「どうしたんだよ? アベル。急に元気なくなっちゃってさぁ? あれか? アリスちゃんが一人で教室行ったんがそんなに辛かったのか? 俺がいるじゃんか。なっ」
なぜか俺が落ち込んでると思い、やたらと元気づけてくれるのだが、俺と葛井はそんなにも仲良かったか? ダンジョンに潜る前と今じゃ、レベチで違う。コレも全てアリスのコミュニケーション能力の成せる技なのだろう。恐るべしコミュ力。
教室に入っても、なぜか歓迎ムードのクラスメート達。
みんなが「アベルおはよう」っと声をかけてくれる。今までと違って何だかすごい違和感だが、嬉しい気持ちの方が勝ってるのが、何だか少しだけ悔しい。
別に今までが寂しかった訳じゃないんだからな。
だがついニマニマしてしまうのも事実。コレってアヴェルの感情が出てきてる気がする。
まぁ何にせよだ。良かったな俺
席に着くと、右崎と佐田の二人がやってきた。
「おい〜っすアベル」
「おすおすアベル」
やけに軽い挨拶をして、俺の肩を叩く二人。葛井に至っては俺の前の席を陣取っている。
「「「キャァァァァ!!」」」
「やばいやばいやばい! やばすぎっしょ」
「はぁ。アリスちゃん良いなぁ……」
「それっ。可愛いって得だねぇ」
何だ? 急に女どもが騒がしい。
「ああ〜ん? 何だぁ? うるせえなっ」
「アイツらなに騒いでんだ?」
葛井達がウザそうに女子を見る。
どうやらクラスの女子数名が集まり、なにかを見て騒いでいる。
雑誌を見てるのか? あれか、アイドルの写真でも見て騒いでんだな。
「お前らうるせえぞ! なに見て騒いでんだよ」
葛井が女子達の輪に入っていった。さすがと言うか……俺には出来ない芸当だ。
「ふぅ〜ん? はっ!? アリスちゃん!? 横にいる男は誰だよ!」
ん? アリスが載ってる雑誌を見てるのか?
「ちょっ貸せよっ!」
「ああ〜っ! 何すんのよっ」
葛井が雑誌を奪って俺たちの所に走ってきた。
「アベル! コレ見ろよっ! アリスちゃんが男とこんなにくっついて写真撮ってるぜ? 良いのか?」
「へ? …………ブッッ!!」
「ちょっ!? おまっ俺に唾飛ばすなよ」
「あっゴッゴメン」
「ったく。動揺する気持ちも分かるけどさ」
葛井が女子から奪ってきた雑誌の表紙には、俺とアリスが見つめ合っている写真。
正しく言うと、麻痺の魔法をかけられて身動き取れない俺とアリス。
さらにはブランド特集で【Alexandaer】のページが巻頭二十ページもドド〜ンっと掲載されていた。アリスも載っているが、俺メインと言ってもおかしくないほど俺の写真ばかりが……あああああああああああっ
何だよこれっ! こんなにもいっぱい載るとか聞いてねえぞ。
彗星の如く現れた謎多きモデルA。アレクサンダーのデザイナー【マーティン】までも魅了する。
何だそのキャッチコピーは。
「ちょっと返してよっ!」
「あっごめっ」
女子が大事そうに雑誌を奪っていったが、それ俺だぞ?
お前ら正気か?
俺……デブのままでいい様な気がしてきた。