「かなり大きな家だね。」
 「うん。これ俺の持ち家。これから1週間、ふたりで過ごすところだよ。」
 『すげぇ……』
 
 シャニは泰明の家に度肝を抜かれていた。
 泰明が戸建てを建てた理由は正明から話しを聞いていたから安易に想像がつく。
 
 「シャニ、お前の遊び部屋も用意しているからそこで遊ぶといいよ。」
 『俺の……遊び部屋?その部屋ママも一緒なの?』
 「さあね。」
 
 泰明は意味深に微笑んだ。
 中に入ってみると正明のマンションと比べ物にならないくらい広い家だ。
 ここで一人暮らしをしているのかと思っていた。
 聞けば、虐待を受けた子どもを一時的に保護するため、子供部屋やおもちゃがあるのも納得がいくものだ。

 夏都の泰明への見る目が少し変わった瞬間だ。
 あためて家の中をみると、広いリビングやゲストルームも何部屋かある。

 「なつちゃん、ここが俺たちの寝室だよ」
 「え?ふたりと同じ寝室になるの?」
 「え?そうだけど。だって君は“花嫁”じゃん。」
 
 「そうだけど……」と言おうとするも喉元から来て飲み込んでしまう。
 せめてシングルベッドが2つ並んでいる部屋であって欲しいと心の何処かで思ってしまう。
 荷物を置くために恐る恐る見ると、広めの部屋の真ん中にキングサイズのベッドに大きめのクローゼット、スッキリと片付いた最新のデスクトップパソコンが置いてある部屋。

 これから1週間、泰明とこのベッドで寝るのかと思うと緊張してしまう。
 使用人のように扱っていた実家から自分を助け出してくれた人のひとり。
 これは腹をくくるしかない。