「いたっ!」

 キラービーだ! 一匹見つけたら近くに百匹はいるからな。
 基本群で行動する奴ら。
 レベルが低い時にコイツに出くわすと、酷い目に遭うんだよな。
 可愛い見た目に反して、意外に攻撃力が高い。
 毒によって死に至る奴もいるくらい、前世でも高ランク冒険者しか手が出せなかった蟲魔獣。

 まぁ見た目はミツバチが拳大の大きさにデカくなっただけなんだが。

 ——ん? 
 
 キラービーが紅蓮達を見て一目散に引き返していく。
 どうやら、俺たちが危険だと察知したみたいだ。
 意外に賢いな。蟲系の魔獣は、全体的に危機管理能力に優れている奴らが多いのも特徴かもな。
 なんせ森ゾーンに入ってから、数回程度しか魔獣に遭遇していない。
 みんな紅蓮達に恐れをなしているんだろう。

 だが折角の獲物を逃すわけにはいかない!
 
「紅蓮、雹牙! キラービーをの後を追いかけてくれ」

『『ワフッ!』』

 ものすごい速さで、必死に反対方向へと逃げていくキラービーを、余裕で後を追いかける二匹。さすがだな。
 キラービーは逃げながら、群れの数を増やしていく。
 あの特徴的な羽音で仲間を集めているのか?

 キラービーの数が増えるのは、黄金の秘宝が近い証拠!
 ククク……それさえ手に入れる事が出来たなら……じゅるり。

 おっと、想像するだけで涎が垂れてきた。

『ワオーン!』

 口元の涎を拭っていると、紅蓮の遠吠えが聞こえる。
 どうやらアジトを突き止めたみたいだな。
 こうしていると、前世で一緒に色々と探索したのを思い出し、楽しくなってくる。

 俺は足に身体強化をかけ、思いっきり走った。
 レベルアップしたおかげで、身体強化にも耐えうる体になってきた。
 安心して身体強化スキルを使える。

 紅蓮達の所に辿り着くと。

 大きな木の下で、二匹がおすわりをして待っていた。
 俺を見つけた途端に、褒めてくれと言わんばかりに、二匹の尻尾がご機嫌に揺れる。
 可愛すぎるだろ。
 俺は「ありがとうな」と言いながら紅蓮と雹牙の頭をわしゃわしゃと撫でた。

 木を見上げると、百メートルほど上にキラービーが集まっている。もう数え切れないほどの数がブンブン飛び回っている。明らかに下にいる俺たちを警戒してるな。

 用があるのは黄金に煌めく蜜壺だから。
 それを頂くお礼として、無闇矢鱈にキラービーを討伐したくない。

 ふむ……どうするか?

 いっそ刺される覚悟で木を登って蜜壺を頂くか? 俺の状態異常耐性スキルのレベルアップにもなるし。
 身体強化していたら、刺されてもさほど痛くないだろう。
 毒が回ればさっき偶然入手した、毒消し草を噛めば大丈夫なはず。

「よっし! 行ってやる。紅蓮、雹牙、ここでちょっと待っててくれ」

 俺は身体中を身体強化をすると、木に指をブッ刺しながら登って行った。
 その姿は傍目から見ると、ゴリラが木を登っているようだろう。

 蜜壺の近くに行くと、案の定キラービーに刺されまくるが、まぁ大丈夫。
 一瞬毒が回り、目がぐらりとしたんだが直ぐに毒消し草を噛み回避した。

「あぐっ!」

 くっそ苦かったけど。
 この後の極上のご褒美を想像したら、このくらいの苦さ何ともなかった。

「よしっ蜜壺をとったぞー!」

 ぴょんっと木から飛び降りると、俺は一目散にこの場を離れた。
 だって黄金の秘宝を取られたキラービーが怒って追いかけてきたから。
 討伐しないのはお礼だ。

「ふぅ……ここまで逃げたら大丈夫か?」

 俺は座り込むと蜜壺に指を入れ蜜をとる。そのまま口に放り込むと……!!

「うんまー!」

 ヤバすぎる! 極上のハチミツだ。こんな旨いのは市販でも手に入らないぞ。
 手にとって紅蓮と雹牙にも舐めさせてやる。

『ワフッ♪』
『くう♪』

「だろー? めっちゃ旨いよな」

 後はこれを使って飯の時間だ。
 作るのはもちろんあれ。




【名前】 如月 アヴェル

【職業】 勇者
【レベル】 30

【体力】 180/300
【魔力】 200/350
【攻撃力】180/200
【素早さ】80/100
 
【スキル】 全属性魔法 Lv2 神眼 Lv1 アイテムボックス Lv2 状態異常耐性 Lv3 身体強化 Lv6

 
 ステータスを確認したら、Lv1だった状態異常耐性がLv3にまで上がっていた。