「まだ、状況は飲み込めてないみたいだね。大丈夫。徐々に慣れてくるといいからね。気持ちが落ち着いたら父さんと母さんに元気になった姿を見せてあげてね。」

 正明は優しい笑顔を向けた。
「なんで?」と理由を尋ねると先程まで優しい笑顔の正明はすーと真顔になった。

「父さんと母さんは君を心配してたんだ。」
「なんで?私は顔も知らないんですよ?なんで血の繋がりもない私を?」
「ごめんね。今は言えない。」
 先程の笑顔に戻り「今はゆっくりおやすみ。」と先程のような優し笑顔に戻った。

 ひとりになって考えてみるとあの3人は夏都のことを気にかけてくれてた。
 暖かく安心出来る。
 初対面なのに不思議な感覚。
 覚えてないけど小さい頃にあったのかもしれない。

 そう考えてるうち、眠りに落ちた。

 昔、自分を庇ってくれた女の子のこと。
 残してしまった妹たちのこと。
 味方でいてくれたおかあさんやお手伝いのおばさん。
 なんだか一言もないまま実家を出てしまった。

 翌日目を覚ますともう8時を回っていた。

「はっ!?まずい」
 台所まで走ると、見た目は妙齢のきれいな女性が優しい笑顔で「夏都ちゃん?おはよう」と声をかけてきた。

「あなたは?」
「びっくりさせてごめんなさいね。私は正明たちの母の和泉です。」

 夏都は「えっ?!」ど素っ頓狂な声を出してしまった。
 目の前にいる女性はどう見ても成人した子どもがいる年齢には見えない。
 百歩譲っても3人の姉なら分かるくらい見た目が若くて美しい女性だ。