「あなた達のことは調べさせて頂きました。随分この子に酷いことをしたようですね。」

 優しげだけどどこか冷たい口調だ。

「夏都ちゃん、はじめまして。僕は中野正明。金色の瞳の子は泰明、紫色の瞳の子は宏明。2人とも弟だ。」
「……」
 夏都はコクリと無言で頷いた。
「君の意志を確認したい。このままここで奴隷のように扱われるか俺らの花嫁になるか選んで欲しい。」
 男こと正明は夏都に優しく語りかける。

「私は、あなたたちの花嫁になります!こんな生活もう嫌!」
 夏都は泣きながら助けを求めた。

「決まりだね。宏明!」
「OK」
 宏明は夏都を抱えると指笛で蝙蝠を呼び集めそのまま瞬間移動した。

 いきなりの事だった為、状況が上手く飲み込めない。

「元気になって落ち着いたら父さんと母さんに君の元気になった姿を見せてやって欲しい。」
「あと、君のお母さんから頼まれてたんだ。夏都ちゃんを連れ出して欲しいって。」
正明は夏都にそう伝えた。

 連れてこられたところは、実家と比較にならない高層マンションだった。
 上を見ると首が痛くなるほどだ。

「……」
 夏都が言葉を失ってると「入るぞ」と宏明がぶっきらぼうに促す。

 入るとセキュリティもしっかりしており家賃も高いのでは?と思ってしまうほどだ。

 エレベーターに乗り、7階に止まるとあっという間に部屋にたどり着く。

「突然おどかしてごめんね。」
 正明は優しく夏都の頭を撫でた。
 あまりもの心地良さについ心を許してしまう。
「あの、その……」
 戸惑う夏都に正明はクスリと笑って続けた。
「悪いようにはしないから大丈夫だよ。共有花嫁……と言っても俺たちは君を妹として迎えに来たから俺らのことは兄と思っていい。」

 夏都はポカーンとした顔で正明を見つめた。