「ふぃ~っ。やっとセーフティゾーンか」

 ここで少しゆっくり出来るな。
 俺たちは地下十階層まで下りてきた。
 紅蓮(グレン)雹牙(ヒョウガ)のおかげで楽々クリア出来たのもあるが、順調にレベルも上がっている。

 セーフティーゾーンとはダンジョンに数箇所設けられていて、その場所には何故か魔物が出現しないようになっている。
 前世でもこの場所で休憩したり、仮眠をとったりしていた。
 ただ……一つ気になるのは、ダンジョンを離脱できるワープゾーン。転移の魔法陣がない事。
 大体がセーフティーゾーンとペアになっていて、奥に転移の魔法陣があるのだが。

 ———それがない。って事はだ、このダンジョンは全てクリアしないと出れない事になる。
 
「まじか……」

 思わず生唾を飲み込んでしまう。
 何階層まであるかも分からない、未知のダンジョンをクリアって。
 紅蓮と雹牙に再会してなかったら……俺ヤバかった。絶ったいヤバかった。
 全くクリアできる気しないもんな。

 まぁ……あれだ。

 マイナスに考えず前向きに行こう! ダンジョンクリアして家に帰るんだ。
 学校とか急に無断で休んで、大丈夫なのかも心配だし。

『ワフッ!』
「わっ紅蓮! 急に飛びつくなよっ。分かったって腹が減ったんだよな?」

 俺がそう言うと、紅蓮と雹牙のしっぽの振りが激しくなる。

 調味料などが全く無いから、ただ焼くだけなんだがオーク肉も入手できたから、ウサギ肉よりはマシだろう。
 なんせオークは豚肉に味が似ているから。
 
 ……それにしても。
 このダンジョンに入って、どれくらいの時間が経ったんだろう?
 
 よくは分からないが……俺の腹時計がアピールしているので、朝にダンジョンに落ちて……二回目の食事だから今は夜って感じか?

「さてと調理するか」

 炎魔法でオーク肉を焼いて、石の皿に並べていく。
 紅蓮達が肉にがっついているのを横目に、俺も肉にかぶりつく。

「まぁ……ウサギよりはマシか。臭みはあるがな」
 
 ほんと調味料って大事だな。
 味付け無しの肉がこんなにも美味くないなんて……。
 だが食べないよりはマシだから、口っぱいに肉を頬張っていく。

 そういやレベルどれだけ上がったのかな?


【名前】 如月 アヴェル

【職業】 勇者
【レベル】 30

【体力】 180/300
【魔力】 200/350
【攻撃力】180/200
【素早さ】80/100
 
【スキル】 全属性魔法 Lv2 神眼 Lv1 アイテムボックス Lv2 状態異常耐性 Lv1 身体強化 Lv5


「おおっ上がってる!」

 体力も魔力もだいぶ良い感じだよな。
 これでEランク冒険者レベルくらいにはなったか?
 頑張ったかいがあったぜ。この調子で頑張るぜ。

 さてと……腹ごしらえも終わったし、もう一階層降りるか。

 階段を降りて行くと……石の洞窟だった景色が変わっていく。

「十一階層からは森か!」

 下まで降りると、大きな木々が鬱蒼と生い茂り、太陽に似た光が燦々と照りつけて来る。
 ほんとダンジョンって不思議だ。
 さっきまでは薄暗くって、ジメジメしていた洞窟だったのに。
 俺の目の前には、ただっ広い森が広がっている。

 森ゾーンって事は、果実や調味料になりそうなアイテムが入手できそうだ!
 よしっ! これは楽しくなってきたぞ。