『宏明くん、申し訳ないけど泰明くんに変わってくれへんか?俺の方から説得してみるわ。』
 「わかった」

 宏明は無言で泰明に携帯電話を手渡した。

 「はい。」
 泰明は宏明の携帯電話を受けとり一声かける。

 『泰明くんか?』
 「うん……そうだけど?」
 『なーちゃんが大切なのわかるけど束縛がすぎるで?』
 「……わかったよ。今回だけだよ。でも次からは俺を同伴すること。」

 その言葉に夏都の表情はパアと明るくなった。

 「わーい!お茶会楽しみー花嫁友達ができると思うとワクワクする」

 夏都がはしゃいでいる中、シャニが寝ぼけ眼でリビングに来た。

 『ままーずいぶん楽しそうだけどどうしたの?』
 「シャニくん、おはよう。ママ今度お茶会に行く予定なの。」
 『え?まじ?俺も行きたい』
 「うん!行こう!行こう」

 そんな夏都とシャニに和貴は苦笑いを浮かべる。

 『あー……盛り上がっている所水さすようで申し訳あらへんけど……』

 夏都とシャニはキョトン顔だ。

 『申し訳ないけど、お茶会はあくまで“花嫁”だけで旦那やまもり猫は行けへん決まりなんや。動物が苦手な人もいるからそれを配慮してな。』

 「シャニくんに襟巻きのふりをしてもらうのは」

 『あかん。』
 「じゃあ、赤ちゃんを抱っこするためのスリングにくるんで連れて行くのは?」
 『あかん。』
 「どうしたらシャニくんを連れていけるの?」
 『とにかくあかんものはあかん。猫アレルギーの人だっているし花嫁、みんながみんなまもり猫をそばにおいてるとは限らへん。』

 「そか……」

 意気消沈してる夏都に和貴は『ひとつ提案してもええか?』と呼びかけた。

 「なに?」
 『なーちゃんがお茶会に行っている間、シャニは俺が預かる。宏明くんたちになんかしたらかなわんしシャニも怒られるのは嫌やろうからな。』

 『怒られるのはいやだ。ままがお茶会に行っている間はボスのところで大人しくしてる。』
 『ええ子や。さすがはシャニやな。あとなーちゃんには会場の近くに温泉付きのホテルを手配している。前日東京に行けるように飛行機のチケットも手配したから来週は俺のオフィスに来てな。』
 
 「……温泉……わかった。シャニくんをお願いね。」

 和貴は『決まりやな。ほな、斎藤さんには俺から話を通しておくで。』と笑い電話を切った。
 
 そして1週間後、和貴が手配した飛行機のチケットを持たされ単身東京へ行くことになった。

 前日はゆっくりと温泉で日頃の疲れを癒し、美味しい晩御飯を食べた。