「ん? 社交はばっちりだとラドフォード公爵にうかがったのですが、ダンスはできるんですか?」

 エリザは、この国の本を読んで学んだ社交風景を思い出す。

 見目や地位共に完璧なジークハルトは、はたして貴族が必須とされているダンスは習得できているのだろうか。

 すると、彼が泣きそうだった顔をもとに戻した。

「はい、できますよ」

 当たり前でしょうという雰囲気で応えた彼に対して、エリザは、ルディオが黒歴史でも思い出したみたいな顔で手を組むのを見た。

「あ、そうなんですか」

 つまりルディオが女役をこなして、ダンスを習得させたのかな……。

 幼馴染が哀れ。周りのみんながルディオに強要した光景が、悟りのような閃きと共に起こったのだった。