とりあえず、武器はパワーアップした。
枝から棒に。
枝の時と同様に、手先から棒までを強化する。
うん鉄バットくらいにはなったな。
これであのウサギちゃんをぶっ飛ばしてホームランでも打ってやろうかな。
などど少し前まで考えていた、甘ちゃんの俺に言ってやりたい。
何て浅はかな考えなんだと!
「アヒッ! ひぅっ!?」
『ぷっ……アベル様! 何やってるの? 変な踊りを踊っているみたいだよ?』
「おっ俺だって好きでやってんじゃねーよ!」
アリスが手で口元を押さえ、笑いを堪えながら俺を見る。
仕方ねーじゃねーか! ホーンラビットの速度が早すぎて、今の俺には目で追うことすら出来ない。
これじゃバットに当てるどころじゃねーじゃん。
困ったぞ。六匹が交互に角を突き出し、俺めがけて飛んでくるもんだから、交わすだけで精一杯。
何なら上手く交わしきれなくて、ところどころ制服がビリビリに破かれていく。
クソッ! デブだから制服も特注で高いんだぞ。
このままじゃ全裸でダンジョンを練り歩く事になってしまう。
やべえ! それだけは避けたい。
どうする? どうするよ俺!?
そんな俺に向かってアリスが自分の目を指差している。
何が言いたいんだ? 目? 目? 目!?
————目か!
「そうか目を強化したら良いんだ!」
『うんうん! やっと気付いた』
アリスよ。分かってるんなら教えてくれても良いんだぞ?
目を強化したら、さっきまで形を捉える事さえ出来なかったのに。
今はクッキリとその姿が見える。
これなら思いっきり打ち込める!
————今だ!
「うおりゃああああっ!」
木の棒がホーンラビットの腹に思いっきりクリーンヒット!
そのまま天井にぶち当たり絶命した。
「よっしゃあああああっ!」
思わずその場でガッツポーズをしてしまう。
『あっアベル様! 気を抜いたらっ』
そんな俺の隙をついて襲ってきたが、今の俺にはスローモーションにしか見えない。
「もう一発! ついでにもいっちょ!」
軽快に花火が打ち上がっていく。
「まっこんなもんだな」
『アベル様! すごーい♪ さすが』
アリスが俺の肩の上に飛んできて、ぴょんぴょん跳ねる。
自分の事のように喜んでくれるのは嬉しい。
《チャララッチャ~♪》
なんだ脳内に機械的な、そう……まるでゲームのレベルアップ音のような音が流れる。
まさかレベルアップしたのか?
前世ではこんな音レベルアップの度に流れなかったが。
この世界ではそうなのか?
【名前】 如月 アヴェル
【職業】 勇者
【レベル】 2
【体力】 30/30
【魔力】 60/60
【攻撃力】20/20
【素早さ】20/20
【スキル】 全属性魔法 Lv 1 神眼 Lv1 アイテムボックス Lv 1 状態異常耐性 Lv1 身体強化 Lv2
おおっ! やっぱりレベルアップしてる。
しかも有難いことに、ステータス値が全回復している。
すげえ。これも前世の世界ではなかった事だ。
体力や魔力と思ったより上がったな。まぁ……これでもまだまだ低いんだが。
身体強化レベルが2に上がったのは嬉しいな。
『レベル上がったみたいだね』
「おう。思っていたよりは良い感じだ。数値も回復したから、多少の魔法なら使っても良さそう」
グゥゥゥゥ~ッ
おっ……なんだ少し緊張が揺らいだからか……腹が減ってきた。
しかし何も持ってない。
アイテムボックスにだって何も収納してない。
誰がダンジョンに潜るなんて考える? 準備なんてしてるわけねぇ。
『こんな時でもお腹が鳴るとか……なんというか。さすがと言うか』
アリスが残念そうな目で俺を見てくる。
そんな目で見ないでくれ。
……俺だって、好きでこんな体になったんじゃねーんだからな!
『じゃあ……あれを食べるしかないかな?』
「……………あれか」
俺は足元に目を向ける。
あれとは……前世でもよく食べた肉。
だけどそれは、ちゃんと店屋が旨い味付けをしてくれたからであって。
『だって仕方ないでしょう? 今はホーンラビットしかいないんだから。これだってラッキーだよ?』
「そうだよな」
なぜアリスがラッキーと言うか。
それは前世のダンジョンなら、討伐した瞬間に魔石だけ残して消滅していたから。
こんな風にそのままの姿で残るなんてのがあり得ない。
「じゃあこいつを焼いて食うか」
味付けしなくてもそれなりに食えるだろ。
——なんて思ってた俺が間違っていた。
この世界の旨い食事に、慣れ親しんだ俺の肥えた舌には、この焼いただけのウサギ肉は、ただ臭いだけでしか無かった。
「ううっ……」
『そんな顔して食べるなら食べなきゃ良いじゃん』
アリスが呆れたようにジト目で俺を見る。
「そうは言ってられないんだよ! 食べないと腹の虫が大合唱して五月蝿いの!」
クソッ!
こんなダンジョン早く出て、旨い飯たらふく食うんだ! 絶対に!
