アレから一週間も経ったのか。早いもんだな。

 爺さん達から再び連絡があり、明日ダンジョンに入る事が決まった。
 未知なるダンジョンか……って言っても俺は樹海に飛ばされた時に、日本でのダンジョンの経験はあるからな。
 この世界のダンジョンが、前世でのダンジョンと微妙に違うのも分かっている。
 初めて入る訳じゃない。なんとかなるだろ。

 ———そういえば。

 富士の樹海に出来たダンジョンの話をしてねーな。あの真冬なのに暖かくって、奇妙な植物のことも。俺がクリアしたからダンジョンの存在自体はもうないが、異常気象はまだそのままだからな。爺さん達に話しといたほうがい良いよな。

 まぁ明日あった時で良いか。

「アベル様? どうしたの? 明日のこと考えてる?」

 当然のように俺の部屋に居座っているアリスが、ひょこっと目前に顔を出す。

「わっ! 急に顔を近付けるなっ。びっくりするだろ?」
「むっ? 人を化け物扱いしないでくれる?」
「そういう意味じゃなくってだな。……まぁ明日も早いし、今日はもう寝るぞ?」
「ええ〜? もうちょっと起きてたいのにぃ」
「良いから早く寝ろっ」
「はぁ〜い」

 アリスはもそもそと俺のベットに入る。

「それは俺のベットだろ? お前のベットはあっち」
 俺はぶっきらぼうにアリスを抱き抱え。
「えっ♡お姫様抱っこ」
 そのままペイっとベランダに追い出した。
「もう! ベーっだっ」
「ちゃんと起きるんだぞ?」
「分かってるよーだっ」


 ★★★




「おはようっす」
「おはよう如月様。今日は宜しくお願いしますね」

 武装した爺さんが俺に気付き手を振る。その周りには三十人ほどの武装した人達が周りを囲う。

「アベル君〜! 今日はよろしくね」
「おおっ久留米もえもいたのか」
「なんでフルネーム呼びなのよ。もえで良いって言ったじゃん」

 爺さんの背後からひょこっと久留米もえが顔を出し俺達に向かって走って来た。

「わっ!? アリスそんなにくっ付いたら歩きづらいんだが?」

 なぜか急に、アリスが俺の右腕にしがみ付く。

「良いの! 分からせとかないとだから!」

 そう言って久留米もえを睨む。
 ……何を分からせるというのか。

 久留米もえが俺たちの所に来ると、チラリとアリスを見て反対側の方に回る。
「もうみんな揃ってるよ〜」
「そうか待たせてしまったな」
「私たちが早く来て準備をしていただけだから」
「すごい人だが、まさかあの人数で入らないよな?」
「ああっ違う違う。外で待機してるだけ、中に入るのはお爺ちゃんと私と後側近の三人だよ」
「え? お前も入るのか?」
「お前じゃなくってもえね? 私の異能は攻撃タイプじゃないけど、怪我を治せるの。癒しの異能はレアなんだよ?」

 ———ふう〜ん。それなら別にいなくても。私ができるし。

 何故かアリスが心の声を使ってマウントを取り出した。何がしたいんだアリスよ。

「さっお爺ちゃんの所に行こう!」
「わっ引っ張るなよ」

 久留米もえが俺の左手をぐいぐい引っ張る。右腕にはアリスがぶら下がり、左手は久留米もえがしっかりと握っている。

 何だこの状況は……

 ———この女邪魔ね。アベル様が歩きにくいじゃない。神聖魔法で飛ばしてやろうかしら?

 アリスよ? 邪魔なのはお前も同じだ。
 しょうもない事に神聖魔法を使わないでくれるか?