なんとなく苦手意識を覚えて手を少し振ってみたが、握られた手は外れてくれなかった。

「あ、の、一度会ってみるだけですからね。私はこの手の専門家ではありませんので、決してっ、決して! 多大な期待をなさらないでください」
「分かっているよ。ありがとう。とにかく一度診察して欲しい」
「はぁ、面談、になると思いますけどね」

 ラドフォード公爵は話しを聞いているのかいないのか、始終満足げに「うん、うん」とエリザの手を上下に振って「ありがとう」と言っていた。

 それから、公爵家嫡男ジークハルトと顔合わせをする日程が話し合われた。

 エリザのことは、噂されている〝赤い魔法使いは男性〟で通すことになった。

(蕁麻疹が出るくらいたから、すぐバレると思うけどな)

 速攻で帰ることになるのを予想しながら、屋敷の者達にも全員口を合わせてもらうことが計画立てられた。

 そして嫡男とラドフォード公爵のスケジュールから、面会の日時が決まったのだった。