第2話
薄暗い洞窟の中。
ダージュはヒンヤリとした土の床に横たわり、その場から動けなくなっていた。
「腹減った……死ぬ……」
彼の居る妖精の風穴(フェアリーフォール)の中は緑豊かな森と違い、食料と言えるものが皆無だった。
幸いにも水精霊から水は分けてもらえるものの、空腹は満たされない。
「こんなことになるなら、世界樹の果実を持ってくりゃ良かったぜ」
後悔先に立たず。
こうなった元凶である祖父を恨めしく思うも、すでに里を出てしまった身だ。今さら戻ることもできない。どうにか打開策を講じる……が、何も浮かんではこない。
このまま俺は死ぬのか……と思った次の瞬間。彼は突如として眩しい光に襲われる。
「あら、起きたのね。こんなところに転がっているから、死体かと思っちゃったわ」
彼の前に現れたのは、長い黒髪をした背の小さな少女だった。
ダージュは差し出された彼女の手を掴むと、一気に引っ張り上げられた。小柄でも信じられないほど力が強い。
「私はセリナ。見ての通りドワーフ族よ」
「ドワーフ族?」
「あら、初めて見るのかしら? ……そういえば貴方、珍しい耳をしているわね。獣人族とも違うみたいだけど」
「俺はダージュ。ヴェントの里から来たエルフだ」
互いに自己紹介を済ませると、セリナはダージュの姿を見て笑う。
「ふふ、お腹が減っているみたいだし、食料を分けてあげる。ちょうど良いものがあるのよ」
セリナは葉っぱに包まれた何かを取り出すと、ダージュに手渡した。
さっそく包みを開いて、中に入っていた純白の塊を口の中に放り込む。ゆっくりと咀しゃくして、ゴクリと飲み込んだ。
「……美味しい」
その言葉と同時に、彼の両目からポロポロと透明な液体が溢れ出していた。
涙を拭いながら、ダージュは貰った白い塊を口いっぱいに詰めていく。それは世界樹の果実よりも遥かに甘く、今までに感じたことのない優しさに満ちていた。
そんな光景をセリナは静かに見守っていた。
「ご馳走様でした。こんなに旨い飯を食ったのは、生まれて初めての経験だ。ところで――」
世界には美味しいものが溢れていることに感動したダージュは、セリナにとある提案をすることにした。
「セリナはプロの料理人なんだろ? もし良かったら、専属の料理人になってくれないか!?」
薄暗い洞窟の中。
ダージュはヒンヤリとした土の床に横たわり、その場から動けなくなっていた。
「腹減った……死ぬ……」
彼の居る妖精の風穴(フェアリーフォール)の中は緑豊かな森と違い、食料と言えるものが皆無だった。
幸いにも水精霊から水は分けてもらえるものの、空腹は満たされない。
「こんなことになるなら、世界樹の果実を持ってくりゃ良かったぜ」
後悔先に立たず。
こうなった元凶である祖父を恨めしく思うも、すでに里を出てしまった身だ。今さら戻ることもできない。どうにか打開策を講じる……が、何も浮かんではこない。
このまま俺は死ぬのか……と思った次の瞬間。彼は突如として眩しい光に襲われる。
「あら、起きたのね。こんなところに転がっているから、死体かと思っちゃったわ」
彼の前に現れたのは、長い黒髪をした背の小さな少女だった。
ダージュは差し出された彼女の手を掴むと、一気に引っ張り上げられた。小柄でも信じられないほど力が強い。
「私はセリナ。見ての通りドワーフ族よ」
「ドワーフ族?」
「あら、初めて見るのかしら? ……そういえば貴方、珍しい耳をしているわね。獣人族とも違うみたいだけど」
「俺はダージュ。ヴェントの里から来たエルフだ」
互いに自己紹介を済ませると、セリナはダージュの姿を見て笑う。
「ふふ、お腹が減っているみたいだし、食料を分けてあげる。ちょうど良いものがあるのよ」
セリナは葉っぱに包まれた何かを取り出すと、ダージュに手渡した。
さっそく包みを開いて、中に入っていた純白の塊を口の中に放り込む。ゆっくりと咀しゃくして、ゴクリと飲み込んだ。
「……美味しい」
その言葉と同時に、彼の両目からポロポロと透明な液体が溢れ出していた。
涙を拭いながら、ダージュは貰った白い塊を口いっぱいに詰めていく。それは世界樹の果実よりも遥かに甘く、今までに感じたことのない優しさに満ちていた。
そんな光景をセリナは静かに見守っていた。
「ご馳走様でした。こんなに旨い飯を食ったのは、生まれて初めての経験だ。ところで――」
世界には美味しいものが溢れていることに感動したダージュは、セリナにとある提案をすることにした。
「セリナはプロの料理人なんだろ? もし良かったら、専属の料理人になってくれないか!?」