「俺さ、兄貴たちが触れた女は絶対嫌だと思っていた。だからなつを共有花嫁にすることは抵抗があったんだ。」
 「うん……」
 「だけど…………なぜかお前のこと嫌じゃないだよな。」

 宏明は自分でもわからない感情を夏都に話した。
 いつの間にかふたりとも寝ていた。
 本当に何もしなかった。

 ――――――――
 6日目の朝。
 起きてみると、宏明が夏都を後ろから抱きしめている状態だった。
 宏明の本音を知ることができたのでそれはそれで嬉しいものだ。

 「あとでかずくんに相談してみようかな……」

 宏明は子どものようにスヤスヤと寝息を立てていた。
 普段つんけんしているのに眠っている時は子どものように可愛くて無防備だ。

 夏都は「シャニと一緒だな……」と思いながら宏明の髪を優しくなでた。

 夏都は宏明にメモを残した。

 買い出しついでに和くんのところに行ってきます。
 夕方までには戻ります。

 宏明もそのメモをみたら怒るだろう。
 正明や泰明みたいに表面には出ないけど宏明もかなり過保護だ。

 和貴のオフィスにて……。

 「いきなり訪ねてごめんなさい。」
 「ええよ。気にせんといてや。なんかあったら話聞く言うたのは俺やからな」

 和貴は笑いをこらえる。

 「実は……ヒロ兄ちゃんのことで……」
 「あぁ、宏明くんね。中学の時からの親友だからなー」

 宏明と過ごした夜のことを和貴に話した。

 「それは分かりづらいけど、宏明くんはなーちゃんに心を開いた証拠やで」
 
 「そうなの?」
 「せやで。宏明くんは自分の話はせーへんからなー。泰明くんはいい意味で何考えてるかわからへんけどな。」

 「泰明くんほどではあらへんけど宏明くんは案外分かりやすいで」
 
 しばらくすると夏都の携帯電話が鳴る。
 ディスプレイを見ると「宏兄ちゃん」と表記がある。
 恐る恐る出てみると……。

 『なつー!お前はどこほっつき歩いてるだ!』
 「ごめんなさい。そんなに怒らないで」
 『怒るわ!今どこにいるんだ!?』
 「宏明くん落ち着けや。俺のオフィスにおるで。」
 『和貴?お前のとこにいるの?』
 「せや。だからあまり強く言わんでやって……な?」
 『わーたよ。調子狂うな。』

 電話が切れたあと和貴は夏都の方を見る。