「じゃあここに立ってくれますカイ?」
納刀したままの模造刀で、立ち位置を指摘するカメラマンのディーンとやら。
なんだろう。撮影場所っていうのか? あってるかは分からないが。
十畳くらいの広さの場所に、ジャングルみたいに木が鬱蒼と生い茂っている。この種類の木はダンジョンを思い出しちまう。同じような木々があの場所にも生えていたからな。
この木は本物だろうか? 気になって手に取ってみると。
「本物だ……」
「おおっと勝手に動いちゃダメデスぜ」
「あっすまねえ」
模造刀をブンブン振り回して、元の場所に戻れと指摘される。
いや……俺やる気ないんだけど。
だがもう俺に断るチャンスは無くなった。
どう考えても逃げるタイミングを逃した。
だって俺を鋭い目で捕らえて離さないデューク。
これから食べられる草食動物の気分が少し分かる。
「ではイキますぜい? アヴェル! 君は勇者だ。倭のサムライ勇者になってくだせぇ」
「………は?」
「そしてアリスは聖女ですぜ?」
「私はせい……女」
カメラマンのディーンって言ったか? 何を言ってるんだ?
勇者に聖女ってまさに前世の俺たちだが、モデルってのはそんな設定があるのか?
不安げにアリスを見ると、首を横に振る。
やはり普通そんな設定はないんだな。このカメラマンが特殊か。
「良いですかい? アヴェルは戦いを終えた状態で、アリスはそれを癒すんですぜ? あっしはそのシーンを撮りたいんデスぜ」
そう言ってうっとりと上を見上げるカメラマンのディーン
何を言ってるんだ? おい? ディーンとやら。
「さぁさぁ? まずはアヴェルオンリーのシーンを撮りますぜ?」
そう言ってカメラを構えるディーン。
「へいへいアヴェル! 戦わないとっゴブリンがっ! ああっ。あっちにはオークの集団がっ! 殺られちゃうよ?」
いや……そう言われてもだな。
何これ。俺に小さな子供がよくやるアレ、なりきり戦隊ごっこみたいな事をやれと?
「ああアヴェルっ! あなたは戦わないんデスカイ? 死ぬ気か」
カメラを構えながら模造刀を振り回すディーン。そうか、お前は既に目に見えぬ何かと戦っているんだな。
それを俺にもしろと?
———そんなの無理やろがい。
アリスも残念そうにディーンを見ている。何を考えてるのか俺もわかるというか同じだろうな。
って事で俺は何をするでもなく、絶賛棒立ちだ。
だがあのディーン。
動きをよく見ると中々の剣捌き。訓練しないとあそこまでは出来ない。
サムライかぶれの外人かと思いきや、やるじゃねーか。
そんな事を考えていたからか、どうやら俺は戦いのことを思い出し、少し闘気を放っていたみたいだ。
パシャパシャとカメラ音が鳴っていると俺が気付いた時には、至近距離までカメラマンディーンが近寄っていた。
「アヴェル! 最高ですぜ」
そう言ってディーンが俺に向かって親指を立て、白い歯を見せて笑った。
納刀したままの模造刀で、立ち位置を指摘するカメラマンのディーンとやら。
なんだろう。撮影場所っていうのか? あってるかは分からないが。
十畳くらいの広さの場所に、ジャングルみたいに木が鬱蒼と生い茂っている。この種類の木はダンジョンを思い出しちまう。同じような木々があの場所にも生えていたからな。
この木は本物だろうか? 気になって手に取ってみると。
「本物だ……」
「おおっと勝手に動いちゃダメデスぜ」
「あっすまねえ」
模造刀をブンブン振り回して、元の場所に戻れと指摘される。
いや……俺やる気ないんだけど。
だがもう俺に断るチャンスは無くなった。
どう考えても逃げるタイミングを逃した。
だって俺を鋭い目で捕らえて離さないデューク。
これから食べられる草食動物の気分が少し分かる。
「ではイキますぜい? アヴェル! 君は勇者だ。倭のサムライ勇者になってくだせぇ」
「………は?」
「そしてアリスは聖女ですぜ?」
「私はせい……女」
カメラマンのディーンって言ったか? 何を言ってるんだ?
勇者に聖女ってまさに前世の俺たちだが、モデルってのはそんな設定があるのか?
不安げにアリスを見ると、首を横に振る。
やはり普通そんな設定はないんだな。このカメラマンが特殊か。
「良いですかい? アヴェルは戦いを終えた状態で、アリスはそれを癒すんですぜ? あっしはそのシーンを撮りたいんデスぜ」
そう言ってうっとりと上を見上げるカメラマンのディーン
何を言ってるんだ? おい? ディーンとやら。
「さぁさぁ? まずはアヴェルオンリーのシーンを撮りますぜ?」
そう言ってカメラを構えるディーン。
「へいへいアヴェル! 戦わないとっゴブリンがっ! ああっ。あっちにはオークの集団がっ! 殺られちゃうよ?」
いや……そう言われてもだな。
何これ。俺に小さな子供がよくやるアレ、なりきり戦隊ごっこみたいな事をやれと?
「ああアヴェルっ! あなたは戦わないんデスカイ? 死ぬ気か」
カメラを構えながら模造刀を振り回すディーン。そうか、お前は既に目に見えぬ何かと戦っているんだな。
それを俺にもしろと?
———そんなの無理やろがい。
アリスも残念そうにディーンを見ている。何を考えてるのか俺もわかるというか同じだろうな。
って事で俺は何をするでもなく、絶賛棒立ちだ。
だがあのディーン。
動きをよく見ると中々の剣捌き。訓練しないとあそこまでは出来ない。
サムライかぶれの外人かと思いきや、やるじゃねーか。
そんな事を考えていたからか、どうやら俺は戦いのことを思い出し、少し闘気を放っていたみたいだ。
パシャパシャとカメラ音が鳴っていると俺が気付いた時には、至近距離までカメラマンディーンが近寄っていた。
「アヴェル! 最高ですぜ」
そう言ってディーンが俺に向かって親指を立て、白い歯を見せて笑った。