それを見たモニカが小さく舌打ちするのを、エリザは見た。

「モ、モモモモニカ、どうして女の子がこんなところに!?」
「――急きょ依頼した、馬師レオンの娘でございますわ」

 若い主人のうろたえっぷりにも動じず、モニカは淡々と答えた。

 少年の恰好をした少女は、どこか気に入らないようにジークハルトを見た。しかし怯えた彼と目が合うなり、頬を染めて手を後ろに回した。

 恥じらう姿も少年にしか思えなかった。

 エリザは、大変クオリティが高い男装だと思った。しかしジークハルトは、彼女を一瞬で女性と見破ったうえで今も後退し続けている。

 ――解せない。

 正直、エリザはそう思った。

(どうして彼女のことは女性だと分かるのに、私の性別を気付かないのかな?)

 ジークハルトが、頼りにするように背後に回る。それをエリザは横目に見つめていた。

 師匠から教えられた戦闘スタイルで、接近戦の際に胸が揺れないよう少し抑える肌気は着ている。しかし、それ以外は男の服を着ているだけに過ぎない。