そう告げると、ジークハルトが少し驚いたようにエリザを見た。

 どうしてそんな反応をされるのか、彼女は不思議に思ってきょとんとする。

「あっ、いや、なんでも」

 歯切れ悪く言いなが目をそらしたジークハルトが、ティーカップの中を見つめて悩むような間を置いた。

「女性恐怖症になった原因、で思い当たることと言えば……」

 やがて、彼が困ったように秀麗な眉を寄せて話し始めた。

 貴族が早々に婚約者を決めてしまうことは珍しくない。公爵家嫡男である彼も、物心ついた頃から、身分と歳が合う令嬢と顔会わせの機会をよく設けられていた。

 ジークハルトの美貌は、幼い頃から異性を惹きつけまくったようだ。

 令嬢達の場に出されるたび、「結婚して欲しいですわ!」「わたくしの夫になってくださいませ!」と熱烈なアピール合戦が繰り広げられた。親の目がなくなると詰めてきて目の前でバトルされるものだから、彼は何度も倒れたという。

(それ、本当に四歳から七歳の子供なの?)

 話しを聞きながら、エリザはそう思ったりした。