5日目の夜。
 ふたりともそれぞれ寝る準備を済ませた時、宏明はどこか浮かない表情だった。

 「どうしたの?」
 夏都は宏明のことが気になり声を掛ける。

 「あのさ……聞きたいことがあるんだけど、なつは兄貴たちと過ごした時は寝るときとかどうしてた?」

 夏都は宏明の問にぽかんとした。

 「いや、変なこと聞いてごめん。たまには床をともにしないか?と思って。」

 宏明も夫のひとりだ。
 拒む理由はどこにもない。こういう時は和貴の言葉を思い出す。

 『宏明くんも不器用やけどええやつや。安心して身を任せて大丈夫や。』

 「うん。ヒロ兄ちゃんが嫌じゃなければ……」
 「あぁ……」

 「シャニは部屋に入れといたほうがいいかな?」
 『え?俺も一緒にいたい。』
 「そうだな。悪いけどなつを少しの間だけ借りるけどいいか?」

 宏明はシャニの頭を優しくなでた。
 シャニは『わかったよ』と言わんばかりに夏都の寝室に入った。

 改めて宏明の寝室に入ってみると荷物は少なく、大学のテキストも手垢まみれだ。
 勉強熱心な性格が部屋にも出ていた。
 ベッドも泰明の寝室ほどではないけどかなり広かった。

 宏明もいつの間にかベッドに横たわっている。

 「何もしねーから早く来いよ。」
 「うん」
 夏都は宏明の隣にそのまま横たわる。
 その姿がなんともぎこちない。
 宏明はそんな夏都を強く抱きしめた。

 「ヒロ兄ちゃん?痛い……もう少し優しく……ね……」
 「ごめん。一晩だけでもこうさせて。」
 「うん。」
 「俺の話をしていいか?」
 「いいよ……聞かせて。ヒロ兄ちゃん自分の話しないじゃん」

 宏明が落ち着いたときにこんな話を聞いた。
 容姿は上二人には叶わないから勉強や部活に情熱を注いだこと。
 和貴の助けで社交術を身に着けたこと。
 そして……。