さてと、ここで食事にするか。
 ちょうど草が生えてない広場があったので、この場所で料理をする事にした。

 作るのはもちろんアレ(・・)だ。
 オークの肉をちょうどいい大きさに切って、石を並べて作った焼き台で炒めていく。
 フライパンがあればなぁと思うが、贅沢は言えない。
 これでも結構いい感じで焼けるから良しだ。

 そこに胡椒風味のキノコをふりかけ、キラービーの蜜を投入。
 さらに追加で見つけた生姜味のキノコを刻み入れる。照りが出てきたら完成。
 醤油がないのが悔やまれるが、これでもすんごく旨いはず。
 楽しみすぎて口の中が大洪水。

「そろそろか?」

 良い照りの焼き色。見てるだ食欲を掻き立てられる。

「どれどれ」
 俺はそのままパクッと一口頬張る。

「!! うまっ」

 やばい……旨すぎる!

 醤油などなくても、キラービーの蜜が濃厚だから充分旨い、さらに胡椒と生姜が甘さを引き立ててくれる。……キノコだけど。

 ダンジョンに入ってからずっと、何の味付けもしてない肉を食べていたからか、この蜂蜜とのハーモニーは泣けてくるほど旨い。
 ああ~体に沁み渡るぜ。

 ———ん?

 旨そうに肉を頬張る俺をジッと見つめる視線が四つ……。
 紅蓮と雹牙がお座りをして、涎を垂らすも賢く待てをしていた。
 お前達も腹が減ってるよな。

「紅蓮に雹牙めちゃくちゃ旨いぞ! 食べな」

 木で作った皿に肉を並べてやると、尻尾を揺らせながら、幸せそうに食べる二匹。
 うんうん。そうだろうとも。

 さっきチャチャっと風魔法を使って、木の皿を作ってみたのだ。
 これが意外と上手くできた。ついでに箸も作ってやったぜ。
 日本人なら箸は必須だろ。正確には半分だけ日本人だけど。
 俺才能あるかも。

 まさか風魔法を、こんな風な使い方をする事になるとは、思わなかったな。

 食べて少し休憩したら、森ゾーンを一気にクリアしたい所。
 調味料や食材集めはもちろんしながらな。
 久しぶりのダンジョン。
 レベルも上がり感覚を思い出してきたら、少し楽しくなって来た。
 旨い飯を食べたから、心に余裕が出来たってのもある。


★★★



「おおっ! ナッツの木だ」

 この木にはアーモンドみたいな味がする実がなってるんだよな。

「横にはアプルの木もあるじゃねーか!」

 アプルはりんごにそっくりの果実。見た目も味も同じだ。

 ふむ……このダンジョンの中は、前世で体験してきたダンジョンとほぼ同じだな。 
 魔獣もアイテムも全て相違ない。
 
 なら前世で何度も攻略してる分、レベルさえどうにかなれば余裕でクリアできるかもしれない。
 まぁ……このダンジョンが何階層まであるのか未知だから、余裕というのは語弊があるかもな。


 ええと次降りたら……何階層だっけ?
 森ゾーンがこれで連続五回目だから……次は十六階層か!

 なかなか順調に進んでるな。
 ただ森ゾーンの食材集めが楽しくて、ついつい滞在時間が長くなってしまった。
 だってこのわがままボディが欲しがるから。
 今の俺は、勇者だった時の何倍も食い意地が張っているのだ。

 時間の間隔が麻痺してるんだが、今日で何日目だ?
 食事の回数で日にちを考えたら、ダンジョンに入って大体十日くらいって所か。
 正確ではないかもしれないが。

 食べる量よりも運動量の方が圧倒的に多いからか、体も痩せて来た気がする。
 まぁ気持ち程度だけど。

 調味料類や食料もたっぷり調達したので、攻略スピードを上げるか。

「紅蓮、雹牙次の階層に降りるぞ」
『『ワフッ!』』

 俺は下の階層に繋がる階段を、勢い良く駆け降りて行った。

 次はそろそろ違うゾーンに変化してるかもだな。

 なんて考えながら、少し鼻歌を歌い駆け降りた先は一面砂地だった。
 少し潮の香りがする。

「もしかして海ゾーン?」