他の屋敷を見かける限り、厳重な警備がされていた。しかし迎えた私兵達以外は、屋敷の景観が崩れるような護衛耐性も見られなかった。

「この屋敷にも大きな図書室がある。そうだな、必要があって出国の予定を立てているというのであれば、次の治療係を探す間だけでも担当してくれないか?」
「次の、治療係が見付かるまで……」

 無理に断ると、目の前に立ちはだかる彼や『殿下』といった権力図が怖い。

 短期間というのなら、悪い話ではない気もしてきた。

「……それまで、毎度の魔法使い証明書もなしに本が好きに選べる?」
「私のところの魔法使いだと分かれば、王都の国立、公共施設に問わず好きなだけ閲覧できる。必要経費はつど支払うし、購入してくれも構わない」
「はぁ。その、有り難いお話過ぎて怖いのですが……」

 本は高価なものだ。売って、その分を次にあてれば彼の懐からそんなに出さなくても済むのかな、とちらりと考えてしまう。