「その……好きって、本当なんですか?」
「もちろんですよ。初めは女性だと気づかない状態で、俺はもうあなたしか見えないんだなって思って」

 ジークハルトが少し腕を緩めて、エリザと目を合わせてくる。

「えっ、気付く前に?」
「はい。そうしたら、あなたが女性だと気付いて。結婚もできるし悩まなくてもいいのかと」

 いや、ちょっとは悩もう。エリザはそう思った。

「私、異国からきた結構怪しい魔法使いだと思うんですけど……ほら、呪いの効果が出ない特殊体質持ちで、魔物を滅する以外に魔法が使えないとか……」

 勇者と聖女の娘、というのかフィサリウスとの間の秘密にすることにした。

 そうすると魔術師の話をしなくてはならなくなる。ジークハルトは魔法使いではないので、ここでは混乱させてしまうだけだろう。

 するとジークハルトがくすりと笑って、エリザの頬を手の甲で撫でた。

「こうして俺の上に素直に座ってくれている女の子が、警戒しなければならないあやしい人物とは思えませんよ。気持ちを知ったうえで不通に接してくれたのも、チャンスがあると取ってもいいんですよね?」