「そいつはどんな奴なんだ?」

「まぁ……見た目はキザったらしい感じだな。でも何か得体の知れない怖さがある。今のお前(白豚)見たいにな」

 何だよ。得体の知れない怖さって。
 
 右崎の奴が松葉杖をつきながら、俺の横をひょこひょこと歩き文句混じりに教えてくれる。
 コイツら二人も奴隷紋を入れられたみたいだな。

 葛井と同じように文句を言いいながらも、得体の知れない怖さに怯えている。

 先頭を歩いていた葛井が急に立ち止まった。

「どうしたんだ?」
「この先の公園でヤツはいる。昨日この公園で出会ったから」
「昨日居たからって、今日もいるとは限らないんじゃ?」
「…………約束したから。いる」
「約束?」

 葛井が唇を噛み締め、悔しそうに俯く。
 どうやら金を持って来いと、脅されているらしい。
 いつも自分がしてる事が返って来ただけだが、プライドが許せねえんだろう。
 俺からすると自業自得ってヤツだ。

「俺たち三人で先に行って来るから、お前は通行人のようにして後から来てくれ」
「……分かったよ」

 鬱蒼とした木々に囲まれた公園の入り口に、葛井達の姿が消えた後。
 入ろうとして俺はある事に気づいた。
 この公園一体にサーチがかけられている。
 怪しい動きをすればそいつに一目瞭然って訳か。

 これは……やはり俺と同じで転生者だ。
 アリス以外にも転生者が居たなんて……偶然にしては……う~ん。
 アリスは必然的に俺の後を追って転生して来たんだが、そいつも同じだとは考えにくい。
 なら……偶然か。

 とりあえず、気配を消さないとだな。
 気配を消すのは低ランク魔法だし、魔力もほとんど使わないので余裕だ。

 俺は気配を0にして堂々と公園に入った。もう俺の姿は誰にも見えてない筈だからな。

 少し歩くと公園のベンチに座っている男がいる。
 その前に葛井達三人が立っている。

「あれか……!?」

 よし、近くまで行って会話を盗み聞きしてやるか………って!!

「うおっ!?」

 気配を全て消している筈なのに、後ろから肩をポンと叩かれる。

「アベル様? こんな人気のない公園に私を連れてきて、どうするつもり?」

 振り返るとアリスがいつもの様にへにゃりと笑い立っていた。

「ああっアリス!? おまっなんで!? 俺は今っ気配を消してっ!?」
「そんなの! 私の神聖魔法(ストーキング)にかかれば全く意味ないわ」

 おまっ……神聖魔法の使い方、絶対に間違えてる。
 一体いつからついて来ていたんだろう、怖くて聞けない。

「それで? 気配まで消してアベル様は何をしようと?」

 アリスが不思議そうに聞いてきた。

「……ああ。葛井達に奴隷紋を入れた奴が居てな? そいつは俺たちと同じで転生者じゃないかなと思って……見に来たんだよ」
「ふうん。そうなんだ。じゃあ私も一緒に見ようかな。ふふ」

 返事からして、アリスは大して興味がないようだな。

 二人で葛井の所まで近づくと

「あっ! コイツ知ってる!」

 アリスがそう言って謎の男を指差した。
 
 えっ? 知り合いなの?