枝から棒に。
枝の時と同様に、手先から棒までを強化する。
うん鉄バットくらいにはなったな。
これであのウサギちゃんをぶっ飛ばしてホームランでも打ってやろうかな。
などど少し前まで考えていた、甘ちゃんの俺に言ってやりたい。
何て浅はかな考えなんだと!
「アヒッ! ひぅっ!?」
『ぷっ……アベル様! 何やってるの? 変な踊りを踊っているみたいだよ?』
「おっ俺だって好きでやってんじゃねーよ!」
アリスが手で口元を押さえ、笑いを堪えながら俺を見る。
仕方ねーじゃねーか! ホーンラビットの速度が早すぎて、今の俺には目で追うことすら出来ない。
これじゃバットに当てるどころじゃねーじゃん。
困ったぞ。六匹が交互に角を突き出し、俺めがけて飛んでくるもんだから、交わすだけで精一杯。
何なら上手く交わしきれなくて、ところどころ制服がビリビリに破かれていく。
クソッ! デブだから制服も特注で高いんだぞ。
このままじゃ全裸でダンジョンを練り歩く事になってしまう。
やべえ! それだけは避けたい。
どうする? どうするよ俺!?
そんな俺に向かってアリスが自分の目を指差している。
何が言いたいんだ? 目? 目? 目!?
————目か!
「そうか目を強化したら良いんだ!」
『うんうん! やっと気付いた』
アリスよ。分かってるんなら教えてくれても良いんだぞ?
目を強化したら、さっきまで形を捉える事さえ出来なかったのに。
今はクッキリとその姿が見える。
これなら思いっきり打ち込める!
————今だ!
「うおりゃああああっ!」
木の棒がホーンラビットの腹に思いっきりクリーンヒット!
そのまま天井にぶち当たり絶命した。
「よっしゃあああああっ!」
思わずその場でガッツポーズをしてしまう。
『あっアベル様! 気を抜いたらっ』
そんな俺の隙をついて襲ってきたが、今の俺にはスローモーションにしか見えない。
「もう一発! ついでにもいっちょ!」
軽快に花火が打ち上がっていく。
「まっこんなもんだな」
『アベル様! すごーい♪ さすが』
アリスが俺の肩の上に飛んできて、ぴょんぴょん跳ねる。
自分の事のように喜んでくれるのは嬉しい。
《チャララッチャ~♪》
なんだ脳内に機械的な、そう……まるでゲームのレベルアップ音のような音が流れる。
まさかレベルアップしたのか?
前世ではこんな音レベルアップの度に流れなかったが。
この世界ではそうなのか?
【名前】 如月 アヴェル
【職業】 勇者
【レベル】 2
【体力】 30/30
【魔力】 60/60
【攻撃力】20/20
【素早さ】20/20
【スキル】 全属性魔法 Lv 1 神眼 Lv1 アイテムボックス Lv 1 状態異常耐性 Lv1 身体強化 Lv2
おおっ! やっぱりレベルアップしてる。
しかも有難いことに、ステータス値が全回復している。
すげえ。これも前世の世界ではなかった事だ。
体力や魔力と思ったより上がったな。まぁ……これでもまだまだ低いんだが。
身体強化レベルが2に上がったのは嬉しいな。
『レベル上がったみたいだね』
「おう。思っていたよりは良い感じだ。数値も回復したから、多少の魔法なら使っても良さそう」
グゥゥゥゥ~ッ
おっ……なんだ少し緊張が揺らいだからか……腹が減ってきた。
しかし何も持ってない。
アイテムボックスにだって何も収納してない。
誰がダンジョンに潜るなんて考える? 準備なんてしてるわけねぇ。
『こんな時でもお腹が鳴るとか……なんというか。さすがと言うか』
アリスが残念そうな目で俺を見てくる。
そんな目で見ないでくれ。
……俺だって、好きでこんな体になったんじゃねーんだからな!
『じゃあ……あれを食べるしかないかな?』
「……………あれか」
俺は足元に目を向ける。
あれとは……前世でもよく食べた肉。
だけどそれは、ちゃんと店屋が旨い味付けをしてくれたからであって。
『だって仕方ないでしょう? 今はホーンラビットしかいないんだから。これだってラッキーだよ?』
「そうだよな」
なぜアリスがラッキーと言うか。
それは前世のダンジョンなら、討伐した瞬間に魔石だけ残して消滅していたから。
こんな風にそのままの姿で残るなんてのがあり得ない。
「じゃあこいつを焼いて食うか」
味付けしなくてもそれなりに食えるだろ。
——なんて思ってた俺が間違っていた。
この世界の旨い食事に、慣れ親しんだ俺の肥えた舌には、この焼いただけのウサギ肉は、ただ臭いだけでしか無かった。
「ううっ……」
『そんな顔して食べるなら食べなきゃ良いじゃん』
アリスが呆れたようにジト目で俺を見る。
「そうは言ってられないんだよ! 食べないと腹の虫が大合唱して五月蝿いの!」
クソッ!
こんなダンジョン早く出て、旨い飯たらふく食うんだ! 絶対に!