働いている事など全てを母に話した。
母は話を聞いて泣いていた。
シングルマザーで育ててくれた母にとって、私は自慢の娘だったらしい。
「素直で、優しくて明るい七華は神様がお母さんにくれたプレゼントなのよ。凄くショックで悲しいけどどんな姿になっても、何かをやらかして犯罪を犯したとしても、お母さんは七華の1番の味方だからね。」
泣きながらそう話す母に私はまた泣いてしまった。
居場所を無くした私はあれから実家に戻った。今は地元に帰り近所のスーパーでお惣菜を作るお仕事をしている。マスクをする職業なので顔を見られずに済むし、おばちゃん達がやさしいから働きやすい。
こっちに帰ってきても色んな人に「化け物」「気持ち悪い」と言われる事があった。でもその度に母が「私の娘は綺麗な子なんです。」と言ってくれる。
SNSが普及したこの時代。多様性を求めているのにも関わらず、人々の評価は顔で決まってしまう。そしてその評価により傷付き、整形によって可愛い姿になろうとする。
整形は、なりたい自分に近づける素敵な魔法だと思う。
だけど、私は評価されるまで自分の顔が好きだった。でも評価によって自分の顔に自信を無くし、メスを入れまくった。その結果整形中毒になり、整形しても整形しても満足出来無くなるほど盲目になってしまい自分を見失ってしまった。
そうして私は好きだった顔を傷つけ殺してしまった。あの純粋無垢だった頃の私を。
SNSで評価されるこの時代、人々の心無いコメントや評価によってまた1人、殺人を犯す……。