「ロベルさんは私の顔、名前、なぜあそこにいたのかわかりますか。」

 それは知りたい。だったわからないのだから。だからこそ答えた。

「わからない。言えることは眠る直前に視界が乱れて、それから突然あなたが現れた。いや、声が聞こえただけだったか。でも、たったそれだけだ。」

「そうなんですね。」

「そういえば、ここってどこだ。少しは移動したのか。」

 土魔法で自分の立っている場所を盛り上げて見渡せば、帰る方向もわかるだろ。」

「いいえ。してませんよ。」

「は!?」

 え、あの魔物の群れがいて移動してないってどう言うことだよ。

「〈結界〉を貼ってますからね。」

「〈結界〉で?」

 〈結界〉にこんな強力な効果は...。
 あっ。聖魔法か。

「聖職者だったのか。」

「そうですよ。よく分かりましたね。」

「気づきますよ。〈結界〉はこんなに大きく出来ないですからね。」

「?大きく出来ないのはそうですけど、普通はこんなに強力に出来ないはずですが。」

「そう?このくらいならできる気がするけど。んー。やっぱ微妙かも。」

「?」

「?」

 そんなに変なこと言ったかな。できるか微妙だったから素直に言っただけだけど。

「そういえば、魔物はどうなってるの。結界の周りに大量にいるってことはないよね。」

「それは分かりません。勇者様ならできるかもしれませんが。」

「勇者ね。」

 そういえば、そんなのもいたな。虹属性の魔法は特に気になるな。とか思ってたっけ。

「じゃあ、なるべく逃げながら帰るしかないのか。」

「そうなりますね。」

「君のいた教会までは流石に送れないと思うけど。まあ、機会があれば訪れるよ。」

「そうですか。では、結界を解除しますよ。」

「わかった。」

 また、あの地獄があるのか。あれ?ウルフとかと戦ってたときかなり全力で走ってたよな。

「じゃあ、俺に捕まっとけよ。」

「は、はい!?」

「行くぞ!」

「!? キャー!」

 流石に速すぎたか。まあ、魔物との距離を離すにはこうするしかないから。


〜〜〜〜〜


「よし、取り敢えず森から出たぞ。」

「うぅ。えぇ。そうですかぁ。」

「大丈夫?」

「気持ち悪いですぅ。」

 気持ち悪い?ああ、乗り物酔いみたいな感じになっているのか。

「あ、いや。配慮が足りなくてごめんね。」

「?」

「まあ、この後は自分で帰れそうか?」

「うぅん?無理な気がする。」

「じゃあ、1番近くの街までは連れてってやるよ。」

 流石にもう夕焼けだからな。帰るか宿に泊まるかどちらかはしないと洒落にならない。

「ありがとう。」


〜〜〜〜〜


 もうすっかり夜になった。まあ、森から距離があったのだから仕方がない。

「もう夜だけど街に着いたぞ。」

「住んでた街じゃない。ここはどこなの。」

「ここはメルヘイル。クライエット公爵領だよ。」

「そう。じゃあ、馬車で移動しないと。」

「いやいや。今は無理だからね。お金はあげるから。」

 ん〜。どんくらいあげればいいかな。

「じゃあ、はい。」

「小銀貨10枚!?」

 んー。多すぎるかな?まあ、わざとだけど。どうせ小銀貨5枚くらいは残るくらい渡してるからね。

「こんなに貰えないですよ!」

「まあまあ。自分で稼いだ金だし、全然余ってるからいいよ。」

「それでも。」

「何かあった時のために少し多めには渡してるけどね。」

「そ、それなら。」

 よし。うまく言いくるめた。


〜〜〜〜〜


「いや〜。昨日突然馬がいなくなったものでな。ちょっと運行ができねえんだよ。嬢ちゃんも知っとるだろ、いろんな人や物が突然現れたり、いなくなったりしたの。本当は仕事したいもんだけどね。」