「外見なんて、ただの飾りだよ」
 大輔はそう言うと、ニッと笑った。
 さくらはこの時、初めて胸がときめくのを感じた。外見以外の魅力をこんなにもストレートに伝えてくれたのは、大輔が初めてだったのだ。
(私、そんな風に見られていたのか……)
 さくらはドキドキする胸を押さえ、赤くなった顔を見られないようにそっと(うつむ)くのだった。 オリエンテーションが終わるとクラス内は本格的に授業が始まり、中間テストに向けて空気が変わり始める。さくらと大輔の関係も進展をみせることなく、それぞれがそれぞれの時間を過ごしていた。
 しかしさくらの視線は自然と大輔を追ってしまい、教室で明るく騒ぐ大輔を見ると、何だか心の中が温かくなるのを感じるのだった。