その翌日。

「う、わぁ……」

 エリザは、そこが個人の家だと思えず立ち竦んだ。

 大理石の階段と、埃一つない磨き上げられた床。豪華なシャンデリアが高い天井を彩り、まるで一つの城のようだ。

 真っ黒い色に身を包んだ自分が訪れるのは、場違いだと感じる。

 玄関ホールへ通されると、そこには燕尾服に身を包んだ高齢の執事が待っていた。

「ようこそお越しくださいました。私は屋敷を任されております執事のセバスチャンと申します。たしかに可愛らしい方ですね。先に話は聞いておりましたが、【赤い魔法使い】の『エリオ』が女性だったとは驚きました」

 彼はフードを下ろしたエリザを見ると、にっこり微笑んだ。

「こちらへどうぞ」

 促されてしまい、共に足を前へと進める。

 豪勢な屋敷の中にいるという現状に緊張した。変に見られてはいないだろうかと、こちらに向かってお辞儀をするメイド達が気になってしまう。

 そわそわと落ち着かないまま、広々とした客間に通された。