ダンジョンをクリアして行くうちに、アベルしか入れない謎の部屋がダンジョン内に存在することに気づく。
その部屋の扉を開けると。
勝手知ったる相手。
前世で何度も戦ったあいつ。魔王が椅子に鎮座して自分を待っていた。

なんとこのダンジョンは、アベルに執着した魔王が転生したアベルと再び会うために時空を歪めて作ったものだったのだ。
どうやってアベルがいる世界に自分を導いたのか、その鍵となるのはアベルと獣魔契約をかわしているフェンリルの紅蓮と雹牙の二匹。
アベルと二匹は魂の契約を結んでいる。それは体が滅んでも魂が繋がっているので関係ない。
それを魔王は利用し、鍵となる紅蓮たちを自分が作ったダンジョンに落とし、アベルと二匹繋がるのを待っていたのだ。

それにまんまと引っかかったアベル。
その魔王の話にドン引き。
そして魔王は恍惚とした顔で「我と再び戦おうぞ」とアベルに言うのだった。
その返事は「戦わねーよ!」だった。
自分に会うためにダンジョンを作ったのなら、消せと魔王にいうと「それは出来ぬ。消し方などわからぬ」だった。
その返事になんとも言えない声が出るアベルだった。

魔王はアベルと戦う内に愛おしく思っていたのだ。
アベルと戦いたい魔王、戦いたくないアベル。
そんな二人が結果どうなったのかというと、魔王は人間のふりをしてアベルと同じ学校に通い、アリスと毎日アベルを取り合っている。

ダンジョンには毎日誰かが潜り配信している。
アベルもたまに潜り、配信ファンを興奮させている。

もうそこにはいじめられっ子の白豚の姿は存在しなかった。