家族のこと、オランダ坂に行ったときのハート型の石を見つけられた達成感があったこと。
 
 「なつちゃん。」
 「うん?」
 
 泰明の真剣な眼差しに夏都は視線をそらさず話を聞こうとする。

 夏都のその仕草に泰明も優しい笑みを浮かべる。

 「ずっとこの家にいてもいいからね。」
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 5日目のこと。
 夏都は考え事を紛らわすように泰明の家中を掃除しだした。
 泰明は「ハウスキーパーを雇うから掃除しなくて大丈夫だよ」と言ってくれるけど名ばかり花嫁はいやだった。

 こんなきれいな家に泊まれるのも最初で最後かもしれない。
 そう自分に言い聞かせるように家中をきれいにした。

 そんな夏都を見守る泰明はただ呆然としてた。
 遊び飽きたのか、シャニは遊び部屋から出てくる。

 「シャニ……」
 『なんだよ。』
 「俺としてはなつちゃんにあまり無理とかしてほしくないんだよな。」
 『俺も思うよ。だってママが家事をしなくなったらかまってもらえるし。』

 それは泰明も同じ気持ちだ。
 夏都がもし自分のだけの花嫁になったら家政婦を雇う覚悟だって辞さない。

 「がんばり過ぎだよ。なつちゃん。」
 
 午後からは泰明に捕まり、長崎県外から車で少し遠出をした。
 夜になると夜景のきれいなプライベート空間があるレストランまで連れていくなど至れり尽くせりだ。

 「今日は遅いからホテル取ったよ。明日朝一で帰ろうか。」
 
 泰明に促されるまま、ホテルの部屋に入ると広いスイートルームだった。
 「シャニは大丈夫かな」夏都はそんなことを考えてしまう」
 自動給餌機を買ったとはいえまる一日留守番はシャニには酷だろう。

 
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 6日目。
 さすがにリラックスしてほしいと思い午前中はどこかに買い出しに出掛けてしまった。

 『すぐに帰ってくるからシャニと留守番してね』

 「泰兄ちゃん、何を買ってきてくれるのかな。」
 『しらない。あいつ何考えてるかわからないもん。でもママのことが好きなのはたしかじゃないかな。』
 シャニは夏都と二人きりになることができればそれでいい。
 そんな感じだ。

 『俺、やすあきがいる間、ママをひとりじめにできなかったから今だけでもママのお膝に乗っていい?』

 シャニは夏都の膝にゴロニャンと甘えながら乗る。