「さぁ、ご飯食べなさい。」と戸惑う夏都に座るように促す。

 温かいご飯を食べるのは何年ぶりだろう。
 味噌汁を1口飲んだ瞬間、涙がポロポロ出た。
 和泉もその姿を見て実家でひどい仕打ちを受けてたのかと思うとやるせない気持ちになった。

「今は落ち着くまで何もしなくていいからね。」
 和泉は夏都の頭を撫でながらなだめた。

 お母さん……。
 泣きながら和泉に抱きついた。
 こんなに暖かい食事は、人の温もりにゆっくり触れることが出来たのは何年ぶりだったのか。
 実家にいた頃は学業と家事で忙しくて何かを考える余裕もなかった。
 辛うじて高校は卒業したけど誰も祝ってくれなくて寂しかった。

「夏都ちゃん、よく頑張ったね。」
 和泉はそのまま夏都を抱きしめた。
 夏都はわんわん泣いた。

 ※※※※※
「いきなり見苦しいところを見せてごめんなさい」
「いいのよ。落ち着いてよかったわ。」

 〝共有花嫁〟という形で娘の生まれ変わりが来てくれた喜びとその娘に酷いことをした一家に一矢報いたかった。

「夏都ちゃん、話したくなったらいつでもいいなさい。私が力になるから。」

 夏都は黙って泉の言うことに頷く。
 初対面だけどこの人は信用出来ると思ってしまう。
 食事が終わったあと和泉と共に病院に行き、傷やアザの診断書を取った。

 傷やアザはあまりにも酷く目も当てられない状態であった。
 散々殴られて、なじられていたので心療内科にもカウンセリングを受けると夏都は過呼吸を起こしたり涙をボロボロこぼしたりとトラウマを植え付けられてたのが分かる。

 待合室で診断結果を待ってる間も和泉は夏都の背中を摩ったり「大丈夫よ。」となだめたりしてた。

 夏都も心の中で「お母さんもこんなことしてくれてたな。」と思い出した。

 和泉は実は夏都の母親にこっそり連絡を取っておりなにかと相談に乗っていた。
 診断書をその母親に送るか否かも迷った。
 でも、この母親は夏都を愛しているのだから本当のことを教えようと誓った。