「うん。」
 「そんななーちゃんにええこと教えたる。」

 和貴は右脚を踏み台に置くと、足首部分を両手で掴んだ。
 異様に細く、夏都も驚きを隠せず愕然としていると和貴は何食わぬ顔で義足を外した。

 「これは?事故でそうなったの?」
 「うんにゃ。骨肉腫や。膝がぎょうさん痛くて病院に行ったら案の定。俺はこの通り片足がないんや。でもそれに負けたくないから闘病中に起業したんや。俺のいいたいことわかる?」
 夏都は和貴の問に無言で頷いた。

 「人間、死んだ気になれば何でもできるんや。諦めなければ可能性は無限大。だからなーちゃんも負けるな!」
 
 和貴は笑顔で自分の義足を見せながら夏都を励ました。
 宏明は別室で二人のやり取りを聞いていた。

 宏明の目に涙がうっすらと滲んでいる。
 いつか和貴がいなくなるのでは?と不安に押しつぶされていた。
 
 「やっぱ、和貴はすげぇよ。俺だったら同じ立場に立ったら死んだほうがマシって思うかも……」

 宏明も夏都の決意を聞けて安心した。
 そのことに尽きるものだ。

 「引き渡しの儀式も来月末になるな。」

 和貴の知り合いの僧、光明が寺を式場として貸し出すと申し出てくれたのだ。
 宏明も夏都に心を開きつつあった。