「白豚っお前! どっどこにいたんだ!?」
「急に現れるから、びっくりするだろ?!」

 葛井達が突然姿を現した俺とアリスを見て、目をひんむき驚いている。
 流石にちょっと悪い事をしたな。
 もう少し離れた場所で、気配遮断魔法を解いたら良かった。
 この状況はいきなり透明人間が姿を現したみたいだ。

「お前らがあの男に夢中で気付かなかっただけだろ? ずっと近くにいたぜ? なぁアリス」
「えっ? うん。いたよー」

 そう言ってアリスがニコリと愛想笑いをする。
「「「へあっ!?」」」

 そうなると葛井達は、だらしない顔でアリスをポーっと見ていて、なんの言葉も頭に入ってないようで。
 もう俺達が急に現れた事なんて、どっかに行ったみたいだ。

 脳内お花畑の三人が俺の前にいる。
 アリスの力すげえな。魅了魔法とか使ってるんじゃ……。

「あのね? 魅了魔法なんて使ってないよ? アベル様に効果があるなら使いたいんだけど」

 アリスが微笑み返事を返してくれるが……コイツ俺の心を読んだのか?

「心を読んでないからね? そんなスキル持ってないし」
「えっまた!?」
 やっぱり心を読めている。
「……前世の時からアベル様は、分かり易く顔に出るからね」

 アリスが少し残念そうに俺を見てくる。分かり易くて悪かったな。

「ゴホン! それでだ、葛井。その奴隷紋を消してやるから服を脱げ。

「へっなっおまっ!? 奴隷紋って何だよ!?」
「その腹に入ってる模様のことだよ。それを入れられると、奴隷のように言う事を聞かないといけないから、奴隷紋って言うんだよ。イヤだからって自由に死ぬことさえできない」

 その説明を聞いた、葛井達の顔が歪む。

「消して貰えなかったら……一生奴隷」
「ゴクッ」
「……死ぬよりキツい」

 葛井が慌てて上着を脱ぐと、俺に縋り付いてきた。

「ははっ早く! こんな物騒な模様消してくれ! 頼む!」
「分かったから! ちょっと落ち着けって! 少し俺から離れて立ってくれ」

 上半身裸の男に抱きつかれて喜ぶ趣味はない。

「消すぞ」

 俺は葛井の腹の模様に向けて魔力を放った。
 奴隷紋は魔力に反応し光り、ジジジッっと小さな音をたて消失した。

「…………きっ消えた! 模様が消えたぁぁぁぁぁ!」

「すげえ……」
「本当に消した……」

 歓喜の声をあげて喜ぶ葛井を、呆然と見ていた佐田と右崎。
 急にハッとしたのか、二人一緒に裸になると俺に抱きつかんばかりに消してくれと縋って来た。

「頼むから! そんな近くに来なくても、大丈夫だ! 俺から離れろ」
「本当だよ! 裸でアベル様にくっつかないで」

 さらには、アリスまでが後ろから抱き付いてきた。
 前から裸の男達、後ろから美少女。前門の虎後門の狼てきな。

 何だこのカオスな状況は、とりあえずみんな離れてくれー!


「ありがとう……ううっ。お前のこといっぱい虐めて悪かった」
「ほんどに……すまねぇ」
「良い奴だな……うう」

 上半人裸の男達が、男泣きしながら頭を下げてきた。

 まぁ少しでも反省したんならヨシとするか。

「今日のことは絶対に誰にも言うなよ?」
「ももっもちろんだ!」

 葛井が頭を大きく上下さえる。

「もし言ったら……俺が奴隷紋を入れるからな?」


「「「ヒィッ!」」」


 

 葛井達は上半身裸のまま何度も俺に礼を言って帰っていった。

 服早く着ねーと、変質者に間違えられても知らねーぞ。