舞踏会というと、ルディオがこぼしていた愚痴に含まれていた話題だ。参加を嫌がって引っ張って連れていったり、フォローが大変なのに卒倒したり。

 そう思い返していると、ラドフォード公爵が「そうだ」と言った。

「ジークには、今回ももちろん出席してもらうのだが、この三人の婚約者候補には今度こそ挨拶してもらいたいのだ」

 そう言って見せられたのは、三人の少女の姿絵だった。

 セバスチャンの説明によると、右から順に侯爵令嬢、大臣の娘、古い歴史を持つ伯爵令嬢と、家柄も容姿も彼に相応しい少女達だとか。

 貴族にとって、婚約を抜きにしても家と付き合いがあるに越したことはない。

「話してみて、好感を覚える可能性だってありますもんね」

 どの子も美人だと思って、エリザは姿絵を興味深く見つめる。

「そうだね。私も息子の恋の可能性の幅を狭めたくない」

 彼自身、息子が男性との恋愛を望んでいるわけではないと聞いたので、余計にその思いが強いのだろう。