私はいつ死んでも可笑しくはなかった。小さい頃からの「病気」持ちで友達は周りに居なかったのだから。だけど灰色の世界のような暗闇に居た私を見つけてくれたのは彼だった。高校生になった辻君はスポーツ万能(ばんのう)で成績が良く面倒見(めんどうみ)が良い。そして何処(どこ)か底知れない「力」があるようで(うらや)ましかった。
 いつも笑って微笑みかける顔の表情は幼い頃の彼そのもので変わりない所が安心する。
 ――私はと言うと、(いま)だに声を掛ける勇気がないまま友達を見つけられずに教室の隅に居た。彼は「スポーツ」だけが取り柄じゃなく、頭を働かせて勉強がとても出来る。
 赤点をあまり取ったことがなくて学年一位も夢じゃない。教師同様の実力があって「勉学」の教え方が上手な所は皆から評価されて注目を()びる。
 辻君のように、とてもじゃないけど親しくなれるという自信は持ち合わせていない。それに私と居ることよりも友人や尊敬できる人達が待っている場所に居る方が楽しそうで距離感を感じる。
 小さい頃は二人で良く遊んでいたことが多かった。何も知らない(みやび)に明るく振る舞う彼と一緒に居ることだけが楽しくて、ずっと幸せな時間を送る。・・・だけど子供の頃からの「『病気』」を患い、毎日の日常に(さいな)まれて苦しい日々を送る。
 一日でも早く「病」が回復できる日が来てくれることを夢見ていた。点滴や、痛くて嫌いな注射を我慢(がまん)して薬の鎮魂(ちんこん)作用による魔法を借りて何とか学校に通うことが出来る日常を取り戻せたのだ。