(殿下が言っていた『呪い』って……結果として術者以外の女性に対して症状が出て、近づけないし触れなくなるもの、だよね……?)

『たとえば……――自分だけを見て欲しいと思って』

 フィサリウスはそう言っていた。

 まだ何も知らない女の子が、憧れて、自分を元気付けるみたいに『おまじない』をした。

(ジークハルト様と話していた彼女を見るに……全然、そんな感じはなかった)

 だから、まったく、エリザだって気付きもしなくて。

 フィサリウスによって『呪い』はみんなに共有されていたから、セバスチャンもメイドたちも固まっていた。彼女をじっと注視しているのは、彼の推測が正しいのだと裏付けが取れたからだろう。

 ――クリスティーナは、本当に覚えていないのだ。

 そうじゃなければ、父のロッカス伯爵に縁談相手は【赤い魔法使い】も素敵だなんて語ったりしないだろう。

(そう、だよね。幼い頃に思い付きでやった『まじない』なんて、覚えているはずもない、よね……)